帝国DBnews|ディスカウント店/市場は初の4兆円へ・店舗は15年で3倍に
リーマン・ショック直後で景況感が大きく冷え込んだ2008年度(1.7兆円)の2倍超に拡大し、前年度の2021年度(3.8兆円)を5.2%上回って過去最高を更新する見通しとなった。また、消費税が10%へ引き上げられた2019年度以降、コロナ禍の巣ごもり、物価高による低価格志向を背景に市場は4年間で約1兆円増加した。2兆円から3兆円に到達した2012年度~2018年度の7年間に比べ、拡大ペースは加速している。
積極的な店舗展開も進み、ディスカウント大手10社の店舗数は2022年3月時点で2939店に上った。コロナ前の2019年度からは291店、リーマン・ショック時の2008年度からは1764店増加した。店舗新設の動きは2022年度に入っても続いており、10月時点における各社の店舗数や予定数を含めると、2023年3月までに過去最多となる3000店を超える見通しとなる。大型の郊外店舗のほか、特定の食品分野に特化した都市部の中小型店舗の出店なども旺盛で、年間平均で約100店舗の増加が続いている。
ディスカウント店は、特に2021年度において、コロナ禍で感染予防対策商品のほか、巣ごもり需要を背景に食品のまとめ買いなどが好調だった前年度から、市場は拡大しつつも伸び率は下回る水準だった。しかし、2022年度は夏以降に急増した食品や日用品の値上げラッシュの影響で「物価高」が表面化した。内閣府によれば、向こう6カ月間の消費マインドを示す消費者態度指数は、11月は物価高が響き3カ月連続で悪化した。食品スーパー各社も、取り扱う食品の値上げを背景に価格転嫁を進めるものの、「消費者の節約・低価格志向が続いている」といった声も企業からあがるなど、売り上げは総じて伸び悩む状況が続いている。景気の先行き不安や所得の伸び悩みも重なって、消費者の生活防衛意識が急速に強まっている。
こうした「低価格志向」を背景に、ナショナルブランド(NB)品を低価格で販売するディスカウント店のニーズ・利用者層は足元で広がっており、ディスカウント店各社の売り上げ増加につながった。また、各社ともNB品の価格引き下げや、NB品よりもさらに安価なプライベートブランド(PB)品を各商品カテゴリーで展開するなど需要の取り込みに注力したことで、低価格志向の消費者をはじめ幅広い顧客層から強い支持を受けていることも、業績の押し上げにつながった。
700品目に上る食品や日用品の値上げが今年10月にピークを迎え、家計への負担がより重くなっている。コロナ禍の「巣ごもり」特需は一服した半面、「安くなければ買わない」といった節約志向の高まりを追い風に、「安売り」を前面に押し出すディスカウント店の存在感が増している。
帝国データバンクが調査した来年値上げ予定の食品は11月末時点で4000品目を超えた。特に飲料や酒類、ティッシュやトイレットペーパーなど生活用品が来年2月にかけて再び一斉値上げ予定で、来年も消費者生活において「インフレ(物価高)」の波を一層実感せざるを得ない局面が迫る。こうしたなか、低価格を武器とするディスカウント店はより需要が高まるとみられ、2022年度以降も引き続き市場の成長が期待できそうだ。