ウォルマートとターゲット 値ごろな製品でナチュラル&オーガニック市場に本格参入
アメリカの2大チェーン、ウォルマート・ストアーズとターゲットが相次いで値ごろ価格のナチュラル&オーガニック製品を投入すると発表し、火花を散らしている。ナチュラル&オーガニックのブランドといえば、これまで一部の専門性の高い店舗で販売されるプレミアムな商品だったが、今回の両社の動きは世の中の健康志向の高まりを受けて大衆化が始まったことを示している。今後は一般消費者でも日常的に購入できる価格帯での商品開発が進み、市場が急速に拡大する可能性が高い。
ウォルマートは10日、ナチュラル&オーガニック食品スーパーマーケットの老舗「ワイルドオーツ」の製品を今月から販売すると発表した。ワイルドオーツがナショナルブランド(NB)として販売している製品よりも、25%以上安い価格で提供する。ウォルマートの顧客の91%が、手の届く価格であればオーガニックブランド製品を購入する意向を持っていることから、プレミアム価格を上乗せせずに販売することで、オーガニック製品市場のすそ野を広げて大きな収益基盤に育てる戦略だ。
ワイルドオーツと聞いて「おやっ?」と思った人もいるだろう。そう、ナチュラル&オーガニック食品スーパーマーケットの雄ホールフーズ マーケットが、2007年に買収を仕掛けた企業だ。この買収は結局、反トラスト法に抵触するとして法的に認められず、現在、ワイルドオーツは「ワイルドオーツ・マーケティング有限責任会社」として投資ファンドのユカイパ傘下で運営されている。つまり小売業経営としては苦しい。だからウォルマートに対して卸売りをするということ。
ウォルマートUSの食品担当上級副社長ジャック・シンクレア氏は、「我々は通常の製品よりも高いお金を払わなければ買えないオーガニック市場の現状を変える。オーガニック食品についてこれまでとは違う価格でポジショニングし、売上げを拡大する。ウォルマートはいま、企業規模を活かして品質と求めやすい価格を両立させた食品を提供するために努力している。今回の決定はその一環だ」と語っている。
ウォルマートとワイルドオーツは、サルサソースやパスタソースからキヌア、チキンブロスまで、幅広いカテゴリーで約100品目の導入を計画している。
4000店を超えるアメリカ国内のウォルマート店舗に加え、今夏後半にはEコマースサイトWalmart.comでも販売を開始する。
一方、ターゲットは9日、新製品コレクション「Made to Matter – Handpicked by Target」の投入を発表した。健康・環境志向の製品ブランドは「Better-For-You」ブランドと呼ばれるが、ターゲットはSeventh GenerationやKashiなど「Better-For-You」ブランドのリーダー企業17社と組んで、120以上の新製品と期間限定の専用商品を販売する。もちろんターゲットは、ウォルマートを意識して「他社に負けない価格」で販売するとしている。
「私たちの顧客は、価格と品質のどちらも犠牲にすることのない商品を求めているのです」
マーチャンダイジングとサプライチェーンを担当するターゲットのキャシー・テシジャ上級副社長は、信頼のある17ブランドと協業する理由をそう説明する。
対象製品はベビー、HBCから食品、家庭用品まで幅広く、新開発商品のほか既存商品に新たな風味を追加してラインアップする。第一弾は先月末に投入された。春・夏シーズンを通して新商品が追加される予定で、すべてが出そろうのは今年の9月になる。
「Made to Matter」は通常のゴンドラで販売されるほか、特設スペースでコレクションとしてディスプレイされる。リアル店舗に加え、EコマースサイトTarget.comとスマートフォンやタブレットのアプリでも購入できるようになる予定だ。
2011年のアメリカのオーガニック食品の市場規模は、調査会社MaketLineによれば292億ドル(約2兆9200億円、1ドル=100円換算)で、16年末には465億ドル(4兆6500億円)にまで拡大するとされている。この巨大市場にウォルマートとターゲットが本格参入することで、王者ホールフーズがどのような対応に打って出るかに注目が集まる。
スーパーマーケット全米No.1のクローガーも、12年に導入したプライベートブランド(PB)「Simple Truth」でオーガニック食品を展開している。顧客が望まない人工保存料・成分101種類を使用していないことが特長で、「驚くべきペース」(クローガーのマイク・エリス社長COO)で急成長している(クローガー 2013年度決算は1.8%増収・1.5%最終増益・商人舎magazine 2014年3月12日)。
ナチュラル&オーガニック製品市場が成長するということは、裏を返せばプレミアムな地位から降りて大衆化路線を歩むということに他ならない。この分野で独自のポジションを築いてきたホールフーズにとっては、一方で強力なライバルであるトレーダー・ジョーを睨みながら、他方でウォルマートやターゲット、クローガーなどとのタフな闘いに臨まなくてはならないことを意味している。
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