J.フロントnews|年商1兆1520億円15.3%増・営利125.9%増の増収増益
J.フロントリテイング(株)(東京都中央区、小野圭一社長)が2024年2月期の本決算を発表した。
2023年3月1日~2024年2月29日の連結業績は、総額売上高1兆1519億7200万円(前年同期比15.3%増)、売上収益4070億0600万円(13.2%増)、事業利益443億3000万円(78.4%増)、営業利益430億4800万円(125.9%増)、税引前利益299億1300万円(110.1%増)の増収増益だった。
営業利益率は10.6%。
中期経営計画の最終年度となる当年度は、回復基調の続く国内消費やインバウンド需要を着実に捉え、「完全復活」への足取りを確かなものとし、2024年度以降の「再成長」につなげるため、この中期経営計画で掲げた重点戦略・施策を着実に推進した。
「リアル×デジタル戦略」に基づき、百貨店事業やショッピングセンター事業(SC事業)において基幹店舗を中心に、リアル店舗の魅力化に向けた主力カテゴリーの強化や店舗改装など戦略投資を行った。また、来店価値向上に向け、大型動員催事などプロモーション強化などに取り組んだ。さらに、顧客との強固な関係構築に向け、アプリなどを通じた顧客接点のデジタル化を推進した。
「プライムライフ戦略」では、富裕層マーケットへの対応を強化するため、主に百貨店外商を基盤に、重点カテゴリーを拡充した。店頭・オンラインの両面から希少性の高い商品・サービスを開発するとともに、新規顧客の獲得など顧客層の拡大を図った。
「デベロッパー戦略」では、3月から始動した新たな事業推進体制のもと、名古屋栄地区や大阪心斎橋地区に加え、新たに福岡天神地区など、同社が基盤を有する7都市の重点エリアを中心に中長期の開発計画を策定、推進した。
「経営構造改革」では、固定費削減について組織・要員構造改革の効果に加え、業務委託の見直し、宣伝手法のデジタル化などにより当初計画以上の削減を図った。また、経営効率向上への取り組みとして、J.フロントリテイングが保有する(株)スタイリングライフ・ホールディングスの全株式を譲渡した。なお、新所沢PARCOは2024年2月末に営業を終了した。
これらの戦略推進に加え、事業ポートフォリオの変革や他社との共創による新規事業の創出を見据え、(株)フィナンシェやクオン(株)へ出資したほか、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル) ファンドを通じて8社に出資した。
百貨店事業の業績は、売上収益2391億2500万円(前年同期比10.8%増)、営業利益235億8700万円(213.3%増)と大幅な増収増益となった。
店舗別では、特に訪日外国人売上げが好調な大丸心斎橋店や大丸京都店に加え、ターミナル立地の大丸東京店や大丸札幌店において入店客数、売上高が大きく改善した。重点戦略への取り組みでは、基幹店を中心にラグジュアリーブランドや高級時計など主力カテゴリーの強化、リニューアルを実施したほか、お得意様ラウンジの導入など上質な店舗環境の構築を図った。
オンラインビジネスの強化に向けて、ファッションやアート、食のサブスクリプションサービスを拡充するなどデジタルを活用した新たな顧客体験の創出に取り組んだ。また、顧客との強固な関係構築に向け、リアル店舗に加え、大丸・松坂屋アプリなどを通じた顧客接点のデジタル化を着実に推進した。
SC事業は、売上収益579億4400万円(7.7%増)、営業利益94億1400万円(121.8%増)。売上収益は、基幹店を中心とする戦略改装や全店統一企画などのプロモーション効果に加え、渋谷PARCO、心斎橋PARCOをはじめとする訪日外国人観光客の来店増などにより、入店客数、テナント取扱高ともに増加した。
重点戦略に基づき、店舗の魅力化に向け、池袋PARCOでは話題性の高いエンタテインメントショップを集積したゾーンの構築、名古屋PARCOではユニセックス・レディス要素を拡張し共用環境を刷新するなど戦略改装を推進した。浦和PARCOでは“好感度・上質な生活の提案”“心地よい日常生活”をキーワードとしたテナントを導入した。また、来店価値向上に向け、人気TVアニメの大型動員催事の展開など独自のプロモーションに加え、渋谷PARCOでは50周年を記念し、半世紀を超える広告クリエイティブの歴史を巡る展覧会“「パルコを広告する」1969-2023PARCO広告展”を開催した。なお、新所沢PARCOは本年2月末に営業を終了した。
デベロッパー事業は、売上収益784億1800万円(41.9%増)、営業利益74億3700万円(133.5%増)。売上収益は、(株)J.フロント建装でのホテル内装・百貨店改装工事の受注増、(株)パルコスペースシステムズの工事受注増により増収となった。営業利益は、「(仮称)心斎橋プロジェクト」において、共同出資する特定目的会社へ不動産所有持分を売却したことなどにより増益となった。
決済・金融事業は、売上収益131億1500万円(1.8%増)、営業利益25億8300万円(25.9%減)。
決済事業では、百貨店との協働による会員獲得を図るともに、独自のポイントサービス「QIRAポイント」の認知度向上に向けた特別イベントを実施した。また、グループ商業施設での決済環境の整備や、グループ店舗が立地する各エリアでの他社施設との連携など加盟店事業の強化を図った。金融事業では、他社との連携・協業による会員向けの新サービスの開発などに取り組んだ。
2025年2月期は、総額売上高1兆2000億円(4.2%増)、売上収益4215億円(3.6%増)、事業利益445億円(0.4%増)、営業利益375億円(12.9%減)、税引前利益345億円(16.6%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益235億円(21.4%減)を見込む。