イオン系酒販やまや、居酒屋チムニー買収へ

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やまやはイオンの関連会社で酒類小売業。
そのやまやが昨7日、
チムニーを買収すると発表した。
チムニーは居酒屋「はなの舞」を主力とする外食チェーン。

 

チムニーの筆頭株主はアメリカの投資ファンド、カーライル・グループ。
47.97%を出資している。
やまやは、そのカーライルの全株式(936万5200株)を公開買い付け(TOB)する。
そのうえで連結子会社化し、出資比率を50%以上に高める。
公開買付価格は1株1510円と決定しており、買収価額は約141億円になる見込み。

 

やまやの狙いは酒類の販売チャネルや取扱商品の拡大。
業務用販売を強化して、バイイングパワーを高める。
一方、チムニーはやまやと酒類を共同調達することでコスト削減を図る。

 

やまやは1970年に宮城県塩釜市で創業。
1994年、当時のジャスコと業務・資本提携した。
以来、イオンとの関係が続いており、同社が議決権所有割合で19.19%(2013年2月末)に当たる株式を保有している。
所有割合は100分の20未満だが、実質的な影響力を有しているためイオンはやまやを関連会社としている。

 

やまやは2013年10月31日現在、全国に306店舗を展開。
「ワールドリカーシステム」と呼ぶ独自のシステムを構築し、国内の中間流通を介さない海外メーカーからの直接大量仕入れが強みだ。
商品開発から輸入、自社通関、物流に至る垂直構造を形成して合理化を追求している。

2013年3月期(連結)の売上高は1198億8500万円(前年同期比7.1%増)、営業利益は35億5100万円(同▲1.3%)、経常利益は37億6700万円(同▲3.1%)、当期純利益は22億1800万円(同3.5%増)。

 

一方、チムニーは1984年2月に、こちらも現イオンのジャスコ100%出資の子会社として設立された居酒屋チェーン。洋風居酒屋「チムニー」をはじめ、海鮮居酒屋「はなの舞」、「さかなや道場」といった居酒屋を中心とした店舗を運営していたが、1997年、ショッピングセンター事業に注力するジャスコはチムニーを食肉製造・販売の米久に売却した。

 

その後、2009年に米久の筆頭株主である三菱商事との間で方針が一致せず、①経営管理力の強化、②教育制度の構築、③新業態の開発などを通じた中長期的な企業価値の向上を企図して、2009年にカーライルファンドによるマネジメント・バイアウト(MBO)を実施。
チムニーは上場廃止となった。

 

カーライルファンドの下で、意思決定スピードの強化や業務の効率化を行い、社内調理教育「ABC大学」の設置、海鮮食材供給の漁業会社「魚鮮水産」の設立、鉄板料理・豆腐料理「升屋」のグループ化、「新橋やきとん」を運営する紅フーズコーポレーションの買収などを行い業容を拡大してきた。

 

昨年12月に東京証券取引所市場第二部に上場し、再び株式公開企業となった。今後は東証一部への市場変更を検討している。チムニーの事業セグメントは自社ブランドの飲食事業(直営店311店、FC店290店)、自衛隊をメインに官公庁などの施設で飲食を提供するコントラクト事業(98店)、その他事業の3つ。

 

2013年9月末現在の総店舗数は699店舗(非連結子会社2社の21店舗を含めると720店舗)。2012年12月期(FC、紅フーズを除く)は売上高419億9500万円(前年同期比11.2%増)、営業利益32億8900万円(同13.2%増)、経常利益32億9700万円(同24.0%増)、当期純利益12億6300万円(同21.0%)。

 

酒類メーカーが販売チャネルの拡大を目指して直接、飲食店の運営を行う形態は、これまでにも実例がある。サントリーホールディングスはダイナック、アサヒグループホールディングスはアサヒフードクリエイト、サッポロホールディングスはサッポロライオンなどで外食事業を展開している。これらはメーカーが自社内で販売チャネルを組織化する前方統合の一例だ。

 

今回、やまやがチムニーを買収するのも一種の前方統合といえる。もっとも、進化したイオングループの縦横に走る流通ネットワークに、チムニーが里帰りするということではある。

 

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