イオンnews|’19年2月期年商・経常利益過去最高を更新/純利益は3.6%減

イオン(株)(千葉市美浜区、岡田元也社長)の2019年2月期の連結業績は最高益を更新する増収増益だったが、期初に報告した予想値に対してはそれを下回る結果だった。

営業収益は8兆5182億1500万円で、前年同期比1.5%増。9期連続で過去最高実績を更新した。営業利益は19億円増益の2122億5600万円で0.9%増、経常利益は13億円増益の2151億1700万円で0.6%増だった。どちらも2年連続の過去最高益。しかし純利益は、営業利益、経常利益が想定を下回ったことに加えて、総合スーパー事業、スーパーマーケット事業のほか、サービス専門店事業においても事業の立て直しに取り組んだ過程で減損し、結果、8億円減少の236億3700万円で3.6%減だった。

営業収益対比営業利益率、同経常利益率はともに2.5%。


セグメント別業績は、総合スーパー事業、スーパーマーケット事業、サービス専門店事業が期初の想定を大きく下回った。集中豪雨や台風、地震などの災害や暖冬などの外部要因もあったが、年度後半の消費マインドの冷え込みへの適切な対処ができなかった。

CMS(総合スーパー)事業は、営業収益3兆806億3000万円で前期と変わらなかったが、営業利益115億1500万円で2.3%増だった。イオンリテールは、「強い食」と「強い専門」で構成する総合小売業を目指す。この3月に分社化の前段階としての機構改革を実施した。「強い専門」を確立する専門事業部とは「インナーカジュアル」「ホームコーディ」「キッズリバブリック」「ブランビューティーク」の4つの大型専門店に、スポージアムやトラベルといった小型の専門店および、新規専門店の集合体としての「スペシャリティーストア」を加えた5つで構成される。各専門事業部に紐づくエリアマネージャーを約500名、この春に配置して現場力を強化する。

ダイエーは過年度に実行した総合スーパー店舗の首都圏京阪神エリア以外の店舗の再編後、スーパーマーケット事業として再成長を図るべく、構造改革を進めてきた。通期で営業黒字化には至らなかったが、新規導入した発注システムの活用度向上による売価変更の削減や、トップバリュの拡販などの取り組みが浸透し、粗利益率が改善傾向にある。また、発注、会計、POSなどのシステム変更に伴って業務の効率化が進んだ。さらに自社プロセスセンターで加工した商品の取り扱いも拡大した。販促費の削減などローコスト運営が定着して経費削減も進んでいる。これら諸施策で第4四半期は黒字化することができた。

サービス・専門店事業は、営業収益7685億4800万円(1.2%増)、営業利益197億6200万円(9.9%減)。外部環境への対処の遅れに加えて、不振事業の立て直しの一環として、滞留在庫の処分を積極的に進めたことで粗利益率を大きく落とし、減益となった。しかし、第3四半期までにある程度の処理を進めたこともあり、第4四半期は24億円の増益に転じた。

一方で、総合金融事業、デベロッパー事業、国際事業は着実に増益を重ねている。

総合金融事業は、営業収益4365億6500万円(7.0%増)、営業利益708億3900万円(1.5%増)。香港、タイ、マレーシアの現地上場子会社で、中所得者を対象とした新規カードを発行した。また、2017年度にフィリピンで開始した中低所得者向けのオートローン事業をインドネシアでも開始するなど、各国で新規顧客の獲得を進めている。

デベロッパー事業は、営業収益3602億5900万円(7.3%増)、営業利益555億9000万円(7.9%増)。イオンモールにおいて、中国、アセアンでのドミナント出店の新店に伴うブランディングメリットの享受が進み、海外事業が黒字化している。

国際事業は、営業収益4375億6700万円(4.5%増)、営業利益34億1400万円(前期より31億8100円の増益)。イオンベトナムで生鮮を強化したことにより、食品部門の売上げが前期比で14%増加し、大幅に増収増益だった。中国では、香港と広東、アセアンではマレーシアとインドネシアが増益で、結果として中国エリア、アセアンエリアの両方において増収増益を果たした。

国内と海外を地域別に見ると、海外で生み出される営業利益の好成績が、前年同期の11.0%から16.8%へと拡大した。とくに中国エリアは前年度の15億円の赤字から29億円増益し、14億円の黒字に転換した。

SM(スーパーマーケット事業)は、営業収益3兆2350億円(0.2%減)、営業利益は251億9500万円(18%減)。中期経営方針にかかわるスーパーマーケットの諸改革は進捗した。昨年10月、全国6つの地域における企業統合の基本合意を発表した。

中国・四国エリアは、マックスバリュ西日本、マルナカ、山陽マルナカの3社の経営統合体制が3月1日からすでにスタートしている。

東海・中部エリアは、経営統合による投資余禄の向上と、両者が培ってきた地域密着経営のノウハウの融合により、両者の出店エリアの中間にある空白地帯への出店を強化する。

北海道エリアは、食品商品の開発から販売までを北海道内で一貫して行う体制づくりをスタートした。すでに2018年度にイオン北海道に開発担当を置いて事前取り組みをスタートしている。また、札幌市内で開発製品の製造を担うプロセスセンターと低温物流センターの新設を計画中だ。

九州エリアは当初の予定では今回のタイミングで正式契約を締結する予定だったが、統合後の企業価値を最大化するための検討を継続することになった。統合方針そのものに変更はなく、当該会社間で議論を深めた上で改めてスケジュールを提示する。

近畿エリアではダイエーと(株)光洋がそれぞれ、山陽マルナカとマックスバリュ西日本の近畿エリアの店舗を3月に引き受けるなど、統合に向けて取り組みを着々と進めている。

ヘルス&ウエルネス事業は、営業収益7939億円6200万円(11.7%増)、営業利益262億6900万円(0.9%増)。ウエルシアホールディングスとその子会社は、ドラッグ&調剤、カウンセリング、深夜営業、介護の4つの柱「ウエルシアモデル」を積極的に推進した。

2020年2月期の投資計画は、前年度並みの年間5000億円を計画している。その内容は、2017年12月に発表した中期方針に基づきeコマース、IT、物流などインフラ投資への構成を高めた。IT投資は消費増税への対応など必須の取り組みに加えて、地域のスーパーマーケット統合のためのシステム投資、業務統一化への投資など進めていく。地域別では、成長市場の海外エリアの投資を増やす計画だ。

2020年は引き続き人件費や水道光熱費、建設コストの上昇は避けられず、加えて10月の消費税増税と小売業を取り巻く環境は一層厳しくなることが想定される。不振事業の立て直しや整理を引き続き推し進めて、まず目標値を着実に達成することを目指す。

また、中期方針に掲げる諸改革の実行スピードを加速させるために、3月1日(金)から新たに3名の代表執行役副社長を配置した。諸改革の早期、かつ確実な実現に向けて取り組む。

2020年2月期の連結業績予想は、営業収益が8兆6000億円(1.0%増)、営業利益が前期差117億円増の2300億円(8.4%増)、経常利益は48億円増の2200億円(2.3%増)、純利益は13億円増の250億円(5.8%増)を予定している。

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