2015年3月イオン首都圏SM連合でマルエツ・カスミ・マックスバリュ関東統合

M&A

5月第4週月曜日の朝。
全国を衝撃的なニュースが駆け巡った。

「イオン首都圏におけるスーパーマーケット連合発足」
イオンは丸紅株式会社、さらにマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東(イオンの連結子会社)の5社が、「首都圏におけるスーパーマーケット連合」の創設について、具体的な検討を開始することで合意した。

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来年2015年3月をもって、マルエツとカスミとマックスバリュ関東が経営統合する。
この動きは、さらにイオンの持分法適用会社のいなげややベルク、そして今回の経営統合でマルエツの親会社として役割を果たす総合商社丸紅傘下の東武ストアや相鉄ローゼンもこの結集に参加する可能性も高い。
そしてさらに、現在、イオンにも丸紅にも関係を持たない食品スーパーマーケットが、この統合に参集することも考えられる。

従って、ライフコーポレーションとヤオコーの今のところの業務提携は、資本提携へと進展することもあるかもしれない。

このイオン首都圏SM連合は日本中のスーパーマーケットに大きな衝撃を与え、月刊『商人舎』2013年10月号特集『日本小売業M&A異変』で描いたように、アメリカやヨーロッパ並みのM&Aの時代がやってくる。

この中で他の個別企業群には、これまでのような緩やかなボランタリーチェーンに加盟して安心しているとか、自主独立を守り通すといった状況が許されにくくなってきた。
 
意思決定が迫られるし、そのスピードは速まる。

資本提携するマルエツとカスミはともに東証1部上場企業。
両社とマックスバリュ関東が核となって、来年3月に純粋
持株会社(ホールディングカンパニー)を設立して経営統合。マルエツとカスミは上場廃止して、その代りの新持ち株会社が東京証券取引所一部に上場する。

この会社の株式も高くつくに違いない。

なぜならマルエツの2013年度連結売上高は3193億4600万円、
カスミは
2246億3100万円、マックスバリュ関東は427億4400万円で、
合計が5867億2100万円となる。

さらに店舗数は、関東圏1都6県で約470店。
これはライフコーポレーションを抜いて、日本第一のスーパーマーケット企業の陣容となる。


このとき、イオンが7割前後、丸紅が3割ほどを出資して、新会社を設立し、その会社が持株会社の株式の過半を持つ。つまりイオン主導の経営統合である。

共同持株会社はイオンの連結子会社になり、丸紅の側は持分法適用関連会社となる見込み。

 こういった連合の場合、ビジョンが重要となる。

まず参画企業の自主・自律性を尊重する。
そしてつぎに共通する理念「お客さま第一」
「地域社会への貢献」に基づき、
以下の5つのビジョンの達成を目指す。

第一は、真摯にお客さまの声を聴き、最高の商品やサービスを追求し続けることで、地域で最も信頼される店舗の集合体になる。
第二は、事業会社個社の規模では実現できない新業態、商品、ITシステム、カミサリ―等の開発
と革新に取り組み、お客さまに新たな価値を提供する。
第三は、地域社会や行政の活動を支援し、ライフライン機能を担うことで、地域の方々が安心して
利用出来るコミュニティになる。
第四は、共同持株会社のもと、各社の自律的成長の支援と公正で透明性の高いガバナンス体制の確立を通して、志を同じくするSM企業の新たな参画、規模の利益の最大化、及び柔軟かつ
革新力溢れる企業風土づくりを推進する。
第五は、上記の活動を通して企業価値を高め、事業規模、収益性において国内ナンバーワンのスーパーマーケット連合体となる。

そのうえで、五つの取り組みを明示している。
第一が、新業態開発
新たな都市型小型SMやDS業態、シニアシフトやデジタルシフトに対応したネットスーパー等の開発
第二が、プライベートブランド商品開発
首都圏のニーズを踏まえ、マルエツ及びカスミが培ってきた商品開発ノウハウ・ネットワークの活用、イオントップバリュ株式会社との連携や丸紅の持つ国内外のサプライヤーとの商品情報・ノウハウ・商品調達ネットワークの活用による首都圏SM業態用PBの開発
そして第三が、サプライチェーン改革。
マルエツ及びカスミが持つプロセスセンター等の既存の調達・流通インフラと、イオングローバルSCM株式会社や丸紅グループのインフラ機能等との連携による商流・物流全体のプロセス革新並びにサプライチェーンに係るコストの低減
第四が、ITによる生産性向上。
ITシステムの構築と活用による人時生産性や資本生産性の向上
そして第五が出店の加速。
上記取り組みによる収益性向上を背景とした新規出店の加速

ビジョンは、参画企業の自主・自律性尊重を第一に掲げ、「お客さま第一」と「地域社会への貢献」を謳っているが、五つの取り組みはまさしく一つの会社のようにイノベーションを図ることを志向する。

そのあたりからは、アークスの連合化を、さらに突き詰めたレベルにしようとの気概が見える。

いよいよ、日本のスーパーマーケットに上位寡占の幕が切って落とされた。
もちろん、規模の論理の前に「範囲の経済」があり、マーケットリーダーとマーケットチャレンジャーに対して、マーケットニッチャーが輝き続けることは、フィリップ・コトラー先生の言うとおり。

普通のスーパーマーケットであることだけは、許されなくなってきた。

アメリカのホールフーズやトレーダージョーはニッチャーとして1兆円を超えたが、ウェグマンズをはじめとして、ウィンコフーズやスプラウツファーマーズマーケットは、ますます良いお手本になってくるだろう。

普通のスーパーマーケットで、営業や販促の技術を競うだけでは、生き残れなくなってきた。これは繰り返し強調しておこう。

〈結城義晴〉

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