今年1月最低賃金を引き上げたウォルマートがアップスキリング・プログラム導入
ウォルマートが次々に、アソシエーツ対策を打っている。
まず、今年度の初めに10億ドル(1200億円)をかけて、アソシエーツの最低賃金を引き上げ、教育訓練を強化した。
第5代目CEOのダグ・マクミランは、賃金を引き上げることによって、顧客のショッピング・エクスペリエンスを向上させようと意図している。しかしブルームバーグは、その分、一部の従業員の勤務時間を減らして、経費削減をし、売場の状態は維持させようとしていると報じている。
この批判を受けたのかどうか、今度はアソシエーツのスキルアップ・トレーンングを始める。
名称は「アップスキリング」。
まず、ミズーリ州ジョプリンのスーパーセンターで実験の準備がなされている。
この実験店はウォルマートでは当たり前だが24時間営業で、フルタイム・アソシエーツは345人。ウォルマートの店舗の人員構成は月給のマネジャー、時給のフルタイマー、時給のパートタイマーの3階層。
このうちのマネジャーの教育や訓練プログラムは完備されているが、フルタイマーはこれまでEラーニングによる自習とOJTだけだった。
このアップスキリング・トレーニングを投入して、この現場の中心層の技術やモチベーションを上げようという試みだ。この新しいトレーニングは、何より顧客サービスの改善になる。
この新しいプログラムは作業技術だけでなく、ウォルマート・ビジネスの全体像や組織論までが含まれていて、半年後の査定で合格すれば昇格される。また時給の高い家電デパートメントなどの専門部署に配属される可能性も生まれる。
このトレーニング・プログラムの実験結果を見て、来2016年には全米の3407店のスーパーセンター、470店のディスカウントストア、さらに579店のネイバーフッドマーケットで展開される計画だ。
社員に対する教育投資は、日本でも最重要課題だし、スーパーマーケットではホールフーズやウェグマンズがそれを積極的に推進している。ウォルマートはクッキーカッター方式の古典的なチェーンストア理論からとうの昔に脱してはいたが、いよいよ「働く人たち」こそが、良い買物環境を築き、顧客に良い買物経験を提供するのだとの認識を強め始めたということだ。
これはウォルマートの離職率を下げるという効果も期待される。
米国小売業界の平均離職率は新入社員の場合、半年間で5割といわれている。恐ろしい数値だが、新入社員が1人退社すると、その年収の2~3割が無駄になる。最大5000ドルとなる。
ウォルマートがこれらのアソシエーツを1年から1年半雇用し続けることができれば、数千万ドル(数十億円)の節約になる。
ウォルマートの構想はさらに大きい。目標は、小売業界一般に通用する資格制度の確立である。
ウォルマート・ファウンデーション・シニア・ディレクターのジュリー・ガーキのコメント。
「他のリテーラーと協力して、顧客サービスの資格制度を構築するのが最初のステップです」。
まずはこのトレーニング・プログラムも顧客サービスやホスピタリティ教育から始められる。
素晴らしい。
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