ヤマダ電機2013年度決算年商2桁増でも収益性・資本生産性は低調

小売業第3位ヤマダ電機の2014年3月期決算は、
売上高1兆8939億7100万円で、前年比11.3%の伸び。

売上高は前年がマイナス7.3%だったから、急回復。

営業利益は342億6500万円で、1.0%プラス、
経常利益は501億8700万円で、こちらは4.8%の増加。

前年はそれぞれマイナス61.9%、マイナス53.1%だったから、
一昨年と比べると、利益率も低迷中。

その証拠に、営業利益率は1.8%と低調だし、経常利益率も2.6%。

総資産は1兆1962億8800万円だから、
このところ問題にしている総資本回転は、1.58回転で、
総資本経常利益率は、同社発表では4.3%。
これは業績悪化した昨年の4.6%をさらに下回った。

つまりは何とか売上げを二桁増に持ってきたが、
収益性は低調で、資本生産性はもっと下がった。

これがヤマダ電機の2014年3月期決算の偽らざるところ。

昨年夏は暑かった。電気料金も値上げされた。
さらに今年に入ると、消費増税前の駆け込み需要が起こった。
Windows XPから買い替え需要もあった。

それで売上げは上がったが、あるべき経営数値からは、ほど遠い。

「業界1位から滑り落ちると、二度と1位に返り咲くことはない」。
家電量販店業界の「盛者必衰のジンクス」。

1990年まで家電販売額第一位は、ダイエーだった。
当時の中内功社長自ら「安売り王」として松下電器と真っ向対決。
それに対し松下幸之助率いる松下は、ダイエーとの取引停止を断行。
1964年のことだった。

ヤマダ電機はそのダイエーがトップを走っていた1981年、安売りに手を染める。
メーカーの系列小売店が6割を占めた時代だ。

だからこそダイエーのインパクトは大きかった。
しかしダイエー・松下構想は1994年末に終わる。

不思議なことに闘争が終るとダイエーがしぼんだ。
そして二度とトップの地位に返り咲くことがなかった。

そして各地に起こった家電ディスカウンターが続々と名乗りを上げてきた。

先陣を切ったのが九州から駆け上ってきたベスト電器。
そのベスト電器を抜き去って、初めて年商5000億円を達成したのがコジマ。
1997年のことだ。

ベスト電器もトップに返り咲くことなく、現在、ヤマダ電機の傘下にある。

この年は総合スーパー全体の売上げピーク。
外食産業も全体では売上げ最高潮だった。

しかしYKKと呼ばれた北関東の御三家。
群馬のヤマダ電機、栃木のコジマ、
茨城のカトーデンキ販売(現ケーズホールディングス)。

コジマはやや小型の店舗で「世界一の安売り王」を標榜。
対して、ヤマダ電機は郊外大型店で最後の王者の地位に就いた。
21世紀に入ってからのことだ。

コジマも創業者の小島勝平氏が亡くなり、二度と1位に返り咲くことなくビックカメラの傘下。

そんな経緯で王者に着いたヤマダ電機。
私が使うクリティカル・マスの仮説を実証するように17%のマーケットシェアを超えた。

このあと「二度と返り咲くことなし」という現象は起こりにくい。

今期決算時点の店舗数は985店舗。
ヤマダ電機単体直営664店舗、ベスト電器177店舗、その他連結子会社144店舗。

これらにボランタリーチェーンのコスモス・ベリーズ7983店の組織が加わって、
ヤマダ電機のグループは新しい世界を築き始めた。
レギュラーチェーンとボランタリーチェーンの協業だ。
これはダイエーが猛威を振るった1990年までのメーカー系列店とダイエーとが、
今蘇って協業するような形。

これをセゾングループ創業者の故堤清二氏は「近代化を包含した現代化」と予言した。
(この件に関しては月刊『商人舎』2013年12月号を参照願いたい)

さらにハウス関連事業にも手を付け始めた。

だからこそ、ヤマダ電機の決算は、これまでの家電業界の売上げ至上主義ではいけない。
新しいチェーン組織を模索し、切り拓くためには、適正な利益体質と資本の生産性が必須である。

2015年3月期見込みは、年商1兆8130億円(4.3%減)、
営業利益421億円(22.9%増)、経常利益520億円(3.6%増)。

あとを追ってくるものが見当たらない現在だが、これはちと、情けない。

〈結城義晴〉

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