【8月商業動態統計】小売業販売額▲1.1%、家電専門店▲11.1%の二桁減

経済産業省から8月の商業動態統計速報が発表された。
8月の「卸売業」と「小売業」を合わせた商業販売額は35兆5760億円となり、前年同月比▲3.1%。季節調整済みではプラス1.5%という結果だった。

*季節調整とは、経済統計の原計数から季節の変動による業績のばらつきを取り除いた指数。月ごとに変化する休日数、気温による需要の変動などの季節の要因を取り除いて、業績を正確に評価するために調整される数値である。業界ごとの協会の統計にはこの調整がない。実数値である。経済産業省統計の意義はここにあるといってよい。

1.卸売業の販売額動向
販売額は、24兆2720億円で▲3.6%となり、季節調整済みはプラス0.8%だった。

業種別に見るとプラスとなったのは、食料・飲料3.4%と医薬品・化粧品1.9%。
他は、衣服・身の回り品▲15.8%、繊維品▲10.5%、鉱物・金属材料▲8.2%、
農畜産物・水産物▲7.3%、家具・建具・じゅう器▲6.3%、各種商品▲5.3%、
その他▲5.3%、機械器具▲4.2%、化学製品▲3.4%、建築材料▲0.1%、
とマイナスが並んだ。

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(表はすべて経済産業省大臣官房調査統計グループ編商業動態統計月報による)

大規模卸売店
販売額は7兆9270億円となり、昨年同月比▲6.7%。

商品別に見るとプラスは、一般機械器具10.3%と紙・紙製品1.3%。
一方マイナスは、、鉱物▲33.1%、石油・石炭▲25.2%、繊維品▲24.8%、
その他の輸送用機械器具▲21.9%、非鉄金属▲12.3%とすべて二桁減である。

2.小売業の販売額動向
販売額は11兆3040億円で▲2.1%。季節調整済みは▲1.1%。

その中でも業種別でプラスとなったのは、医薬品・化粧品2.5%と自動車1.8%。
マイナスは、機械器具▲9.4%、燃料▲7.7%、各種商品(百貨店など)▲6.4%、
その他▲3.2%、織物・衣服・身の回り品▲2.2%、無店舗▲1.0%、
飲食料品▲0.2%となった。

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小売業の業態別結果を見ると、百貨店・スーパーの販売額の合計は1兆5540億円。
前年同月比は▲3.2%(既存店では▲3.6%)。また季節調整済みも0.6%のマイナスとなった。

【百貨店】
百貨店は4529億円で▲6.3%(既存店は▲6.0%)。季節調整済みは▲2.1%の低下。

主力の衣料品は、全体で▲10.3%(既存店▲10.0%)となり二桁減で不調が続く。
詳細を見ると、婦人服・子供服▲11.6%、紳士服▲10.1%、身の回り品▲8.3%とすべてマイナス。

飲食料品は▲3.8%(既存店▲3.6%)。

その他は▲3.0%(既存店▲2.8%)。
詳細は家庭用品▲8.7%、食堂・喫茶▲8.6%、家具▲3.2%、その他▲1.4%とマイナスが並ぶ。
しかし、そんな中、家庭用電気機械器具は11.2%と二けた増となり好調だった。

日本百貨店協会から発表された8月の百貨店売上高概況でも、他のカテゴリーがマイナス計上で不調の中、家電だけはプラス28.3%と大幅に売上げを伸ばしたと報告されている。猛暑により家庭用のクーラーが売れ続け、生産が追いつかないくらいの勢いだった。

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【スーパー】
ここでいう「スーパー」は総合スーパーと大手食品スーパーマーケットである。
販売額は1兆1011億円で▲1.9%(既存店も▲2.6%)。しかし季節調整済みでは0.4%プラスとなった。

主力商品である飲食料品は▲0.6%(既存店▲1.5%)。

衣料品は、全体では▲8.0%(既存店▲7.2%)。
詳細を見ても紳士服・洋品▲8.6%、婦人服・子供服▲8.0%、身の回り品▲4.6%、その他▲15.0%となり、どの項目も落ち込みが激しい。

また、その他は▲4.4%(既存店▲4.6%)となった。
家具▲20.0%、家庭用電気機械器具▲10.7%、家庭用品▲10.4%、その他の商品▲2.4%、
食堂・喫茶は唯一プラスで3.7%だった。

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【コンビニエンスストア】
商品販売額及びサービス売上高の合計は1兆0295億円で、プラス3.4%。

内訳は商品販売額が9762億円でプラス3.3%。
商品別に見ると、プラスとなったのは、ファストフード及び日配食品2.4%、加工食品4.5%、
非食品は3.4%と、全般的に好調に推移している。サービスも4.3%とプラスとなった。

日本フランチャイズチェーン協会から発表された「8月のコビニエンスストアの統計調査月報」によると、既存店は前年同期比プラス0.6%で3カ月連続のプラスとなった。全店の前年同月比は3.0%で、商業動態調査と符合する。台風などの悪天候の影響を受け、他の業態が苦戦している中、コビニエンスストアだけはプラスを維持している。客足に多少の影響はあったもの、夏物商材などの売上げを伸ばして、プラスとなっている。

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【家電大型専門店】
全店販売額は、3383億円で▲11.1%。

内訳を見ると、カメラ類▲21.3%、情報家電▲13.8%、その他▲12.2%、生活家電▲11.1%、
AV家電▲6.4%、通信家電▲2.8%とすべてマイナスだった。

百貨店では家電が売上げを伸ばしている。それに比べ、「大型専門店」では生活家電も二桁減となっている。専門店なので品揃えも多く、どの商品の売れ行きが良かったのか悪かったのかはわからないが、クーラーは売れたのだろうか。ちょっと気になる結果となった。

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【ドラッグストア】
全店販売額は4839億円で、プラス3.5%。

内訳を見ると、食品7.9%、その他5.2%、家庭用品・日用消耗品・ ペット用品3.8%、
トイレタリー3.1%、OTC調剤2.1%、ビューティケア(化粧品・小物)1.2%、調剤医薬品1.1%
となりプラスが並ぶ。
マイナスだったのは、ヘルスケア用品(衛生用品)・介護・ベビー▲0.5%と健康食品▲0.5%だった。

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【ホームセンター】
販売額は、全店で2782億円だが、前年同月比▲2.8%。

内訳を見ると、プラスは、唯一DIY用具・素材で0.2%。
オフィス・カルチャーは±0.0%の横ばい。
他はマイナスとなり、インテリア▲7.4%、電気▲6.1%、カー用品・アウトドア▲4.3%、
園芸・エクステリア▲3.9%、その他▲3.2%、家庭用品・日用品▲2.9%、
ペット・ペット用品▲1.1%となった。

前月(7月)は、プラス3.2%と好調で、電気以外はすべてプラスを維持していたが、今月は、一転して不調に終わった。

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2016年8月の結果をまとめると、
卸売業は▲3.1%、その中の大規模卸売店は▲6.7%。卸売業は大規模のほうが悪い。
小売業は▲2.1%となり、両者を合わせた商業合計は▲3.1%。

小売業の業態別の前年同月比をプラスの高い順に並べてみると、
ドラッグストア 3.5%
コンビニエンスストア 3.4%
スーパー ▲1.9%
ホームセンター ▲2.8%
百貨店 ▲6.3%
家電大型専門店 ▲11.1%という結果。

8月もドラッグストアとコンビニエンスストアがプラスを維持し、好調だった。反対に、家電大型専門店は二桁減。中国観光客の爆買い減少の影響を受けやすい百貨店と家電大型専門店が苦戦している。ドラッグストアがプラスとなっているのは、まだ医薬品・化粧品をはじめ消耗的なインバウンド消費が健在ということだ。しかし4月は9.2%、5月3.7%、6月4.7%、7月5.8%、そして8月は3.5%。少し伸び率が低下しているのが気にかかる。

最後に日本政府観光局(JNTO)から発表された8月の訪日外客数の統計結果を見てみよう。
8月は、前年同月比12.8%増の204万9000人で7月に続いて200万人を超えた。これは8月としては過去最高だった。また累計では、昨年より2カ月も前倒しで1500万人を超え、約1606万人となった。悪天候の影響も少なかったようで、日本にやってくる外国人は依然、増え続けている。

9月は、韓国では秋夕(旧盆休暇)や中華圏の中秋節があり、東アジアや東南アジアでも祝日に伴う連休が多く、旅をするには良い日並びとなっている。秋を迎えて旅行シーズンたけなわとなる9月は、クルーズ船の増加や航空路線の新規就航始まっている。バニラエア(JW)が年9月14日に、台北(桃園)経由での成田~ベトナム・ホーチミン線の運航を始めた。また全日空(NH)は10月30日から、羽田~マレーシア・クアラルンプール線を開設する。今まで成田からの運航はあったが、羽田からも就航が始まる。アジアはますます近くなり、日本を訪れる外国人の消費にも期待がかかる。

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