アークスnews|バロー・リテールパートナーズと「新日本SM同盟」の資本提携
(株)アークス(札幌市、横山清社長)、(株)バローホールディングス(岐阜県恵那市、田代正美会長兼社長)、(株)リテールパートナーズ(山口県防府市、田中康男社長)の3社が12月25日付で資本業務提携を結ぶと発表した。ネーミングは「新日本スーパーマーケット同盟」。
2019年1月17日までに、第三者割当による新株式の発行および自己株式の処分を行うことで、互いに株式を持ち合う。アークスとバローはそれぞれ、他の2社に株式の2.3%ずつを約30億円で割り当てる。リテールパートナーズもアークスとバローに約30億円で6.7%ずつを割り当てる。それぞれが約60億円ずつ、他の2社に割り当てて、ぐるりと回る勘定になる。
2017年度の年商はアークスが5140億円、バローホールディングスが5440億円、リテールパートナーズは2230億円。単純に合算すると1兆2810億円となり、イオン、セブン&アイ、ファミマ&ドンキに次ぐ、第4極のグループが形成されたことになる。
3社は規模のメリットを活かして、仕入れや物流面での協業を検討していく。
アークスは、北海道・東北地域でスーパーマーケット事業子会社8社を中心に食品流通企業グループを形成する。北海道では(株)ラルズ(札幌市)、(株)福原(帯広市)、(株)道南ラルズ(函館市)、(株)ふじ(旭川市)、(株)東光ストア(札幌市)が参加。東北では(株)ユニバース(青森県八戸市)、(株)篠原商店(網走市)、(株)ジョイス(岩手県盛岡市)、(株)ベルプラス(岩手県盛岡市)がグループに加わっている。北海道から北東北のスーパーマーケット一大企業連合体に。グループ店舗数は336店舗(5月末)を形成する。
バローホールディングスは、東海・北陸地方を中心にスーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンター等を840店舗(2018年9月30日現在)展開する。製造から流通・販売までを一貫して担う「製造小売業」を志向して、エブリデーロープライスを標榜する。バローはこれまで独立自営のリージョナルチェーンであった。
リテールパートナーズは、中国・九州地方で食品スーパーマーケットを主業とする(株)丸久、(株)マルミヤストア、(株)マルキョウの共同持株会社だ。スーパーマーケット事業とディスカウントストア事業を231店(9月末時点)展開する。丸久がもともとオール日本スーパーマーケット協会に加盟していたが、現在はマルキョウもマルミヤストアも同協会に加盟している。
戦略的な提携関係を具現化し目的を達成するために、3社は以下の提携の検討・推進を行っていく。
(1)既存領域の強化
①地場商品や産地情報、取引先情報の相互共有
②資材・備品・什器などの共同購入
③店舗開発、店舗運営などのノウハウの共有
④物流やセンター運営のノウハウの共有
⑤スポーツクラブ事業などの小売周辺事業の共同展開
⑥人材採用や人材教育に関するノウハウの共有 他
(2)次世代に向けた取り組み
①カード事業の共同研究、及び統合に向けた検討
②バックオフィス業務の統合も含めた共同研究
③金融、決済事業に係る共同運営の検討
④スマートストア(次世代型店舗)など新たなテクノロジー対応への共同研究 他
【結城義晴の述懐】「新日本スーパーマーケット同盟」――このリージョナルチェーン3社の資本業務提携の次の段階は「この指とまれ」で、ほかの企業やグループにも声をかけていくのだろう。
日本のスーパーマーケットにおけるリージョナルチェーンは、指折り数えれば20数社。北海道のアークスと、東北のヨークベニマル。東北にはまだマークスホールディングス(おーばんホールディングス、うめや、キクチ、マイヤ、びはん、マエダの純粋持ち株会社)や秋田のユナイトホールディングス(伊徳ホールディングスとタカヤナギ)がある。関東はライフコーポレーション、ヤオコー、サミット、ユナイテッドスーパーマーケットホールディングス、いなげや。北関東と新潟のアクシアルリテイリング、中部はバロー、北陸のアルビス。関西は万代と平和堂、オークワ、阪急オアシス。中四国は、イズミ、ハローズ、フジ。九州は北のハローデイ、南のタイヨーといったところか。
このうち、ヨークベニマルはセブン&アイの子会社で、万代とイズミもセブン&アイと提携している。ライフとヤオコーは互いに信頼しあって提携していて、ユナイテッドやいなげや、フジはイオンのグループに入っている。阪急オアシスはハローデイと緩やかなグループを組んでいるが、H2Oリテイリング傘下の企業。
こうなるとアクシアルリテイリングには猛烈な秋波が送られていることが推測されるし、マークスやユナイトはアークスと同じCGCジャパンのグループだから、同盟への声掛けも行われているだろう。ハローズやアルビス、さらに平和堂やオークワのニチリウグループにも、何らかのアプローチがあるかもしれない。2019年が俄然、M&Aを急加速されていく年度となることは間違いないが、2点だけ、気になる事項がある。
第1は、アークスもリテールパートナーズも、まだ経営統合によってリージョナルチェーンになった企業だ。したがってまだ、自社におけるシステム統合のプロセス段階である。
それが整わねば、規模のメリットは享受できない。さらにこの新日本スーパーマーケット同盟が誕生して、そこへの参画ということになった。まずは足場を固める仕事と並行しながらのアライアンスということだろうが。
第2は、今回はリージョナルチェーンのアライアンス(同盟)だが、それに漏れたローカルチェーンはどうするのか。
アークス横山清社長の人柄の大きさや人間力に頼った「同盟」だろうが、いかに将来を構想するかが問われている。逆に多くのローカルチェーンにとっては、日本列島をほぼ縦断する一つの「軸」が誕生したと考えることもできる。それによってイオンの全国企業統合と対抗するという図式を描くことができるかもしれない。