百貨店ランキング2013年vs2008年比較の「強者と弱者」、その論理

日経新聞の2013年百貨店調査が発表された。
日経MJに213位までのランキングが公開された。

もうこれは国家的な調査なので、
商人舎magazineでも分析させていただこう。

ランキングの1位は伊勢丹新宿本店、売上高2654億5100万円。
店舗面積7万0325㎡で、改装効果もあり前年比伸び率は12.1%。

第2位は阪急梅田本店、1922億1400万円。
増床と大改装で生まれ変わった9万7804㎡の巨艦店舗は、
大阪百貨店抗争の勝ち組。

その伸び率、何と32.8%で、4位から2位に躍進。

第3位は西武池袋本店。売上高1844億5300万円。
そごう・西武の旗艦店ながら、昨年の2位からランクを落とした。
伸び率は2.9%の微増。7万3814㎡。

同じく3位から4位に転落したのが、三越日本橋本店。
売上高1736億4000万円、6.4%増。
改装効果で老舗百貨店の生き残りをかける。

5位は高島屋横浜店。1353億7000万円、2.7%増。
6位も高島屋日本橋店。1299億0100万円、3.0%増。

7位は松坂屋名古屋店の1241億4900万円、9.7%増。
昨年の8位から1ランクアップ。

一方、1ランクダウンの8位は高島屋大阪店。
1206億8500円、0.6%増の横ばい。

9位はジェイアール名古屋タカシマヤ。
1204億2200万円、9.1%増。
この店はずっと健闘。
何よりも立地がいい。

百貨店は面積と立地。
その相乗効果。

10位がそごう横浜店で1098億8900万円、4.4%増。
横浜高島屋としのぎを削りつつ、
着実に成長を遂げている。

ここまでがベスト10店舗。

11位の東武百貨店池袋本店が1068億8000万円で、1.8%のプラス。
そして11位までが年商1000億円を超えた。

総合スーパーの年商は、
かつて100億円で、その10店分が、
超級百貨店のあかしだった。

その1000億店舗が11店。
しかしこの11店には大いに可能性がある。

なぜなら立地と面積とブランドを持つ強力な店ばかりだからだ。

それが売上げを減らしているなんて、
怠慢に他ならない。

ベスト10以外の動向。

ベスト10からこぼれおちたのが12にランクを下げた東急百貨店本店。
昨対マイナス13.8%の923億0900万円と1000億を切った。
東急東横店の閉店、渋谷ヒカリエの開業と渋谷駅周辺の変貌の余波で、
本店自体の業績にやや陰りが見えてきた。

13位のあべのハルカス近鉄本店は逆に18位からの躍進。
売上高916億4300万円、11.3%の伸びで大健闘。

二桁の伸びを示したのは三越銀座店692億2000万円、13.0%、
大丸東京店370億円、17.1%。

こうしてみると大都市圏の、しかも改装を施した店舗の伸び率が高い。
つまりはこれが百貨店とい業態の特性でもある。
大商圏立地で大型店舗の装置産業で、常に鮮度を保つメンテナンスが必要になる。

「百貨店の店舗数は30年ほどのうちに半減する」。
これが結城義晴の持論だが、
「百貨店がなくなる」だとか、「百貨店は社会的機能を喪失する」などとは、
大都市の百貨店の好調さを見るとまったく考えられない。

5年前の2008年度の百貨店の動静と比較する。
同じく日経MJの2008年百貨店調査。  

第1位は、三越日本橋本店 2531億円。
第2位は、新宿伊勢丹 2460億円。  
この2店が、2000億円を超えていた。

2013年度の2000億円超えは伊勢丹新宿のたった1社になってしまった。

第3位は、阪急百貨店うめだ本店 1729億円。
第4位は、池袋西武 1692億円。

第5位、横浜高島屋 1613億円。
第6位、日本橋高島屋 1465億円。
第7位、大阪高島屋 1421億円。    
高島屋が、5位から7位までを占めていた。

第8位は、東急百貨店本店 1243億円。
第9位、松坂屋名古屋本店 1232億円。
第10位、東武百貨店池袋本店 1224億円。  

全体の動向を5年前と比較してみよう。

2008年段階の1000億円以上は、13店。
第11位、近鉄百貨店阿倍野本店 1206億円。
第12位、そごう横浜店 1117億円。
第13位、小田急新宿店 1048億円 。

それが2013年段階では、第11位東武百貨店池袋本店が最後。
5年前の13店に比較して、11社になってしまった。

さらに2013年段階で、年商500億円を超える百貨店は35店だったが、2008年は39店。  
その35位は名鉄百貨店本店の513億8600万円で、2008年の39位は548億円の西武渋谷店。

年商300億円を超える店舗は2013年62店、2008年69店。
年商200億円以上は2013年90店、2008年は109店。
150億円超は2013年に118店、2008年は139店。
そして100億円超は159店と178店。  

都心の最高立地、超巨大な店舗。絶大なる信用と暖簾。
それでもお客はより新しいもの、より新しい環境、より新しい店舗への動く。
それがランキングの変動によくあらわれている。

同じ日経MJ調査によれば、訪日外国人客が増えたと応えた百貨店は4割に上る。
だから、都心部の店舗は潤う。一方、地方百貨店の低迷は続く。
これも百貨店の大きなトレンドだ。

最後に、2014年7月の直近の販売動向。日本百貨店協会の発表。

全国の既存店ベースでは前年同月比マイナス2.5%。
4カ月連続のマイナスながら減少幅は縮小した。

マイナスの大きな要因は前半の天候不順。夏のバーゲンセールに影響した。
今日の広島市の豪雨災害には心が痛むが、西日本は8月も台風や豪雨で影響を受けている。
全国的にみればまだまだ、百貨店にとって厳しい環境は続いている。

地方百貨店は惨憺たる状況から立ち直れない。
その分を大都市中心部の百貨店が吸い取っていく。
「強いものはますます強く、弱い者はますます弱く」。
これがが百貨店業態の盛衰だ。

そうしてアメリカではメイシーズが840店の断トツの大チェーンとなった。
あとは超高級百貨店のノードストローム、ニーマンマーカス。

ジュニアデパートのコールズも、ローカル百貨店のディラードも、最近は不調。

かの地でも「強いものはますます強く、弱い者はますます弱く」。

大所高所から見ると、こんなリアルな分析となる。

 

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