【7月商業動態統計】小売業季節調整済み1.4%増、ドラッグ、コンビニ、ホームセンター好調
経済産業省から7月の商業動態統計速報が発表された。
7月の「卸売業」と「小売業」を合わせた商業販売額は36兆8300億円となり、前年同月比▲5.8%。季節調整済みでは▲0.8%という結果だった。
*季節調整とは、経済統計の原計数から季節の変動による業績のばらつきを取り除いた指数。月ごとに変化する休日数、気温による需要の変動などの季節の要因を取り除いて、業績を正確に評価するために調整される数値である。業界ごとの協会の統計にはこの調整がない。実数値である。経済産業省統計の意義はここにあるといってよい。
1.卸売業の販売額動向
販売額は、24兆8280億円▲8.2%。季節調整済みはプラス0.2%。
業種別にみるとプラスとなったのは、食料・飲料の1項目だけで昨対0.7%増。
他はすべて減少。
建築材料▲4.1%、機械器具▲5.8%、医薬品・化粧品▲7.1%、農畜産物・水産物▲8.3%、各種商品▲10.5%、化学製品▲11.7%、家具・建具・じゅう器▲12.5%、その他▲12.8%、鉱物・金属材料▲14.9%、衣服・身の回り品▲14.9%、繊維品▲21.1%という結果だった。
(表はすべて経済産業省大臣官房調査統計グループ編商業動態統計月報による)
大規模卸売店
販売額は8兆1323億円となり、昨年同月比▲11.1%の減少。
商品別にみるとプラスは、衣服・身の回り品1.2%、家庭用電気機械器具1.1%の2項目。
一方マイナスは、鉄鋼▲14.9%、化学製品▲15.6%、繊維品▲21.7%、非鉄金属▲23.1%、石油・石炭▲28.9%。
2.小売業の販売額動向
販売額は▲0.2%の12兆0030億円でも季節調整済みでは1.4%プラス。
業種別でプラスとなったのは、飲食料品2.0%、織物・衣服・身の回り品1.3%、機械器具0.8%、その他0.7%、医薬品・化粧品0.6%。
マイナスは、自動車▲0.2%、各種商品(百貨店など)▲0.7%、無店舗小売業▲1.0%。燃料は▲11.9%と二桁減。ちなみに、今回の統計から無店舗小売業が調査カテゴリーに入った。
小売業の業態別結果をみると、百貨店・スーパーの販売額の合計は1兆7210億円。前年同月比は0.9%増、既存店でも0.6%増となった。また季節調整済みも1.2%プラス。
しかし以下の業態別詳細をみると、けして好調とはいえない。
【百貨店】
百貨店は6165億円で▲0.4%となり、既存店でも▲0.2%と減少。しかし季節調整済みでは2.5%のプラスとなった。
主力の衣料品は、全体で▲1.6%。既存店は▲1.3%。
詳細をみると、紳士服1.2%、身の回り品0.8%とプラスを計上したが、婦人・子供服は振るわず▲3.3%となった。
飲食料品は▲0.3%。既存店は▲0.1%だった。
その他は、1.6%プラスとなり、既存店でもプラス1.8%となった。
しかし詳細をみると、家具が▲5.6%、家庭用品▲4.2%などマイナス基調で、その他商品だけが3.6%の増加となった。
日本百貨店協会から発表された7月の百貨店売上高概況によると、売上高は5598億8064万円、前年同月比▲0.1%で5カ月連続でマイナスだった。中元商戦やクリアランスが好調で、入店客数は7カ月ぶりに前年を上回ったことなどにより、前月(6月)売上高▲3.5%から改善を見せてはいる。しかしプラスまでには至らなかったと協会では報告している。
【スーパー】
ここでいう「スーパー」は総合スーパーと大手食品スーパーマーケットである。
販売額は1兆1046億円でプラス1.6%、既存店も1.1%。しかし季節調整済みでは▲0.2%となった。
主力商品である飲食料品は2.5%増、既存店でも1.6%のプラスとなり好調だ。
衣料品は、全体では▲0.7%。しかし既存店は0.1%のプラス。
その中で紳士服・洋品と身の回り品はプラスとなり好調だったが、婦人服は相変わらず売上げを伸ばせず▲0.1%。
7月の衣料品は、スーパーも百貨店の同じ傾向で、紳士服と身の回り品がが売上げを伸ばしたが、柱となる婦人服は低調だった。
また、その他は▲0.6%。既存店でも▲0.6%となった。
食堂・喫茶は3.5%プラスとなったが、家具▲14.9%、家庭用品▲8.8%などが大きくマイナス計上となった。
ちなみに、日本チェーンストア協会から発表されたチェーンストア販売統計7月度速報によると、
総販売額は1兆1050億6825万円、既存店前年比0.2%増で5カ月ぶりのプラス。
また日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、新日本スーパーマーケット協会3団体の発表よる7月の食品スーパーの販売実績は、総売上高は8895億5811万円、 既存店前年同月比プラス1.4%。2カ月連続のプラスとなった。うなぎ効果もあり、総合スーパー、食品スーパーともに食料品は好調に推移したと報告されている。
【コンビニエンスストア】
商品販売額及びサービス売上高の合計は1兆0416億円で、プラス3.8%。
内訳は商品販売額が9879億円でプラス4.3%。
商品別にみると、プラスとなったのは、ファストフード及び日配食品5.8%、加工食品4.2%、非食品は2.4%と、全般的に好調に推移している。サービスは▲3.8%と振るわなかった。
日本フランチャイズチェーン協会から発表されたコンビニエンスストアの「7月の統計調査月報」では、店舗売上高は、既存店ベースで8800億4300万円。前年同期比プラス0.3%。7月は梅雨明けの遅れもあり、既存店ベースの客数はマイナスとなった。しかし気温が高かったため、夏物商材の売れ行きが良かったこと、淹れたてコーヒーを含むカウンター商材は引き続き好調に推移していることなどにより、2カ月連続でプラスとなっている。
【家電大型専門店】
販売額は、4202億円でプラス1.6%。
内訳をみると、通信家電は14.6%と二桁の伸び。AV家電も8.1%と好調だった。
一方、マイナスだったのは、その他▲1.5%、情報家電▲2.1%、カメラ類▲15.8%。スマートフォンの普及でカメラの売れ行きは下降傾向だ。
【ドラッグストア】
販売額は4984億円で、プラス5.8%。
内訳をみると、健康食品の▲0.2%以外はすべてプラス。
食品9.4%、その他8.4%、家庭用品・日用消耗品・ ペット用品6.7%、トイレタリー5.5%、ビューティケア(化粧品・小物)5.4%、OTC医薬品5.1%、ヘルスケア用品(衛生用品)・介護・ベビーは1.3%とプラスが並んだ。
【ホームセンター】
販売額は、2932億円でプラス3.2%。
内訳をみると、電気の▲1.7%以外はすべてプラス。
商品別でプラスとなったのは、園芸・エクステリア7.8%、ペット・ペット用品5.1%、カー用品・アウトドア4.7%、オフィス・カルチャー4.7%、、DIY用具・素材3.6%、家庭用品・日用品3.1%、インテリア2.9%、その他0.1%と総じて好調。
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2016年7月の結果をまとめると、
卸売業は▲8.2%、その中の大規模卸売店も同じく▲8.2%。
小売業は▲0.2%となり、両者を合わせた商業合計は▲5.8%。
小売業の業態別の前年同月比をプラスの高い順に並べてみると、
ドラッグストア 5.8%
コンビニエンスストア 3.8%
ホームセンター 3.6%
家電大型専門店 1.6%
スーパー 1.6%
▲0.4%の百貨店だけが不調という結果だった。
夏休みシーズンに入った7月は、ホームセンターがドラッグストア、コンビニエンスストアに続いて健闘している。
最後に、小売業販売額を、後方3カ月移動平均で前年比と比べた資料を参考に載せておく。
時系列データではつかみにくいトレンドをみることができる。
表は、平成22年を100として、平成23年から28年までを指数化した小売業販売額(季節調整済指数前月比増減率)の推移だ。
平成22年と比較すると102.9%だが、前月比では101.4%。そこで後方3カ月移動平均では、0.5%の上昇となる(点線の折れ線グラフ)。
個別業種でみると、燃料小売業が1.8%プラス。生活家電やAV家電などに動きがみられた機械器具は0.8%のアップ。その他に織物・衣服・身の回り品も0.1%上昇した。飲食料品は横ばい傾向。
一方不調だったのは、軽自動車・小型車に弱さがみられる自動車小売業で▲0.4%。
そこでこの発表の結論は、「小売業販売は一部に弱さがみられるもののほぼ横ばい圏」となる。
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