Kroger チェックアウト時間短縮技術QueVisionがエリート100ランキング3位

クローガーのチェックアウト時間短縮のための技術がこのほど、『インフォメーション・ウィーク』誌の「エリート100」ランキングで3位を獲得した。「エリート100」はアメリカで革新的な技術を導入しているトップ企業群のリスト。クローガーの技術は「QueVision」と呼ばれるもので、この技術によって平均レジ待ち時間は4分から30秒以下に短縮された。「エリート100」にはクローガーのほか、ラルフローレン(28位)とウォルグリーン(60位)の2社が小売業としてランクインした。

このシステムは月刊『商人舎』2月号でも紹介したものだ。

 

【クローガーの店内に設置されたQueVisionのディスプレイ】
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QueVisonは、顧客の人数を計測するために店舗入口のドアとレジスターに設置された赤外線センサー、予測分析システム、POSシステムから上がってくるリアルタイムデータを組み合わせた技術。クローガーがデータ分析によるシミュレーション技術を使ってレジ待ち問題の解消に取り組み始めたのは2007年のことだ。

 

レジ待ち時間の短縮は一般的に従業員の労働時間削減を目的に行われることが多い。しかし、この点でクローガーの考え方は異なっている。研究開発シニアディレクターのブレット・ボナー氏は「私たちは、よりよい買物経験を提供することに関心があるのです」と語る。粗利益率の低い食品小売業にとっては、自分の店で頻繁に買物をしてくれるロイヤルティの高い顧客が何よりも重要になる。従って、クローガーが大切にする経営指標は、高い顧客満足レベルなのだ。

 

ビジュアル・シンキング・インターナショナル社と開発したフロントエンド・シミュレーター、それにアイリシス社の赤外線センサーを組み合わせて、「現在・15分後・30分後」に必要なレジ台数を割り出すQueVisionを開発し、2010年から一部店舗での利用を開始した。

 

店内のディスプレイでは「現在会計中のレジ台数」、「開放中のレジ台数」、それに「30分後に必要なレジ台数」がディスプレイで表示され、従業員だけではなく顧客もそれを確認することができるようになっている。アイディア段階では従業員とマネージャーの携帯端末にレジ待ち時間を知らせるシステムだったが、店長の発案で店内にディスプレイすることになった経緯がある。のちにこれがQueVision成功の鍵となった。

 

QueVisionの副産物は顧客満足だけではなかった。従業員がフレンドリーになり、「顧客第一のイノベーション」を掲げるクローガーにとって予期せぬ効果を生んだのだ。ボナー氏は「お客さまがハッピーになると、従業員もハッピーになるのです。データ分析システムもそこまでは予測できませんでした」とその効果を説明する。実際、顧客調査ではキャッシャーの親切さに関する指標が2011年から24%も上昇したという。

 

イギリス・テスコのデータ分析子会社ダンハンビーと組んで、データ主義を貫徹するクローガー。QueVisionもデータを重視する企業姿勢が生んだものだ。クローガーの研究開発チームが取り掛かっている次のプロジェクトは「食の安全」の向上に関するもの。社内のあらゆる状況、温度をリアルタイムにモニタリングするシステムになるという。

 

科学的手法を使って顧客満足を実現するその姿は、まさしく現代の知識商人そのものだ。

 

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