2013年米国白物家電小売売上高順位で王者シアーズがロウズに抜かれ2位転落の顛末
米国の家電専門誌『TWICE』が2013年「大型白物家電売上高100企業ランキング」を発表。
編集長のスティーブ・スミスがシアーズ・ローバックのこの分野の低迷に関して、分析記事を書いている。
記事のタイトルは、「Sears’ Majaps Demise Is Counter To Majaps Growth」。
「白物家電市場の伸びに反比例するシアーズの白物家電の崩壊」。
白物家電は「メイジャー・アプライアンス」といったり、「the white-goods business」といわれたりするが、この分野は20世紀にはシアーズの独壇場だった。
シアーズは白物家電で、「ケンモア(Kenmore)」というプライベートブランドを持っている。
しかし、あまりにもアメリカ人の多くに支持されたために、ケンモアはまるでナショナルブランドのようなポジションを築いていた。
シアーズはケンモア以外にも、ハードラインの「ダイハード(Die Hard)」や「クラフツマン(Craftsman)」といったブランドを有する。
ケンモアは、100年近くの歴史をもつ老舗ブランドである。
食品では最古のスーパーマーケットA&Pのプライベートブランド・コーヒー「エイトオクロック・コーヒー」がケンモアのようなブランドである。
ナショナルブランドメーカーが全国レベルに成長する前に、チェーンストアが発達した。
だからチェーンストアはナショナルブランドメーカーを育てたり、それが間に合わない時には、自らプライベートブランドをつくって、顧客の要望に応えたりした。
ケンモアは一時期、全米白物家電市場の6割のシェアを持つほどだった。
アメリカの家庭を訪れると、冷蔵庫はどこもケンモアだった。
洗濯機も掃除機も、ケンモアだった。
有名なテレビ番組ルーシー・ショーでも、主人公のルーシーと友人のビビアンが、シアーズカタログを見ながら、新しいケンモアの商品を買おうか買うまいか悩んだりする。
そんな絶対の強みを持ったシアーズの家電販売は昨今、毎年シェアを落としている。
そして2013年、とうとう二番手に落ちてしまった。
第1位に躍り上ったのは、ホームセンター第2位のロウズ。
白物家電の前年比売上高比率は、11.3%の二桁増。
しかしシアーズの白物家電販売額は、49 億 6700 万ドルで、これは前年比マイナス1.2%。
そして第2位。
ロウズと同じホームセンター業態企業で、この分野の第1位のホーム・デポも家電の伸びは、前年比15.7%増。
さらに、ネブラスカ・ファーニチャー・マートは15%増と軒並み二桁アップを果たした。
白物家電販売トップ100小売業のうち、9割が前年よりも売上高を伸ばし、全体では9.1%増。
サブプライムローンの破綻以降、住宅需要と家電需要は下がり続けたが、それも底を打って、上昇機運。
だから大手ホームセンターのホーム・デポやロウズ、リージョナルチェーンや小規模インディペンデント企業まで好調を維持している。にもかかわらず、シアーズは落ち込む。
むしろ白物家電の王者だったシアーズのダウン分を、他が奪い取って、成長の糧にしている。
これがアメリカのメイジャー・アプライアンス分野のトレンドだ。
スティーブ・スミス編集長は「シアーズの経営ミス」が白物家電マーケットのリーダーシップを喪失させたと指摘する。
その理由はケンモアの製造メーカーを2009年に、ワールプール社中心から韓国のLGとサムスンに切り替えたことにある。これはやむにやまれず、製品の機能性を縮小して、粗利益率を上げる対策だった。
しかしケンモアの市場からの評価は、そのLGやサムスン自体のブランドよりも低くなってしまった。
さらに、家電売場自体も旧態依然として、イノベーションのかけらもない。そのうえ、2012年に、シアーズ・ホームタウンとアウトレットストアを売却した。だからマーケットシェアが急激にダウン。
もうひとつ、ゼネラルエレクトリックとウォルマートが組んで、ウォルマートスーパーセンターのレジの外に白物家電ショップを展開し始めた。
これも明らかに、弱りつつある王者シアーズの「ホワイト・ビジネス」をターゲットにしている。
アメリカの競争の本質を見せられる思いだ。
つまり、プロレスのバトルロイヤル型競争。
アンドレザ・ジャイアントのような抜群のレスラーでさえ、ちょっとつまずいてリングに倒れ込むと、寄ってたかってフォールし、リング外に押し出してしまう。
2013年に、シアーズの白物家電は、そうして第2位になってしまった。
この後は、ランクを下げ続ける以外にない。
非情な闘いは、これまで以上にシアーズに厳しく繰り広げられる。
〈結城義晴〉
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