イオンの成長戦略は 「4シフトの深耕」+「商品・マーケティング一体化」
イオンは14日、2014~16年度までのグループ新中期経営計画を発表した。前中計で策定した「アジア」「都市」「シニア」「デジタル」の4シフトをさらに深化させるほか、新たに「商品本位の改革」を掲げて、コンセプトにとどまらない商品力に裏づけされたマーチャンダイジング(MD)を展開する。これらの施策により16年度に営業収益8兆円以上、営業利益2800億円以上、ROIC(投下資本利益率)6%以上の達成を目指す。
今回の成長戦略では、3カ年で1兆5000億円規模の投資を行う。そのうち4分の1に当たる約4000億円をアジアシフトに振り向ける。モール型ショッピングセンター(SC)をグループの成長をけん引するプラットフォームと位置づけ、海外のモール数を13年度の36店舗から16年度に70店舗以上に拡大。総店舗面積に占める海外の割合を40%まで高める。13年度の海外事業の営業収益は5000億円だが、これを16年度に2倍の1兆円まで増やす計画だ。
また、これまでアジアでは各国の発展段階に応じたMDを展開していたが、新中計ではアジア共通の「グローバルMD」に切り替え、規模の経済性を追求する。さらにロジスティクスの強化や表示の共通化に取り組むほか、ベテラン社員によるチームを組織して日本のノウハウをアジア各国に伝承する。
都市シフトでは、都市型小型スーパーマーケットの「まいばすけっと」や都市型小型ディスカウントストアの「アコレ」の出店スピードを上げる。イオンの首都圏における食品市場シェアは10%に達しており、まいばすけっとも13年度に黒字化を果たした。大都市圏でのさらなる基盤拡大を進めるため、現在450店舗のまいばすけっとを16年度に1000店まで増やす考えだ。
シニアシフトにおいては、昨年リニューアルしたイオン葛西店で形になった「G.G(グランド・ジェネレーション)モール」を水平展開する。併せて商品でもシニアシフトを具現化する。
デジタルシフトでは、「コト・モノ・ネット」をつなぐことでオムニチャネルを実現する。イオンは前中計期間中にグループ共通のEコマース・プラットフォーム「イオンスクエア」を開設。顧客のIDやポイントのほか、商品マスタも共通化し、製品情報に関するデータウェアハウスにも投資を行った。さらに、品ぞろえや価格の最適化プログラム、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)についてはパイロットテストを実施した。
今後3年間は、これらの施策をさらに深掘りする。「IT、Eコマース、オムニチャネル、ビッグデータのコンビネーション」(ジェリー・ブラック専務執行役商品戦略担当兼デジタルシフト推進責任者)によって、商品開発や品ぞろえ、顧客分析、店舗開発での活用を推進する。
新中計ではこれら4シフトに、新たに「商品本位の改革」を追加。商品とマーケティングの組織を一体化して、人口動態やライフスタイルの変化に対応した新しいコンセプトに基づく売場へと革新する。具体的には、生鮮品などの素材中心の売場構成から簡便食品やヘルシーフード・オーガニックフードなど新コンセプトによる食品売場を開発するほか、全面刷新中のプライベートブランド「トップバリュ」の販売を拡大する(イオン PB「トップバリュ」4ブランドに集約して刷新・商人舎magazine 2014年2月13日)。
商品本位の改革について岡田元也社長は、「コンセプトやレイアウト、あるいは分類、そういったものが変わっていくだけではなくて、それを裏づけする商品はこれですと出して」いくことだと説明。
「新しいコンセプトに基づくフォーマットを開発するに当たっては、商品も丸ごと提案できる能力を身につけることが必要だ」と語った。
イオンは同日、2014年2月期連結業績予想の修正を公表。営業収益は前回予想の6兆円から6兆4000億円に上方修正したものの、利益については下方修正を行った。営業利益は1700億円、経常利益は1710億円、当期純利益は400億円の予想とした。
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