店舗のフリーWi-Fiネットワークが小売サービス業に与える好影響
現代社会では欠かすことのできない存在となったパソコンや携帯、スマートフォン。これらの機器を利用するうえで最も重要だといえるのが通信環境である。通信環境がなければ、インターネットを閲覧することはできないし、携帯で電話をすることもできない。お店で価格比較することもできないし、ネット通販もできない。宝の持ち腐れだ。
そこで利用者に重宝されているのが「フリーWi-Fi」だ。これは無料でインターネットへアクセスすることができる通信サービスである。
アメリカのフリーWi-Fi通信環境は、日本と比較すると、一歩も二歩も先をゆく。アメリカに行くと、それを如実に感じることができる。
都市部の商業施設の中は当然のようにWi-Fi環境が整備され、鉄道やバス、図書館、さらには公園のような公共の場所でもWi-Fiを無料で利用することができる。ひと口にアメリカといっても、日本の25.5倍の広さを持つアメリカ合衆国全土で同じ状況が用意されているわけではないが、無料Wi-Fiに関しては、日本より格段に便利である。通信速度を求めなければ、の話ではあるが。
そしてこの通信環境の整備が小売サービス業へ大きな影響を及ぼしている。
アメリカの調査会社、IHLグループ社の調査レポート「店舗ネットワークとWi-Fi環境導入による顧客体験への影響 Impact of Store Networks and WiFi on Customer Experience」(100社以上の小売サービス業者へのオンライン調査、企業規模による加重はなし)によると、28%の企業が店内WiFiを導入したことにより、顧客ロイヤルティが高まり、店内滞在時間が伸びたと回答している。さらに売上げに対する影響として、2%の増加をもたらしたと回答している。
特に比較的滞在時間の長くなるフードサービス企業(上記表のHospitality業態)では、61%がロイヤルティが高まり、59%が滞在時間の伸びを実感しているという。滞在時間が伸びれば追加注文も増え、売上げも2.7%増加しているのだ。
また、店内をWi-Fi環境にすることで従業員にも好影響を及ぼすことが分かった。モバイル端末を利用することで仕事環境が改善した結果、店舗への顧客ロイヤルティおよび売上げが増加したことも明らかとなった。
全体で48%、ゼネラルマーチャンダイズストア(百貨店からハイパーマーケットまで含まれる)では53%、フードサービスに至っては61%の企業がWi-Fi環境を構築することで、顧客ロイヤルティが上がったと回答。その理由は、ゼネラルマーチャンダイズストアでは従業員が常に最新の情報が手元のモバイル端末で確認できるようになることで、顧客へのサービス向上へとつながるというもの。フードサービスでも、店長がオフィスにこもる必要がなくなり、フロアでの時間が増加するため、従業員のパフォーマンスも売上げも客席回転率も高まる。Wi-Fi環境は顧客対策であると同時に、従業員対策でもあるのだ。
次の表はWi-Fi導入前後の平均売上高の比較である。
この調査の対象となった食品スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニエンスストアの平均売上高は80億ドル(100円換算で8000億円)で、平均売上高伸び率が7200万ドル(72億円)。そしてWi-Fi/モバイル端末導入前の平均EBITA(金利・税金・償却前利益)が3億8400万ドル(384億円)だったが、導入後は4億1000万ドル(410億円)となり、2610万ドル(261億円)の大幅伸長を示している。
Wi-Fi環境を整えるにはコストがかかるが、それがもたらすメリットは大きい。ぜひ、日本の小売サービス企業も積極的にフリーWiFiを導入してもらいたい。カスタマーサティスファクションもエンプロイーサティスファクションも、ともに向上することは間違いないのだから。
〈鈴木綾子〉
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