三越伊勢丹HD2013年度決算、売上高・営業利益は好調だがROA3%
今週は3月期決算分析が続く。
日本百貨店の王者・三越伊勢丹ホールディングス。
何しろ、1673年に、三井高利が創業した越後屋を起源とする三越と、
1886年、初代・小菅丹治が起こした伊勢屋丹治呉服店を発端とする伊勢丹が、
2008年4月に経営統合したホールディングカンパニ―。
その決算動向は日本の百貨店全体を象徴する。
2014年3月期連結決算は、売上高1兆3215億円で、
前年同期に比べて6.9%増。
「リモデルと消費増税前需要により、851億円の増収」で好調。
売上総利益、つまり粗利益は370億円で、粗利益率28.0%。
これは百貨店としては最低30%を超えたい。
一方、販売管理費は3353億円で、25.4%。
だから営業利益は346億4600万円で30.1%増。
4期連続の増益で、最高益を大幅に更新。
前期営業利益を80億円も上回った。
しかし営業利益率は、2.6%。
売上総利益引く販売管理費が営業利益だから。
ただし営業利益率は、百貨店の王者としては、
いずれ5%を超えるレベルまで持っていきたい。
営業利益に営業外の損益を足し算引き算して経常利益を求めるが、
その経常利益は384億4000万円で、12.3%増。
売上高対比の経常利益率は2.9%。
通常、営業利益よりも経常利益がちょっと上回る方が健全といわれるが、
「負ののれん償却」132億円がなくなったものの、
持分法投資損益の改善により、増益。
当期純利益だけは211億6600万円で16.3%減。
世間では好調といわれる三越伊勢丹ホールディングスの決算、
問題はこの後。
総資産が1兆2847億円で、年間売上高と拮抗している。
シンプルに見ると、約1兆3000億円の元手で、
約1兆3000億円の売上げを稼いだ会社ということになる。
それを「総資本の回転」と称するが、三越伊勢丹は1.03回転。
だから総資本経常利益率、ROAは3.0%。
すべての百貨店の経営の特徴は、総資本回転率が低いこと。
だから経常利益率はもっともっと高くある必要がある。
昨日のスーパーマーケットのヤオコーの10%と並ぶためには、
経常利益が10%なければならない。
そして三越伊勢丹ホールディングスには、
それが可能だと私は見ている。
もっともっと利益にストイックになること。
そのストイックさを10年も続けて企業体質を変えていけば、
ROA10%にはもっていける。
もっとも総資本経常利益率だけを上げようとすれば、
意外に簡単だ。
不採算の地方百貨店や郊外百貨店を切り離して、
採算のとれる強い店だけを残す。
そしてインターネット販売を強化する。
なくてはならない三越ブランドと伊勢丹ブランドを二つの命として、
世界的にアウトスタンディングな日本百貨店を創設する。
売上高至上主義を捨て、規模の論理を排除する。
私はそれが百貨店の百貨店としてのサバイバル論理だと思っている。
しかし来期計画は、売上高1兆3000億円で、
営業利益350億円、経常利益320億円、当期利益200億円。
大胆な計画ではないことは確かだ。
前期も「百貨店のあるべき姿」を追求したし、
「ジャパ ンセンスィズ(JAPAN SENSES)」や「オンリー・エムアイ」など、
独自の高付加価値商品開発を行って、それなりの効果を生み出したが、
三越伊勢丹にはやがて抜本的な「蛻変」のときがやってくるに違いない。
〈結城義晴〉