JCペニー2016年度決算の減収微微微黒字と創業の「ゴールデンルール」
2016年度アメリカ小売業ランキング36位のJCペニーの2016年度決算が発表された。
結果は、減収微微微黒字。前年は赤字だったから、それから脱却して100万ドル(1ドル100円換算で1億円)の名目的な黒字を出しただけ。
日本ではGMSといわれる業態だが、アメリカでも完全に衰退している。なぜ、その決算を報告するかといえば、これはもう完全に「過去の栄光」。創業者のジェームズ・キャッシュ・ペニーさんへのオマージュでもある。
とはいっても、通年売上高は125億4700万ドル(1兆2547億円)。前年比マイナス0.6%だが1兆円を超えて、日本の三越伊勢丹ホールディングスと同規模(2016年3月期が1兆2872億円)。ペニーの既存店売上高は「変わらず」と大健闘。粗利益額は44億7600万ドルで前年比1.6%減だが、粗利益率は35.7%。
純利益は100万ドルでやっとかすかな黒字になった。ちなみに前年は5億1300万ドルの赤字だった。
第4四半期の売上高は39億6100万ドルで0.9%減、既存店売上高0.7%減、純利益は1億9200万ドルの黒字だった。つまり第4四半期に頑張ったということだ。
CEOのマービン・エリソンも、無邪気を装って喜ぶ。
「2010年以降で初めて黒字化できたことを嬉しく思います」。
第4四半期の目玉はホリデーシーズン。11月第4木曜日のサンクスギビングデーから12月25日のクリスマスまでの最大シーズン。この書き入れ時に、オンライン販売が頑張った。eコマースのアソートメントを拡大し、サイトの機能性を改善して、使いやすくし、物流も改革した。
エリソンCEOは「今後もデジタル・ビジネスを成長させます」と強気の発言。
ただし、現在約1000店のリアル店舗の小売業は、今後、数カ月で約140店を撤退し、配送センターも2カ所を閉鎖する。さらに6000人を早期希望退職させる。もちろん退職者には退職金が支払われ、再就職のサポートも行うし、締め切り前の応募者には退職後も年金プランを維持する。
このあたりの手厚さには、創業者の「ゴールデンルール」が生きている。
その「ジェームズ・キャッシュ・ペニーの物語」をちょっと披露しておこう。
「ジェームズは、牧師であり、農夫であった父から、大きな影響を受けて、育ちました。片手に聖書、片手に鍬を持った父は、17歳のジェームズに、こう教えました」
「神は、お前の数々の過失を許してくださるに違いない。しかも神がお求めになることは、お前が最低の条件を満たすことだけである」
「最低の条件とは、『ゴールデンルール』と呼ばれるものだ。聖書マタイ福音書7章12節に示された神との契約である」
「さらば、すべて、人にせられんと思うことは、人にもまた、そのごとくせよ」
この『ゴールデンルール』の意味は、
「自分が、そうしてもらいたいと思うことは、
すべて、同じように、お客様にしてあげなさい」
「自分が、そうありたいと思うことは、
すべて、同じように、店員にしてあげなさい」
「ジェームズ・キャッシュ・ペニーの最初の店には、店名の看板の代わりに、『ゴールデンルール』と大きく書かれていました。2号店、3号店にも、『ゴールデンルールの店』の一枚看板しか掲げられていませんでした」
「そしてこの『ゴールデンルール』を貫くペニーの店は、全米小売業史に残る奇跡的な成長を遂げたのです」
その結果、JCペニーは1970年段階で、全米第4位の、非食品GMSではシアーズに次ぐ第2位の大チェーンストアとなる。面白いことにその時点でペニーの年商42億ドル、1ドルは368円だったから換算すると1兆4857億円。日本円に為替換算すると、現在とほぼ同じだった。
当時はGMS業態も全盛だった。
しかし現在、このGMSはディスカウント・デパートメントストアであったことが判明している。そしてそのディスカウント・デパートメントストアは、衰退の極み。
業態の趨勢を、従業員に対する「ゴールデンルール」だけでは乗り越えることができない。JCペニーの2016年度決算がそのことを物語っている。
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