米国モバイル決済はロイヤルティプログラムとの連動で1年で3倍増

昨日10月25日に、いよいよ日本でも、iPhoneでのモバイル決済サービスが始まった。

アップル社はアメリカ国内で「Apple Pay(アップル・ペイ)」という独自の決済サービスを展開していたが、これまで日本には導入されていなかった。それが晴れて、日本でも「iPhone7」端末で利用できるようになったのだ。

iPhoneで決済ができるようになったJR東日本の「モバイルSuica」サイトには、通常の10倍ものアクセスが集中し、システム障害が発生してしまった。これはいかに多くのiPhoneユーザーがモバイル決済を待ち望んでいたかを証明している。

日本のスマートフォンでは、アンドロイド端末に「おサイフケータイ」という決済サービス機能が早くから備わっていた。しかし、日本ではアンドロイドよりもiPhoneの所持率が高く、2016年1月時点で50.3%のシェアを有する(Kantar社調べ)。ちなみにこれは世界でもっとも高いシェアである。つまり、今回のiPhoneのアップル・ペイへの対応は日本のモバイル決済サービスの裾野を大きく広げることとなる。

では、アメリカでのモバイル決済はどのような状況にあるのだろうか。

調査会社EMarketerは、2016年度のモバイル決済取引額は昨年の3倍以上の270億ドルにのぼると予測している。

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アメリカは日本以上にカード社会。少額決済でもクレジットカードやデビットカードで支払うことが当たり前だ。それがスマートフォンの普及で、より利便性の高いモバイル決済に移行している。小売サービス企業の多くは、モバイル決済サービスを積極的に導入している。世界最大企業ウォルマートをはじめ、スターバックス、アップルなどなど。iPhoneのアップル・ペイはサービスが開始されて2年目だが、すでに米国内のモバイル決済シェアでは最大を占めている。

モバイル決済サービスは、単に支払いの利便性が高いだけではない。小売りサービス業のロイヤルティ・プログラム機能が付与されている。ここが重要なポイントだ。つまり、利用者にとっては、クレジットカードやデビットカードを決済単体で使うより、モバイル決済サービスを利用する方が、お得なサービスを享受できるというわけだ。

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(画像:Apple Product Imagesより)

デパートメントストアKohl’s(コールズ)では、「Kohl’s Pay」が10月にスタートしたばかり。「Kohl’s Pay」では、 コールズのポイントプログラム「Kohl’s Cash」やクーポンが利用可能で、特典が受けられる。またコールズのクレジットカードと連動させることで自動チャージ(入金)ができるのも利便性が高い。

コールズにとってのメリットも大きい。利用できるクレジットカードを自社のものに絞ることにより、他のクレジットカード(VisaやMasterCardなど)への手数料をカットでき、さらにインセンティブ(カード利用額に応じた報酬)も得られるからだ。

 

スターバックスではアプリ「Starbucks app」 を利用すると事前にしかも同時にオーダーと支払いができる。また利用頻度に応じてポイントが貯まると、ドリンク無料のサービスが受けられる。アメリカ国内のスタバ店舗では顧客の支払いの約25%がモバイル決済で、広く普及していることがわかる。
 
ドラッグストアのWalgreens(ウォルグリーン)でも、アップル・ペイを基盤にしたアプリを導入している。店に入ると、アプリが自動的に会員カード「Balance Rewards」を画面に表示するため、会計時に簡単に決済利用することができる。これはアメリカでも画期的なサービスとして評価されている(上の画像の右側がその画面)。
 
モバイル・マーケティング会社のUrban Airshipの調査では、特定の企業のロイヤルティプログラムを利用する顧客は、その店で買物をする頻度が高く、購入する額が上がる傾向があると報告している。また、自分の保有ポイントや特典がモバイル端末で即座に確認できるなら、顧客の70%がロイヤルティプログラムの利用を開始する傾向がみられるという。

ロイヤルティプログラムとモバイル決済を組み合わせれば新規ユーザー獲得につながる。とくにスマホネイティブ(携帯端末の機能が高まり便利になったため、パソコンができない若い層)なミレニアル世代には、モバイル決済は必需のサービスといえる。

 

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