山口・丸久と大分・マルミヤストア経営統合で155店舗1200億円企業誕生
山口県に本部を置く㈱丸久と大分県中心の㈱マルミヤストアが統合する。
時期は7月1日。そのM&Aと株式交換についての契約が3月30日に締結された。
すでに今年1月9日に発表されていた内容は、両者が持株会社のもとに株式交換方式によって経営統合するというもの。
現在の丸久が持株会社となり、その傘下に新・丸久(3月9日に設立した丸久の全額出資子会社である丸久分割準備会社)とマルミヤストアが子会社で入る。両者ともに株式公開しているが、丸久が上場を維持し、マルミヤストアは上場廃止。
ちょっとややこしいが、現丸久は7月1日に新商号に変更し、分割準備会社は、「丸久」に商号を変更する。
丸久の商号は6月末まで、仮称「西日本リテール・パートナーズ」となり、この会社がホールディングカンパニー。その社長は現丸久社長の田中康男氏、副社長は現マルミヤストア社長の池辺恭行氏。
丸久は山口県を中心に、福岡県、広島県西部などのエリアで、現在93店舗。2014年2月期決算の売上高830億5200万円、営業利益36億9900万円、経常利益38億4900万円。
マルミヤストアは大分県を中心に、宮崎県、熊本県、福岡県に62店舗を展開。売上高375億4000万円、営業利益6億700万円、経常利益7億2300万円。
単純合計すると、中国地方西部と九州北部に155店舗、年商1205億9200万円のリージョナルチェーンが誕生する。経常利益は合計で45億7200万円。
売上高経常利益率は3.8%。
昨年の決算は合格ラインを超えた水準。
丸久の2015年2月期の見通しは、売上高874億円、営業利益37億5000万円、経常利益39億円。マルミヤストアはちょっと停滞していて、2015年5月の売上高375億4400万円、営業利益2億9200万円、経常利益3億9500万円。マルミヤの決算が終了した時点で経営統合するという計画。
丸久は1954年に山口県の9つの食品・雑貨問屋が合同で小売業を創業。その後、食品スーパーマーケット事業を展開し、山口県第一の企業となった。山口県には「丸信」というスーパーマーケット企業があって、その創業者は丸久の創設に参加した仲間だったが、ダイエーと提携関係を結ぶなどサバイバルを志向したものの、2000年に倒産。一方の丸久もバブル崩壊後の窮地を脱して、飛躍的な改革が進み、広島県西部、福岡県へとネットワークを広げた。
マルミヤストアは1972年創業で、大分県佐伯市に1号店をオープンさせ、大分県南部から、宮崎県、熊本県に出店を拡大。さらに福岡に参入し、近年は大分県大分市などにも進出。というのもかつて、大分県のトキハ百貨店系のスーパーマーケット・トキハインダストリーと不可侵条約のような約束があって、大分市近辺には自ら出店を規制していた。しかし時代は変わり、マルミヤストアとトキハインダストリーの県内両雄も直接対決が頻発している。
丸久は1984年、広島証券取引所、1985年、大阪証券取引所市場第二部に上場。さらに2000年、東京証券取引所市場第二部に上場。
マルミヤストアは1999年、福岡証券取引所に株式上場。つまり上場企業同士の統合となるが、今回、マルミヤストアが上場廃止し、ホールディングカンパニーが継承企業となる。
この規模の企業ならば東証第一部に上場を果たし、経営者はその上場益を手にすることができる。そんなM&Aでもある。
もうひとつ重要な要件がある。
丸久は1998年、オール日本スーパーマーケット協会に加盟し、その後、2005年、中国地方九州地方のトップ企業㈱イズミと業務資本提携している。そのイズミは昨年、福岡に地盤を持つスーパー大栄と資本業務提携を結び、実質的に傘下に収めている。
一方のマルミヤストアは2008年にニチリウグループに加盟している。
丸久が提携しているイズミはニチリウの主力メンバー企業で、経営統合後、ホールディングカンパニーはニチリウに傾斜していくのか、オール日本スーパーマーケット協会に力を入れていくのか。どちらもプライベートブランドを持っているから、当面、それぞれの子会社は従来の関係を維持するだろうが、スケールメリットを実現させるためには、どちらかに力点を置かざるを得ない。やはりニチリウに傾いていくと考えるのが妥当だろうか。
イズミは福岡県やその周辺の九州北部で、スーパー大栄を中心に、丸久、マルミヤストアを合わせて、シェアを高めていく。
ちなみに大分県のマルミヤストアのライバル・トキハインダストリーはオール日本スーパーマーケット協会に加盟していて、丸久と近い。そのトキハインダストリーと統合するのは百貨店のトキハの存在があって、これは考えにくいことで、そこでマルミヤストアとの統合に至ったと想像できる。
日本全国にある商品の共同仕入れ組織や「知恵の共同仕入れ」グループが、M&Aによって入り乱れてくる。これこそ現在の経営統合の特徴である。
そして丸久・マルミヤストアのM&Aは周辺に強いインパクトを与えることになる。この統合に参加してくるローカルチェーンもあるだろう。
範囲の経済の中で、寡占から三占、複占へと動く潮流を止めることはできない。
〈結城義晴〉