スーパーマーケット全店・既存店・全部門が大幅プラスも「売上げの中身が問題」

百貨店コンビニ、総合スーパーに続き、最後はスーパーマーケットの販売統計調査。日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、新日本スーパーマーケットの3協会から21日に発表。

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4月はスーパーマーケット業態でも当然、昨年の消費増税の影響が顕著だった。昨年4月の買い控えの反動で今年は全店・既存店ともに全部門で昨対プラスとなった。ただし、近年、好調のスーパーマーケットにとってこの「プラスになった」という表現は特筆すべきことではない。他業態のように「○○カ月ぶり」という状況にないのは、スーパーマーケットはずっと好調だからだ。

 

さて、今月よりパネル企業が変更となり、275社で1年間調査されることとなった。
4月の総店舗数は7403店、店舗平均月商は1億1194万円、売場1㎡あたりの売上高6.6万円。

 

4月の総売上高は、8286億5764万円、既存店前年同月比プラス6.3%。
部門別の詳細をみてみよう。
   食品合計 7323億0600万円 プラス6.6%
      生鮮3部門合計 2791億2376万円 プラス6.6%
         青果 1132億6258万円 プラス7.9%
         水産 757億1841万円 プラス4.4%
         畜産 901億4277万円 プラス6.8%
      惣菜 788億5091万円 プラス5.9%
      日配 1555億3822万円 プラス4.5%
      一般食品 2187億9311万円 プラス8.3%
   非食品 642億7903万円 プラス6.2%
   その他 322億0136万円 プラス5.9%

 

概要を語ったのは、新日本スーパーマーケット協会の増井徳太郎副会長。
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「売上げが表面上はよかったが、では中身はどうだったのか。中身が問題。好調の要因は、昨年の買い控えの反動がひとつだが、4月前半に続いた雨の影響で青果の相場高がつづいたことも理由に挙げられる。ふと立ち入った八百屋でキャベツが500円も600円もしていたのには驚いた。これでは売上げが伸びるのは当然。畜産も相場高が続いている」

 

「しかし一方で、青果は入荷不足が発生したり、売れ筋が変化するという状況も見られた。相場高の野菜に家計の予算を取られてしまったからか、果物が売れなかった。畜産も原価上昇分を商品価格に反映できないという状況が一部ではあるようだ。さらに電気代や包装資材料の上昇などで経費もかさんでいる。利益確保が厳しいという声が現場から聞かれる」

 

「4月、特に伸びたのは一般食品部門。生鮮品は増税後もすぐに購入されるが、消費期限の長い一般食品のカテゴリーは昨年、買い控えされたので、その反動は大きかった。例年4月に売れないものも売れたから、担当者は品揃えに苦労したようだ。調味料、酒、ドレッシングは売上げが回復し、不調だった米類も好調に転換しつつある。また非食品も日用雑貨は売れ行きがよく、特に紙製品や紙おむつ、タバコが動いた」

 

「景気動向調査では景気判断DIの見通し判断が調査開始以来初めて、好調/不調のボーダーラインである“50”を上回った。52.2ポイントで前月より5.5ポイント上昇。各社、景況感の回復を実感している。今後も堅調に推移していくのではないか」

 

スーパーマーケットの販売統計には、毎月実務家トップが登場する。
今月のゲストスピーカーはサンベルクスの鈴木秀夫代表取締役社長。
サンベルクスは東京10店舗、千葉14店舗、埼玉10店舗(2015年4月10日現在)を展開するスーパーマーケット企業。
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「我々は八百屋出身のスーパーマーケット。一店一店が地域のお客に役立つ店づくりをしよう、取り扱う生鮮品の良さを活かしながらお客に商品とサービスを提供できる店づくりをしよう、と取り組んできた。今年で34店舗を運営し、売上げはもうすぐ600億円という規模になる」

 

「今回は鮮魚部門の改革に絞ってお話します。今、当社では、『自分の部門がどのようにしたら経費をまかない自立できるのか』というテーマで会議をしている。その中で、ロスはどのくらいあるのか、と聞くと担当者は『ロス率』で答える。では、営業利益とロス率の問題はどうなっているのかと、さらに質問する。1週間営業して残った在庫金額が10万円だとすれば、鮮魚部門ではおよそ5倍のロス金額があったということになる。つまり50万円のロス。しかも廃棄ロスは見えないように捨てている。つまり、数字に載ってこない。会社が成長していくのに、こんな仕組みでどうするのか、だから、数字に落とし込んでいく必要があった」

 

「『ロス金額』について追跡調査をしてみた。日曜の集客を100とすると、店によっては平日は6割しかなかった。しかも売上げは5割。さらに売れる時間帯を調べてみると、平日の第一回転(開店から13時まで)は20~25%の売上げしかない。たとえば日曜日の売上げを40万とすると、売上げは8万しかない。それなのに、販売スペースを埋めるために、40~45万円分の商品を品揃えしていた。またパートさんも午前中の契約が多いため、その時間帯にすべての商品を陳列してしまっていたのだ」

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「数字をきちんと出していくことによって、ロス金額は半分になった。それと同時に発注精度を高めていく必要があった。また週の売上げ予算を出して、その売上げに対して何人時必要かという実績を作った。効率を上げるためだ。このプロセスには3~4年かかったが、以前は4200円ほどだった人時生産性が4800円までに上がってきた」

 

「鮮魚は漁獲量や時価など市場の商品状況によって、商品部が独自に商品を送り込んでいくが、現場ではそれを売りきらないという状況があった。また夜にならないと販売集計が出ないため、次の日の商品発注が適切にできていなかった。しかもバイヤーが市場に行くのは朝7時ごろ。その時間帯には良い商品は少なく、売れ残りばかり。これでは絶対ダメだ、ということで、青果部のやり方を導入した。夕方4時には店舗が本部に発注し、それ以降の修正は商品部が行う。市場には早朝3時半ころに出向き、その日の市場状況を見て、マネージャーと連絡を取り合って対応をするように改善した」

 

「これまでコミュニケーションが足りなかった。バイヤーとマネージャー、マネージャーと店長が連絡を取り合うことによって、鮮魚部門はすごく良くなっていった。さらに各部門のリーダーが他の店舗を見に行くという仕組みを作った。今までは自分が担当する売場しか考えていなかったものが、仲間の店を視察するうちに意識が高まり、意欲的になっていった。情報交換も盛んになるし、よい事例は積極的に取り入れようとするようになった」

 

「消費者は魚を食べたいけれど、手間をかけたくない。例えば、丸物のホッケを開いて、カットして売っただけで売上げが150~200%伸びた。今では3割以上のお客さんが、加工済みの商品を買っていく。秋刀魚をおいしく食べた後に腸や頭の片づけをしたくないという消費者の需要に、売る側がもっと配慮し、商品展開していくことが大事。まだまだだが、徐々に赤字のない鮮魚部門になってきた」

 

「なぜ、コンビニの弁当が売れてスーパーマーケットの弁当が売れないのか。サンベルクスでは弁当のご飯を業者に任せていたが、業者では前日炊きだった。それではおいしくない、売れないということで、全店舗に釜を導入し、炊きたてで提供するようにした。精米仕立て、長くても精米1週間以内の米を使うようにした。たとえば新潟産の精米1カ月後の米と安い米でも精米仕立では、味が変わらないことがわかった。弁当はお客さんに評価してもらえるようになってきた」

 

「サンベルクスは地域に役立つスーパーマーケットとして残っていきたい。徹底した効率型のスーパーマーケットはできないが、規模は小さくとも地域密着しながら商売をしていきたい」

 


 

 

さて出揃った小売業の業態別4月の販売動向。昨年4月の増税直後に起こった買い控えの反動により、どの業態も例外なく絶好調の結果だった。

 

増税によりもっとも打撃を受けた百貨店が唯一、既存店昨対二ケタ増で13.7%プラス。続いて、総合スーパーがプラス7.8%、スーパーマーケットがプラス6.3%。そして一番伸長幅が少なかったコンビニでもプラス4.0%となった。

 

4月のみの特殊な状況ではあるが、やはりこれだけプラスが並ぶと気持ちがいい。来月以降にも期待をこめつつ、ひとまず今月は「目出度し、目出度し」。

 

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