トレーダー・ジョーnews|創業者ジョー・コローム氏(89歳)逝去
トレーダー・ジョー(カリフォルニア州モンロビア、ダン・ベインCEO)の創業者ジョー・コローム(Joe Coulombe)氏が28日にパサデナの自宅で亡くなった。89歳だった。
1958年5月にトレーダー・ジョーを創業した。アメリカ小売業界でも伝説の創業者だ。
コローム氏は創業当時について語っている。「世界恐慌後の1932年当時、大学へ行くことができた人はわずか2%でした。しかし1965年になると、大学進学率は60%にもなりました。この人たちがマーケットを支配する人たちになったのです」。第二次世界大戦後のベビーブーマーたちだ。
「頭がいいとは限りませんが、少なくとも教育を受けている人たちは『何か違うもの』『新しいもの』を求めているのではないかと考えました」。
そこで思いついたのが、ベビーブーマーたちのための新しいグロサリーストアだ。しかし新しい消費の主役となるベビーブーマーはどのようなライフスタイルなのか。ある日、新聞記事でそのキーワードを発見する。「教育を受けた期間が長い人ほど、お酒をたくさん飲む」。
そこでコローム氏は世界中の酒類を品揃えして、ベビーブーマーを惹きつけようとした。そして環境や健康、ウェルネスに関する雑誌を読んで時代観を養う。1971年1月、健康食品店と酒販店が融合した店舗をつくりあげる。これがトレーダー・ジョーだ。
この時、主要な顧客になったのが、「教育を受けているが、それに見合った賃金を受け取っていない人たち」だ。コローム氏はマーケットセグメンテーションして、“Over educated, and under paid”の客層をターゲッティングして大成功する。
1972年には、初のプライベートブランド(PB)「グラノーラ」を発売して、大ヒット。
1977年には、初のオーガニックPB「オーガニック無濾過アップルジュース」を発売してこれも大人気。
1979年には、ドイツのアルディ・ノードのテオ・アルブレヒトとそのファミリーに株式を売却。しかし、コロームが以後10年間CEOにとどまることで合意している。
1985年、ニュースレター『インサイダー・レポート』を『フィアレス・フライアー』に衣替え。現在でもトレーダー・ジョーの最も重要な広告メディアとなっている。
そして1988年、コロームはCEOを退任して、会長に就任。ジョン・シールズが後任となる。それでもコロームの経営理念はいささかも崩れず、アルディもその経営理念にいっさい干渉せず、最高の経営環境は維持されてきた。
1988年から全米を視野に入れた店舗展開が始まる。この年、初めて南カリフォルニアを出て、北カリフォルニアに進出。1992年、アリゾナ州に進出。1997年、東海岸に進出し、マサチューセッツ州ブルックリンに新店をオープン。
さらに21世紀に入ると2002年、ジョン・シールズがCEOを退任。後任CEOはダン・ベインとなる。それでもジョー・コロームの精神は輝きを増すばかり。
2002年、PBワイン「チャールズ・ショー」、通称「2ドルのチャック」発売開始。またたく間に大人気商品となる。
そして2006年3月、聖パトリックの日に、待望のニューヨーク州マンハッタンに出店。
2007年には、すべてのPB商品からトランス脂肪酸・着色料・合成香料・保存料などを排除すると宣言。
2018年、PBのオーガニックワイン「SHAW(ショー)」を3.99ドルで新発売。
2019年3月現在、41州およびワシントンDCに計493店舗を出店。2020年の現時点では、42州に500店を超える店舗網を構築している。そしてそのすべてにジョー・コロームのマインドが満ち溢れている。
ウェストコーストの香りがぷんぷんするユニークな店内、安全で健康的でおいしくて低価格のユニークなプライベートブランド、そして例外なくフレンドリーでユニークなスタッフたち。全米で絶大な人気を誇るトレーダー・ジョー。その基礎を築いたジョー・コローム氏が逝った。冥福を祈りたい。