8月SC統計|既存SC売上高前年比11.6%減/観光客・帰省客大幅減で来館者低調
一般社団法人日本ショッピングセンター協会(東京都文京区、清野智会長)が8月のショッピングセンター(SC)販売統計を発表した。
8月の既存SC売上高は前年同月比11.6%減だった。「デルタ株」による感染急拡大は、7月31日に全国の新規陽性者数の過去最高を記録し、8月に入ってからも拡大に歯止めがかからなかった。また、お盆前の8月8日には19都道府県で緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が発出され、27日からは33都道府県に拡大した。これにより、「観光客や帰省客等が大幅に減少したこと」「営業時間短縮に加え感染防止策として入館制限が求められたこと」もSCの営業に大きな影響を与えた。また、オリンピック・パラリンピックが無観客開催となったことや九州北部地方、中国地方を中心に広範囲で記録的な大雨となったことも来館者減少の要因となった。
コロナ禍前の2019年8月との比較では28.3%減となり、7月よりマイナス幅が拡大した。
立地別では、「中心地域・総合」が前年同月比12.7%減、「周辺地域・総合」が11.3%減となった。とくに、「大都市」の苦戦が続いていて、前年同月比14.0%減となった。コロナ影響を受ける前の2019年との比較では43.4%減と大幅に落ち込んでいる。大都市以外では、例年であれば夏休みのレジャーとしての来館動機がみられる広域商圏型の大型SCでも11.3%減と落ち込んだ。
テナント(前年同月比12.8%減)とキーテナント(7.3%減)の差異は5.5ポイントで、前月の0.5ポイントから拡大した。時短営業および酒類提供禁止の要請を受けた「飲食」テナントと、外出自粛による購買モチベーションの低下が顕著になった「ファッション」テナントの不振が主な要因だ。
地域別の売上高では、厳しい状況が続く北海道が前年同月比21.9%減(19年41.5%減)と全国でもっとも大きい落ち込みとなった。これは、夏の観光シーズンにも関わらず、8月に全国的に感染が拡大したことと、札幌市中心地域のSCでオリンピック開催に伴う交通規制の影響があったことが要因だ。
関東は、7都府県すべてで緊急事態宣言等が発出され、13.1%減となった。とくに、東京都区部は厳しい状況が続いていて、2019年比では36.1%減となった。また、2020年は10%台のマイナスに留まった千葉市、横浜市、川崎市もさらに2~3ポイント悪化している。2019年比でみても千葉市34.7%減、横浜市28.4%減、川崎市27.6%減と苦戦が続いている。
中部は前年を下回ったが、中心地域は2.0%増と好調だった。愛知県では2020年8月に県独自の緊急事態宣言が発出されていたが、2021年は緊急事態宣言が27日からの適用となったことの反動増とみられる。名古屋市は2.6%増と大都市の中で唯一前年を上回った。
近畿の中心地域は前年同月比17.2%減と北海道に次ぐ落ち込みとなった。とくに、大阪市17.7%減は、2日に緊急事態宣言が発出されると自主的に休業するテナントが増えたことや、主要百貨店でのクラスター発生の報道があったこともあり、消費マインドの低下がみられた。
全業種での苦戦が続く営業環境にあるが、夏休みの身近なレジャーとして感染防止策の徹底が浸透し始めている「シネマ」、オリンピックの自宅観戦需要に対応した「家電」や「生鮮食品・惣菜・テイクアウト飲食」が比較的堅調な動向となった。 一方で、外出自粛傾向が強くなったことで、「ファッション」では新商品・セール品ともに消費者の購買意欲が低下した。