ファミマとマレーシアQL社との店舗展開合意の「OLIパラダイム」

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4月12日、㈱ファミリーマートは、QL ResourcesBerhad(キューエルリソーシーズ社)と、マレーシアにおけるファミリーマート店舗の展開について合意したと発表した。

セブン-イレブンとローソンがアメリカ発祥のコンビニエンスストアであるのに対して、日本発祥のファミリーマート。セブンはイトーヨーカ堂が日本でのエリアフランチャイズでスタートさせ、ローソンは同じくダイエーが始めた。ファミリーマートは西友が独自に開発した。その日本発でありながら、ファミマ・グループは、1988年から海外展開を開始している。現在では、日本国内で1万1671店、海外では6カ国5869店、合計1万7540店(2016年3月末現在)を出店している。

  海外の店舗数と1号店開店年は以下のとおり
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パートナー企業であるQL Resources社は、畜産や水産加工などを行う食品メーカーであり、マレーシア全土で多岐にわたる事業を展開している。そのため、製造工場や物流センターなど、コンビニの展開に必要なインフラを所持している。また、2000年にはマレーシア証券取引所への上場も果たすなど、名実共にマレーシアを代表する企業の1つである。

ファミリーマートは、日本型のコンビニエンスストアならではの高いSQC(サービス・クオリティ・クリンネス)レベルを持った店舗運営や中食商品などの商品開発ノウハウと、QL Resources社の持つマレーシアにおける経営ノウハウやさまざまインフラを融合させることで、新しい生活スタイルを提案し、生活に根差した店舗展開の実現を目指す。本年末には首都クアラルンプールにて1号店を開店する予定である。

【QL Resources社概要】
社名:QL Resources Berhad
所在地:16A, Jalan Astaka U8/83, Bukit Jelutong,40150 Shah Alam, Selangor Malaysia
設立:1987年(2000年上場)
代表者:Dr. Chia Song Kun
資本金:312,007,357.50リンギット
事業概要:食品(畜産加工、水産加工)、飼料、パームオイル

【ファミリーマート概要】
社名:株式会社ファミリーマート
所在地:東京都豊島区東池袋三丁目1番1号
代表者:代表取締役社長中山勇
設立:1981年9月1日
資本金:166億5800万円
事業内容:フランチャイズシステムによるコンビニエンスストア事業

大手コンビニのセブン-イレブンとローソンの海外店舗数は以下のとおり。

セブン-イレブン
国内店舗数 1万8613店舗(2016年3月末現在)
海外店舗数 4万0140店舗(2015年12月末現在)
  アメリカ 8363店、メキシコ 1879店、カナダ 505店、韓国 8000店
  中国 2183店、台湾 5029店、タイ 8832店、フィリピン 1602店
  マレーシア 1944店、シンガポール 458店、インドネシア 187店
   オーストラリア 626店、ノルウェー 156店、スウェーデン 185店
  デンマーク 189店、アラブ首長国連邦 2店

ローソン
国内店舗数 1万1586店舗(2016年2月末現在)
海外店舗数 758店舗(2016年2月末現在)
  中国 655店、タイ 47店、インドネシア 38店、フィリピン 16店、米国(ハワイ州) 2店

セブン-イレブンはすでにマレーシアに1944店舗出店しているが、ローソンは出店していない。
日本のコンビニエンスストア・ビッグ3によるアジア出店競争は激化を増していく。それは日本国内に飽和状態が迫っているからだ。国内競争はシステムの精度を競うものだが、アジア進出は直接海外投資(FDI: Foreign Direct Investment) の問題となる。

イギリスの経済学者ダニング (John H. Dunning) が提唱したFDIに関する理論的フレームワークは「OLIパラダイム」と呼ばれる。OLIパラダイムは企業の海外活動の程度とパターンは3つの条件によって決定されるとする。①所有特殊的優位 (ownership-specific advantages, O優位)、②内部化インセンティブ優位 (internalization-incentive advantages, I優位)、③立地特殊的優位 (location-specific advantages, L優位) である。すなわち、企業が何を独自の競争優位性 (O優位) と認識し、その優位性をどのような方法で活用し (I優位)、どこで生産活動を行うか (L優位) 。

つまり、国内競争はセブン-イレブンが圧倒的に優位に立っているが、アジア進出はOLIパラダイムによって、必ずしもセブンに優位とは限らないということだ。ファミマには伊藤忠、ローソンには三菱商事というバックボーンがある。だからこそ、国内競争と違って、波乱の展開もありうる。おもしろい展開になりそうだ。

検索ワード : ファミリーマート  QL Resources社  マレーシア  海外展開  

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