クローガーがCRM企業ダンハンビーUSAを完全買収して84.51°設立
アメリカ第1位のスーパーマーケット・チェーンがクローガー。
国内小売業としてはウォルマートに次いで第2位。
さらに現在まで45四半期連続既存店増収を果たすという驚異的な業績を上げている。
2015年1月期決算で年商1084億6500万ドル(1ドル100円換算で10兆8465億円)、この伸び率は前年同期比で10.3%。純利益は17億2800万ドル(同1728億円)で伸び率13.8%。
この時点での店舗数は3800。
この既存店と年商の伸びに大きく貢献しているのが、同社のクラブカード・システムだ。
この面ではイギリスの最大小売業テスコが先行していた。同社はテスコ・クラブカードを発行し、その分析に基づいたマーチャンダイジングやプロモーション、そしてロイヤルティプログラムを展開して成功を収めていた。
クローガーはテスコと盟友関係を結び、テスコの傘下にあったマーケティング企業ダンハンビーと資本金折半の合弁で、顧客データ分析会社を立ち上げた。2003年のことだから、もう12年が経過する。
その名もダンハンビーUSA。
このダンハンビーUSAが機能し始めてから、クローガーの既存店が伸び続けた。
そのクローガーが、新規にデータ分析子会社を設立した。
アドバタイジング・エイジやシンシナティ・ドット・コムなど複数のメディアが伝える。
新会社とは言っても、ダンハンビーUSAの社員520人が、この新会社に移行してスタート。
CEOにはステュアート・エイトキンが就任。
社名は「84.51°」。84度51分。
クローガーはアメリカのオハイオ州シンシナティに本拠を置くが、新会社もこの地にあって、ネーミングは新社屋の所在地の経度を示している。つまり北緯39度6分・西経84度51分。
ダンハンビーUSAは、米国内に730人の社員を抱えていたが、そのうちの520人がクローガー傘下の新会社84.51°に移籍し、残りの210人が現会社で、主にメーカーなどへのマーケティング情報サービスを続ける。その中には百貨店最大手のメイシーズも含まれる。
一方、ダンハンビーのもともとの親会社であるテスコは、この1年で93億ドルの純損失を計上している。今年1月にはショッキングなニュースだが、傘下のダンハンビー売却を匂わせていた。
あくまでも想像の域を出ないが、テスコはダンハンビーUSAの資本の半分をクローガーに売却し、その売却益で決算数値を水増しするという作戦。
もちろんダンハンビー自体は世界に2000人の社員を擁して、トップクラスのFSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)とCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)を展開しているから、アメリカ国内でもクローガー以外の企業へのサービスは継続される。
ただし、クローガー側は、そのダンハンビーUSAの機能を十二分に評価しているから、クローガー担当の520人が84.51°に移籍し、他の企業の担当者210人が従来の業務を続けるというシナリオだ。
ダンハンビーUSAはクローガーのクラブカードのID-POSデータから得られる顧客購買履歴を分析し、ウォルマートにできないロイヤルティ・プログラムを展開し、スペースアロケーションにまで活用していた。
クローガーCEOのロドニー・マクマレンの発言。
「クローガーとダンハンビーは、顧客にフォーカスすることで、アメリカの小売業に革命を与えました。84.51°でもそれを継続していきます。我々の情報とパートナーのノウハウを合わせることによってイノベーションはさらに早まるでしょう。これらの革新によってビジネスを成長させ、顧客にワールド・クラスの買物経験を提供します」
一方、新会社のCEOに就任するスチュアート・エイトキンも発言している。
「84.51°は今後もクローガーからの独立性を維持するつもりだ。それが過去12年間の成功の要素のひとつだった」。
つまり、マーケティング機能を有する会社のインディペンデント性が、主体小売業への強いアドバイスとなって、相互に効果を発揮してきたわけだ。
ダンハンビーUSAの年間総収入は推定2億7500万ドル(275億円)。クライアントには、プロクター&ギャンブル、コカコーラ、ケロッグ、さらに先述したメイシーズなどが顔を並べている。
こういったマーケティング企業は小売業への貢献とともに、取引先製造業や卸売業にも有益な情報を提供して収益を上げることができる。
ちなみに商人舎magazineの[Weekly Special]記事ウォルマートUS「6つの原理と8つの改善策」の中で、CEOのグレッグ・フォーランが述懐している。
「我々は消費者動向をつかむ上で、データを活用するということに遅れをとっている。すでにプロジェクトチームを立ち上げており、1年半~2年をかけてシステムを構築していく予定だ」
これは明らかにクローガーのFSPやCRMを意識した発言だ。
クローガーは84.51°を設立し、さらに綿密な顧客情報分析のイノベーションを起こそうとしている。そしてウォルマートもそれを追いかけようとしている。
アメリカの顧客情報活用合戦に拍車が掛かってきた。
〈結城義晴〉
検索ワード;クローガー ダンハンビー テスコ ウォルマート 84.51° FSP CRM