訪日外国人旅行者数191万8000人と増加も消費額は減少

日本政府観光局(JNTO)は10月19日、9月の訪日外国人客数(推計値)が前年同月比19.0%増の191万8000人になったと発表した。これまでの2015年9月の161万2000人を上回り、9月としては過去最高を更新した。

9月は、韓国の秋夕(旧盆休暇)、中華圏の中秋節やマレーシアの学校休暇など、祝日に伴う連休や休暇があったことと、航空路線の新規就航や増便、そして継続的な訪日旅行プロモーションの効果が堅調な増加につながった。

大幅な寄港増が見込まれていたクルーズ客は、台風の影響によるキャンセルが重なったが、中国を中心に70隻以上の寄港があった。これが増加を下支えした。

国別では、韓国が42.8%増と4月14日の熊本地震の発生以降、初めて前年同月比40%を超える高い伸びを記録した。ほかに、インドネシア、タイ、フィリピンの伸び率が30%を超えるなど、東南アジアからの訪日客数も好調に推移している。

とくに、中国からの訪日客数は、2016年1月からの累計で500万7000人に達している。これは2015年の年間数499万人を3カ月早く超えたことになる。

 

一方、観光庁は10月19日、7~9月の訪日外国人旅行者数は626万人で、前年同期の535万人に対し17.1%増加。ただし消費額は9717億円で、前年同期比2.9%のマイナスだったと発表した。
旅行消費額が前年同期比で減少したのは2011年10月~12月期以来、19四半期ぶりのこと。

■訪日外国人旅行消費額と訪日外国人旅行者数の推移
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訪日外国人1人当たりの旅行支出額は15万5133円で、前年同期18万7166円に比べ17.1%減少した。

なお、日本円ベースでの1人当たり旅行支出の減少には、為替レートの円高方向への動きが大きく影響していると分析している。

■訪日外国人1人当たり旅行支出の推移
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■国籍・地域別にみる訪日外国人1人当たり旅行支出と旅行消費額
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旅行支出が大きかったのは、中国22万7821円(前年同期比▲18.9%)、ロシア22万2000円(同17.5%増)、イタリアが21万5000円(同▲8.2%)。

 

国籍・地域別の消費額を見ると、突出して中国人旅行者の消費額が4398億円、構成比45.3%と高く、インバウンド消費に貢献していることがわかる。

■7~9月の国籍・地域別の訪日外国人旅行消費額と構成比

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旅行消費額の費目別構成比を見ると、買物代がもっとも多く34.5%、次いで宿泊料金28.7%、飲食費21.1%となっている。前年同期に比べ宿泊料金や飲食費、交通費の構成比が拡大し、買物代の構成比が縮小した。

■費目別にみる訪日外国人旅行消費額
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訪日外国人旅行者のこうした消費行動の変化の背景にあるのが、「モノ消費」から「コト消費」へという意識変化だ。つまり買物だけではなく、おいしい日本食を味わう。ワンランクグレードの高い旅館やホテルでおもてなしを受ける。あるいは地方の風景を散策して楽しむといった体験を重視する旅行者が増えている。

「コト消費」とは、「所有のためではなく、趣味や行楽、演芸の鑑賞などで得られる特別な時間や体験、サービスや人間関係に重きを置いて支出することで、それが消費・購買の判断基準となっている」(コトバンク)消費をさす。

「爆買い」は収束したものの、高額品から日用品へ、モノを所有する価値からコトを経験する価値へ。軸足が移りつつあることをしっかりと認識したうえで施策を打っていくことが、小売サービス業にとっても、インバウンド需要を取り込む際には重要になる。もちろん決済対応、接客における多言語対応など、基本的な買物支援の態勢を強化することも不可欠となる。

>>>日本政府観光局(JNTO)の資料はこちらから

>>>観光庁の資料はこちらから

 

検索ワード : 訪日外国人旅行者 インバウンド コト消費 モノ消費 爆買い

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