【11月百貨店】既存店売上高▲2.4%、日本列島すべて減少の中で高島屋だけ1.1%増の不思議

日本百貨店協会から11月の百貨店売上高概況が発表された。調査対象百貨店は81社234店舗で、10月と同数。

売上高は5257億円、前年同月比は既存店ベースで▲2.4%となった。11月は休日1日減の影響もあって、9カ月連続で前年を下回った。内訳としては、売上高の97.28%を占める国内市場が2.3%のマイナスだが、インバウンド(同シェア2.8%)が▲7.1%と大幅ダウンで、8カ月連続で前年を下回った。

それでも4月以来、7カ月ぶりにマイナス幅は一桁へと縮小した。そして客数は12.2%増で、46カ月連続のプラスである。これが救いといえば救いだろうか。

主要10都市は全体で対前年同月比▲2.2%である。
先月に続いて、すべての都市でマイナス。
大阪▲3.5%、東京▲1.4%、京都▲2.2%、仙台▲4.4%、神戸▲4.6%、福岡▲1.6%、
横浜▲2.5%、名古屋▲2.5%、広島▲1.9%、札幌▲0.7%。

10月末からは全国でイルミネーションも始まり、七五三のイベントや歳暮シーズン突入という好材料もあったが、全体として百貨店での購買行動には結びつかなかった。ただ、マイナス幅は名古屋、広島、札幌以外は縮小している。

10都市以外の地域は、全体では▲2.8%。こちらもまた全地域でマイナスとなった。
北海道▲3.7%、中部▲3.4%、九州▲0.4%、関東▲2.7%、中国▲3.3%、東北▲1.2%、
近畿▲4.5%、四国▲6.5%。

主要5品目の11月の動向は以下のとおり。

主力の衣料品は、1684億8969万円、▲2.4%で13カ月連続。
婦人服▲2.0%、紳士服▲2.8%となり、ほかのカテゴリーもすべて不調に終わった。

身のまわり品は、620億6796万円、▲4.8%となり、3カ月連続減少。

雑貨は、851億3889万円、▲2.7%で4カ月連続。しかし化粧品は5.1%増で、20カ月連続で好調を維持している。美術・宝飾・貴金属は▲9.7%で9カ月連続。インバウンド消費の購買客増にもかかわらず売上減という事実からは、インバウンドの消費動向が、繰り返し使う消耗的な日常品へと大きくシフトしていることがわかる。

家庭用品は、231億1010万円、▲6.6%で11カ月連続。家電は10.9%プラス、家具は▲10.8%と、カテゴリー内での差が顕著。

非食品では化粧品と家電が伸びた。インバウンドの傾向が、このあたりにシフトしている。

食料品は、1583億7341万円で▲0.6%、9カ月連続マイナス。生鮮食品、菓子、惣菜すべてのカテゴリーがマイナスとなった。

結果として、主要5カテゴリーすべてが、9月、10月に続き、4カ月連続でマイナスに終わった。

大手百貨店グループの11月の業績を個別に見てみよう。(%はすべて対前年同月比)

㈱三越伊勢丹ホールディングス。
国内百貨店事業(三越伊勢丹計+国内グループ百貨店計)▲2.0%。
三越伊勢丹合計は▲4.4%。
三越伊勢丹単体では、主力の衣料品が▲1.0%。詳細を見ると子供服は100%。呉服が4.8%プラス。家庭用品は▲7.8%。食料品は▲1.0%。サービスは▲8.9%で、前月に次ぐプラスとはならなかった。

J.フロント リテイリング㈱  ▲4.5%。
気温が低く推移したことで婦人・紳士コートやマフラー、手袋など冬物衣料雑貨が好調。ラグジュアリーブランドや化粧品も売上げを伸ばした。一方で、心斎橋店本館建替えという面積減による影響もみられた。

㈱髙島屋および国内百貨店子会社17店舗 1.1%プラス。
雑貨が4.9%プラス、食料品は2.8%プラス。なかでも化粧品は15.6%と、先月に続いて二桁増となった。家庭用品は▲3.6%。

気温の低下に伴う防寒アイテムなどが好調だったため、4カ月ぶりに1.1%だが、前年実績を上回った。なお、免税販売額はプラス9.2%と好調を持続している。

エイチ・ツー・オー リテイリング㈱  百貨店は▲1.5%。
部門別詳細データは、全店(阪急阪神百貨店・阪急オアシスのスーパーマーケット事業・イズミヤ事業)の数字だが、その他以外はすべてマイナスとなった。客数は▲1.1%で、前月の増加を継続することはできなかった。

ここに掲載した大手百貨店は、高島屋以外、昨年同月比マイナスという結果だった。

いま、百貨店は高島屋をマークしておかねばならない。

11月の結果をまとめると、地域別では2カ月連続で日本列島すべてマイナス。
主要5品目(衣料品・身のまわり品・雑貨・家庭用品・食料品)もすべて4カ月連続でマイナス。
昨年同月は高温の影響で伸び悩んだ衣料品は気温低下に伴って防寒アイテムの動きが活発で、2.4%減と回復の兆しは見られるが、前年を捉えることはできていない。

食料品はギフト客の買い回り効果もあって、休日1日減のなか、0.6%減と健闘した。化粧品は2.1%増で20カ月連続で前年同月比を上回って、堅調。

協会が挙げているマイナス要因は休日1日減による影響だけで、ほかにさしたる要因もない。そうなると、いよいよ百貨店業界の構造的な深刻度が判明してくる。

だからこそ、唯一、ダウンを食い止めている高島屋が注目される。

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