アマゾンnews|オンライン調剤販売「ピルパック」買収/50州をカバー

アマゾン・コム(シアトル市、ジェフ・ベゾスCEO)がオンライン調剤販売の「ピルパック」(PillPack)を買収する。買収完了は監督官庁の認可が得られれば、今年2018年後半に予定されている。

ピルパックは2013年創業で、ハワイを除く50州で調剤販売のライセンスを取得している。つまりほぼ全米で調剤販売のオンライン小売業を展開していることになる。さらに、ほとんどのPBM(Pharmacy Benefit Manager、処方箋給付管理会社)の調剤薬局のネットワークに入っている。連邦政府が管轄している高齢者および障害者向け公的医療保険制度のメディケア(Medicare)の「パートD」の保険プログラムも取り扱っている。

創業者は薬剤師のT・J・パーカーとエンジニアのエリオット・コーエンだ。彼らは患者の調剤服用を適正で簡便にするサービスを追求してきた。2017年の総収入は1億ドル(1ドル100円換算で100億円)を超える。この発表後、ドラッグストアチェーンの3強ウォルグリーン、CVSヘルス、ライトエイドの株価は6%から10%ほど下がった。

アマゾンは金融のバークシャー・ハサウェーやJPモーガン・チェースとパートナーを組んで、ヘルスケア改革を進めているが、その一環となる買収である。ベビーブーマーが高齢化し、「維持薬」を服用する患者は確実に増える。簡便なオンライン調剤販売市場の将来性は高い。また、ベビーブーマーの多くはアマゾンのプライム会員でもあるから、ついで買いも増えるに違いない。

ウォルマートもピルパックの買収交渉に乗り出していた。ウォルマートの提案買収額は約7億ドル。一方、アマゾンの提示額は約10億ドルとの推測。これはピルパックの年商の約10倍である。

アメリカでは通常、こういった買収は年商の1~2倍が適正であるとされる。10倍の買収額は、ピルパックの将来性が極めて高いこと、さらに現時点のオンライン調剤販売の戦略的重要度が高いことが考えられる。ちなみにウォルマートは2016年8月にジェット・コムを買収したが、その金額は売上高の約3.3倍だった。

ピルパックが50州で取得している調剤の郵送販売のライセンスの価値は高い。さらにピルパックはPBM最大手のエクスプレス・スクリプツと販売契約を結んでいるが、その価値も高い。

アマゾンの調剤販売参入によって、同社がさらに巨大化するのが良いかどうかは分からないが、これまでのところ、低価格で購入できる消費者が恩恵を受けていることは否めない。アマゾンの影響力はロゴのようにAからZに及ぶようになるのかもしれない。

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