「ターゲット・エクスプレス」登場で小型店競争激化/エクスプレスストアは認知された!
「とうとう」というか、「お前もか」というか。
全米小売業ランキング第4位のターゲット。
ウォルマートと同業態で競合するライバル。
そのターゲットが「エクスプレスストア」の新フォーマット実験を始めた。
店名はそのまま「ターゲット・エクスプレス(Target Express)」。
ターゲットはユニークな会社で、同業態ながらウォルマートを追随しない。
しかし今回は、「ウォルマート・エクスプレス」に続いて、「ターゲット・エクスプレス」。
ウォルマートは2011年6月にエクスプレスストア実験をスタート。
今年2014年の3月6日には、さらに「ウォルマート・トゥ・ゴー」ともっと小型の店を試みている。
このエクスプレス・フォーマットは、イギリスのテスコが1994年に、世界で初めてロンドンでオープンさせたものだが、それをウォルマートもフランスのカルフールも、小型店の代名詞として使っている。
したがってターゲットは、いわば周回遅れで「エクスプレスストア」に参入したことになる。
ただし、この遅れた参入は、アメリカ国内でダントツ一番手のウォルマートの小型店「エクスプレスストア」に関して、最大のライバルのターゲットが、渋々ながらも、その成果を認めたことを意味する。
私はこれが、ターゲット・エクスプレスのいちばん大きな意味付けだと考える。
米国の各メディアもこぞって報道している。
その「ターゲット・エクスプレス」1号店は、ミネソタ州ミネアポリス市にオープン。
ミネアポリスはターゲットの本拠地。
店舗面積は2万平方フィート(1855㎡、563坪)。
同社は現在、主に4つのフォーマットを展開している。
第1が、Target で平均店舗売場面積1万2000㎡。
これが主力のディスカウントストアと呼ばれる非食品総合ストア。
第2が、Target Greatlandで、平均面積1万4000㎡。
生鮮食品は本格的には扱わないが、グロサリーを強化した。
第3が、Super Targetで平均店舗面積1万6300㎡。
これはウォルマート・スーパーセンター に対抗するフルラインのハイパーマーケット。
そして注目すべきが第4のCityTarget。
店舗面積5000~9000㎡の都市型新フォーマット。
2012年7月にシカゴ、シアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルスでオープン。
大都市のアーバンエリアに出店して、生鮮食品や生活必需品を取扱うと同時に、最新ファッションやデザイナーコレクションなど、アパレルも強化。
このシティ・ターゲットはウォルマートも試みていない独自路線で、企業としてのターゲットの面目躍如たるフォーマット開発だった。
ターゲット・エクスプレスはシティ・ターゲットをさらに5分の1に縮小したフォーマットである。
立地はディンギータウン地区で、ミネソタ大学から1ブロックのところに、隣接したような地点。当然ながら顧客層は学生や大学職員など都市生活者。
小型店には、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングのSTPマーケティングが必須だ。小型だからこそ、顧客層を鮮明にしなければならない。
その意味で、本拠地ミネアポリスの大学街は、まことに好条件を揃えている。
品揃えカテゴリーは、まず生鮮食品、乳製品、冷凍食品、グロサリーのスーパーマーケット・アイテム。生鮮食品の小型売場をターゲットは「Pフレッシュ」と呼ぶが、それが導入されている。
もちろん、サンドイッチなどファストフードも強化される。
さらに化粧品、薬品のドラッグストア・アイテム。
そこにターゲットの得意なアパレル用品、そして当然ながらミネソタ大学グッズ。
これが実によく売れる。
これ以外に強化されているのがスマートフォンなどのテック部門とオンライン・ツー・オフライン〈O2O〉のネット展開。
O2Oではストアピックアップ用の窓口(オンラインで購買して、店舗で受取るためのカウンター)や「カート・ウィール」コーナーも設けられている。
カート・ウィ-ルは、これもオンラインで商品を選択し、店のレジで主にスマートフォンでバーコードをスキャンして、値引きしてもらう仕組み。
最新のデジタル・ショッピング・システム満載の小型店となる。
ターゲット・エクスプレスは2015年までに、まずミネソタ州のセントポール市内に1店舗、カリフォルニア州サンフランシスコ周辺に3店舗が出店される予定。
日本ではコンビニエンスストアが異常発達しているために、エクスプレスストアはこれからというところ。アメリカはコンビニ発祥の国でありながら、日本ほどに発展しなかった。今、エクスプレスストアにその期待がかけられ始めたというところだろうか。
ターゲットも、もちろんウォルマートも、マルチ・フォーマット戦略の一環として、エクスプレスストアの開発に勤しむ。そしてそれは自社商品のオンライン販売を補完する「ストアピックアップ」の機能獲得競争でもある。
〈結城義晴〉
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