【7月百貨店】インバウンド客数13.7%増だが売上高21.0%減で全体0.1%減

昨日、日経MJが発表した2015年の百貨店の営業調査を分析報告したが、今日は日本百貨店協会から発表された7月の百貨店売上高概況をお伝えする。前月(6月)と変わらず調査対象百貨店は81社236店。売上高は5598億8064万円、前年同月比▲0.1%で5カ月連続でマイナスとなった。

7月は中元商戦やクリアランスが好調で入店客数は7カ月ぶりに前年を上回った。また国内購買客売上げも入店客数の増加に伴い、0.6%プラスとなり、9カ月ぶりに前年数値を確保している。これらの要因により前月(6月)売上高▲3.5%から改善を見せてはいるものの、売上高プラスまでには至らなかった。

都市別の詳細から見てみよう。
主要10都市は全体で対前年同月比▲0.1%。
その中でプラスとなったのは、福岡4.1%、札幌1.5%、東京0.6%、神戸0.2%。
マイナスだったのは、横浜▲0.2%、広島▲0.3%、京都▲0.9%、仙台▲1.1%、
名古屋▲1.5%、大阪▲1.7%の6都市となった。
全都市がマイナスだった6月に比べれば少し上向きといえるだろう。

また10都市以外の結果は全体で▲0.1%。
プラスだったのは、北海道9.6%、九州3.9%、近畿1.2%、中国0.7%の4地区。北海道は大幅にプラスとなった。
一方、マイナスだったのは、東北▲0.6%、四国▲0.6%、関東▲1.7%、中部▲2.4%の4地区だった。

主要10都市、10都市以外の地区ともにマイナス0.1%。ただし北海道、九州地区が好調だった。九州地区の好調要因は震災復興の需要が高まったことによるもの。

主要5商品カテゴリーの7月の動向は以下。

主力の衣料品は、1735億4739万円、▲2.0%で9カ月連続マイナス。
細分類をみると、紳士服プラス2.1%、婦人服▲2.6%、子供服▲4.5%、
その他衣料▲4.2%となり、紳士服は9カ月ぶりにプラスとなった。

身のまわり品は、735億8962万円、プラス1.2%となり、5カ月ぶりのプラス。

雑貨は、 865億1375万円 、2.4%増で2カ月ぶりのプラスとなった。細分類をみると、化粧品が11.2%の二桁増となり、16カ月連続で好調を続けている。一方、美術・宝飾・貴金属は▲6.0%と不調に終わった。その他雑貨は1.4%となり、7カ月ぶりのプラスとなった。

家庭用品は、236億7463万円、▲3.9%で7カ月連続のマイナス。
家電は0.9%プラスとなったが、家具は▲4.6%、その他家庭用品も▲4.0%と振るわなかった。

食料品は、1704億5198万円、±0.0%と横ばい。
生鮮食品▲2.0%で28カ月連続のマイナスとなり、不調が続く。菓子は2.3%プラス、総惣菜は0.8%プラスとなり、その他食料品▲0.3%という結果だった。

他のカテゴリーでプラスだったのは、サービス8.7%で13カ月ぶりとなった。その他もプラスで8.6%。
マイナスは食堂喫茶▲0.7%、商品券は▲6.5%で、なんと65カ月連続のマイナスとなった。

前月(6月)の主要5カテゴリーは20カ月ぶりにすべて前年を割るという惨憺たる結果だったが、7月は雑貨、身のまわり品がプラスに転じた。また食料品は横ばい。衣料品が9カ月連続、家庭用品が7カ月連続でマイナスとなったが、少し回復傾向だ。

大手百貨店グループの7月の業績も見てみよう(%はすべて対前年同月比)。

㈱三越伊勢丹ホールディングス
国内百貨店事業(三越伊勢丹計+国内グループ百貨店計)プラス0.1%。
三越伊勢丹計は▲0.4%。

三越伊勢丹の項目別では、主力の衣料品は▲1.3%。婦人服・子供服・呉服寝具はマイナスだったものの、紳士服は5.8%とプラスで好調だった。家庭用品は合計では▲8.6%。詳細では、身の回り品、家具インテリア、家電、家庭用品はマイナスとなったが、唯一雑貨は2.3%のプラスとなった。食料品は▲1.7%、食堂・喫茶は▲0.4%。サービスとその他はプラスだった。衣料品はマイナスではあるものの夏物アイテムを中心に動きが見られ、婦人雑貨と合せて復調の兆しが現れた。インバウンドは苦戦が続いているが、一方で国内のお客の購買は、新しい提案にも取り組んだ効果によって上向き傾向だ。

J.フロント リテイリング㈱  ▲2.7%。
クリアランスセールが好調に推移し、婦人服、ハンドバッグ、紳士服飾雑貨、化粧品が売上げを伸ばした。しかし、大丸心斎橋店本館建替えによる面積減の影響と、昨年大きく売上げを伸ばした訪日外国人売上げの反動減により、全体ではマイナスとなった。

㈱髙島屋(単体13店舗) プラス0.7%
衣料品は▲1.6%。紳士服はプラス2.9%だったが、婦人服、子供服、その他衣料品はマイナスとなった。雑貨はプラス3.8%となり、その中でも化粧品は免税販売額が好調で13.8%と二ケタ増となった。また食堂・喫茶もプラス6.2%と好調だった。しかし、家庭用品は▲9.7%となり、その中でも家電は▲47.9%と大きくマイナスを計上した。

エイチ・ツー・オー リテイリング㈱  百貨店はプラス2.0%。
部門別詳細データは、全店(阪急阪神百貨店・阪食のスーパーマーケット事業・イズミヤ事業)の数字だが、プラスだったのは身の回り品4.9%、家庭用品3.9%、食堂・喫茶3.4%、雑貨2.9%、衣料品0.9%、その他10.5%とプラスが並ぶ。マイナスだったのは、サービスで▲6.5%となった。

ここに挙げた大手百貨店グループは、J.フロント リテイリング以外はプラスとなり、前月(6月)に比べると、やや復調。クリアランスセール効果が出た。

7月のインバウンドは、購買単価が下がっているため、売上高は▲21.0%と大幅に前年割れしたが、購買客数は拡大傾向となり13.7%プラスだった。

日本政府観光局(JNTO)の発表によると、7月の訪日外国人客数は前年同月比19.7%増の229万7000人で、7月としても、また単月としても過去最高となった。夏期休暇に加え、クルーズ船の大幅な寄港増加や航空路線の新規就航・増便、プロモーション効果などが増加の要因だ。熊本地震の影響も一部あるが、韓国では「九州ふっこう割」を活用した旅行商品の販売も始まり、夏休み後半となる8月も集客に期待ができる。

購買単価の上昇は難しい今、いかに多くの訪日外国人に消費を促すか。化粧品を筆頭に単価が低い消耗品で、購買意欲を掻き立てる商品の見極めが大切となる。また入店客数が上向きとなっている国内消費者のニーズにどう応えるかも今後の大きな課題だ。協会では、シーズンエンドとシーズンインの切り替えを実気温との差がある中で確実に検証し、年間のピークとなる10月から12月へつなげることがポイントだと分析している。

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