豚肉国際相場高騰で加工肉も実質値上げ、製販のWin-Win態勢を構築せよ!
豚肉の国際価格が、過去にない高値圏で動いている。
2013年の世界の豚肉生産量は、枝肉換算ベースで1億1461万トン。
アメリカのUSDA(農務省)の調査では、生産量第一位は圧倒的に中国で、5380万トン。
中国は生産量は多いが、ほとんどを国内消費する。
アメリカが第2位で、1051万トン。世界最大の豚肉輸出国。
EUは28カ国で2245万トンで、こちらも輸出機能を担っている。
米国やEUは、日本をはじめとして東アジアやロシアを中心に輸出量を増加させている。
新興国では、ブラジルが337万トン、ロシアが219万トン、メキシコが127万トン。
これらは年々生産量を増やしている。
それ以外のアジアは、ベトナムの222万トン、フィリピンの135万トン。
肝心の日本は131万トンだが、年間消費量約250万トンの半分 の124万トンを輸入。
これは全世界の輸入量の約20%に当たる。
その国際価格が高騰中。
豚肉価格の指標はシカゴ・マーカンタイル取引所の赤身豚肉(リーンホッグ)相場である。
6月末現在、1ポンド(454グラム)130ドル前後で推移。
2014年の年初からは4割を超える値上がり。
輸入比率が約半分で、国際価格が4割も上がると、当然、店頭価格も高騰してくる。
この過去にない急騰の理由は、第一に「豚流行性下痢」の拡大にストップがかからないこと。
発祥はこれも中国だが、2010年以降、大流行して被害は深刻化している。
この致死率の高い「豚流行性下痢」は昨年4月に米国オハイオ州で確認されてしまった。
その後、アメリカ31州で7348件、発生し、数百万頭の豚が処分される可能性がある。
急遽、6月、アメリカではこの症状に対するワクチンを承認し、対策を打った。
そして恐ろしいことに日本でも7年ぶりに、789農場でこの症状が確認されている。
一方、中国の食肉加工業者「双匯(そうかい)国際」が米国最大の豚肉加工業者を買収。
社名はスミスフィールド・フーズ(SFD)。買収額は48億ドル。
9月に米国政府の対米外国投資委員会が承認。
日本がアメリカから輸入する豚肉の32%はスミスフィールド製品。
従って日本国内の相場にも大きな影響がある。
他方、6月20日の参議院本会議で、圧倒的多数で「養豚農業振興法案」が可決されている。
その趣旨は、「養豚農業が、国民の食生活の安定に寄与し、及び地域経済に貢献する重要な産業であること並びに食品残さを原材料とする飼料の利用等を通じて循環型社会の形 成に寄与する産業であることに鑑み、養豚農業の振興を図るため、養豚農業の振興に関する基本方針を定めるとともに、養豚農家の経営の安定等の措置を講じよ うとするもの」。
理屈で言えば養豚農業が振興されれば、国内生産量が伸びる。
そして、国際価格変動への対応もしやすくなるはずだ。
これが本格的な国際競争力をつけることに結び付けばよいが。
いずれにしても、国際価格の急騰によって、当面、生豚肉の価格も上がるが、加工肉の値上げも行われる。
ハムメーカーは7月から納入価格の引き上げ、あるいは実質的値上げの減量に踏み切る。
日経新聞によると、日本ハムは7月1日から284品を平均約10%値上げする。
減量も実施する。
「ウイニーミニ」の内容量を75グラムから67グラムへ。
「直火焼でおいしいハンバーグ(3袋)」は225グラムから207グラムへ。
伊藤ハムも7月1日から230品目を平均10%値上げ。
丸大食品は8月1日から「燻製屋熟成ウインナー」など134品目を平均10%値上げする。
もう既に中元商戦は始まっているため、今夏の贈答用価格は据え置かねばならない。
しかし、年末の歳暮用は各社とも「値上げを検討中」。
国際相場や流行病、中国企業による米国企業買収など、トリプルパンチ状態の豚肉相場。
根本的なソーシング対策を講じるとともに、便乗値上げだけは製配販ともに慎まねばならない。
もちろん優越的地位の乱用は独禁法違反である。
今こそ、取引先とのWin-Winの取り組みが求められる。
その絶好のチャンスだととらえたい。
もちろんそのうえで、顧客への告知活動も徹底されなければならない。
〈結城義晴〉