7月のショッピングセンターは前年同月比プラス1.8%、夏期セール時期変更が奏功

一般社団法人日本ショッピングセンター協会が7月のショッピングセンター(SC)販売統計調査を発表した。

まず、日本ショッピングセンター協会はSCを定義している。
・一つの単位として計画、開発、所有、管理運営される商業・サービス施設の集合体
・駐車場を備えるもの
・その立地、規模、構成に応じて、選択の多様性、利便性、快適性、娯楽性等を提供するなど、生活者ニーズに応えるコミュニティ施設として都市機能の一翼を担うもの

またSCとは、ディベロッパーにより計画、開発されるものであり、次の条件を備える必要がある。。
・小売業の店舗面積は、1,500㎡以上であること
・キーテナントを除くテナントが10店舗以上含まれていること
・キーテナントがある場合、その面積がショッピングセンター面積の80%程度を超えないこと。
(但し、その他テナントのうち小売業の店舗面積が1,500㎡以上である場合には、この限りではない)
・テナント会(商店会)等があり、広告宣伝、共同催事等の共同活動を行っていること。

この条件を満たす日本の総SC数は、2014年末現在で、3169である。

ちなみにアメリカのショッピングセンター数は2013年段階で、11万4585軒。年間売上高2兆4900億ドル、120円換算でなんと298兆8000億円。伸び率は前年比2.6%(ICSC “ECONOMIC IMPACT OF SHOPPING CENTERS”より)。アメリカはショッピングセンター大国である。

さて7月の販売統計調査報告をみてみよう
7月は既存SCの売上げは4891億6675万円で、2カ月ぶりに前年同月比プラス1.8%となった。
テナントは3530億2259万円で2.0%プラス。好調だったのは、飲食店、サービス。
キーテナントは1361億4416万円、1.3%プラスで生鮮食品、加工食品が好調だった。

既存SC売上高プラスの主な要因は、
・前半が天候不順であったが、中旬以降は好天の日が多く客足が盛り返したこと
・夏のバーゲンセールのスタートを昨年に比べ7月第1週に遅らせたSCが増えたこと
・地方で地域プレミアム券が貢献したこと

二番目の「バーゲンセールを遅らせた」という理由は、百貨店と同じだ。

地域別に見ると、
政令指定都市の中で、プラスとなったのは、
札幌市4.7%  仙台市7.3%  東京区部3.8%  川崎市3.0%
大阪市2.4%  神戸市1.5%  福岡市5.4%
その他の地域では、北海道と中国地方がマイナスだったが、九州・沖縄のプラス4.7%をはじめ他の地域ではプラスを計上した。

この都市部が好調な要因は、訪日外国人の購買力向上である。訪日外国人は大都市だけでなく地方都市にも訪れて、買い物の範囲は確実に広がっている。インバウンド消費はSCにとって重要な要因となっている。

一方でクルーズ船の寄港回数の減少により、売上げが減少したというSCからの報告もあった。ただし、この寄港回数の減少というのはごく地域的なものである。

国土交通省から平成27年5月15日に発表された「2014年の我が国のクルーズ等の動向について」によると、2014年の我が国港湾へのクルーズ船の寄港回数は、
外国船社運行のクルーズ船653回
日本船社運行のクルーズ船551回
合計では過去最高の1204回(前年比103回増)であった。

日本発着の外航旅客定期航路を利用した日本人乗客数は、日韓航路乗客数の減少により17.1万人で前年比21.2%の減となった。しかし、日本発着の外航クルーズを利用した外国人乗客数は、3.0万人で前年比のなんと5倍であった。2015年の数字はまだ出ていないが、現在の訪日外国人の増加傾向をみると寄港回数はますます増えるに違いない。そしてショッピングセンターの売上げを押し上げる第一の要因となる。

今月は販売統計調査と同時に「2015年夏期セールの結果」が発表された。
その結果は、1日当り平均売上高昨年対比プラス1.7%、1日当りレジ客数でプラス1.0%、客単価プラス1.9%といずれも昨年を上回った。

販売状況
・バーゲンセールに以前ほどの勢いがなく、客の支持が低下したといわれている昨今だが、今夏は不調から一転しプラス基調となった。
・今まで中心だった婦人アパレルなどの衣料品だけでなく、今年の傾向としてはファッション雑貨や生活雑貨、さらには食料品を好調業種にあげるSCも多かった。この食料品の好調の理由に「SCの特徴である試食」と協会では分析している。セールで来館したお客が飲食し、それが売上げにもつながったと見ている。

セール開始時期
セール開始時期は、6月第4週(6月26日(金)中)の週末が50%となり、ここに集中した。
次に7月第1週(7月1日(水)中心)が35%で、この2週で全体の85%を占めた。
ただ、昨年と比較すると7月1週に遅らせたSCが増え、昨年の15%から今年は35%と、20ポイントの増加となった。
また本来好ましいと考えるセール開始時期の回答は「7月第1週」が全体の47%で最も多く、次いで「6月第4週」が23%となった。この数字をみると来年は7月1週に集中することが予想される。

20150827_deiry_03
(表はすべて(一社)日本ショッピングセンター協会  SC販売統計調査報告より)

20150827_deiry_04

セール実施期間
・セール実施期間は11日~15日間と、16日~20日間の回答がそれぞれ全体の22%であった。

平均売上高・レジ客数・客単価
・1日の平均売上高は、40,399千円(昨年対比+1.7%)、
・1日の平均レジ客数は17,889人昨年対比+1.0%)、
・客単価は2,531円(昨年対比+1.9%)
売上げ、レジ客数、客単価すべて伸びセール販売に貢献した。

セールに関する主な意見等
・セール開始前のテナント独自のプレセール実施などによって館全体のインパクトが弱い。
・セールにこだわらず必要なものを必要なだけ買い求める傾向が続いている。
・テナントとの協力関係、信頼関係をより強化することが大切。
・夏期セールの実施時期の分散化。
・消費動向の分析、判断が難しい。

20150827_deiry_01


20150827_deiry_02

このセールに関するさまざまな意見と、上記の「好調要因」「不調要因」のアンケート表をもとに分析すると、今後のセールへの対策がみえてくる。不調要因一番の「天候要因」は避けられない項目だが、それさえも発想の転換で好調要因に変えてしまうくらいの工夫、勢いが欲しいものだ。

検索キーワード : 日本ショッピングセンター  7月売上げ  夏期セール  訪日外国人  クルーズ船  

関連カテゴリー

統計 最新記事

一覧

最新ニュース

一覧