米国ダラーストア3位ダラーツリーが2位ファミリーダラー買収で複占状態へ
米国ダラーストア業界第2位のファミリーダラーが、第3位のダラーツリーに買収される。
いや、3位のダラーツリーが2位のファミリーダラーを傘下に収めると言い換えたほうがいいか。
ニューヨーク・タイムズまでこのニュースを報じて、かなりのショックが走っている。
ダラーツリーがファミリーダラーの株式に対して1株当たり59ドル60セントの現金を支払う。
さらにダラーツリーの株式を14ドル90セント相当分提供する。
合計で74ドル50セントを支払うことになる。
ファミリーダラーの負債を引き受けると、買収総額は約92億ドル(9200億円)の高額となる。
ダラーツリーの年商は78億ドルで、米国内48州とカナダで、現時点で5030店を展開。
一方、ファミリーダラーは年商108億ドルで46州に、約8200店。
合計すると、1万3230店で、年商186億ドル。1兆8600億円の巨大チェーンとなる。
対するトップ企業のダラーゼネラルは、1万1132店、175億ドル。
つまり新生ファミリーダラーツリー(?)は、単純計算ならばダラーゼネラルを抜いて、トップに躍り出てしまう。
もちろん大量に店舗閉鎖など断行されるだろうから、そうはならないだろうけれど、拮抗する2大チェーンの時代となる。
これは商人舎が主張する「寡占から三占へ、そして複占へ」の軌道そのものだ。
アメリカではまず、GMSと称される非食品総合ストアが三占から複占に至った。
シアーズ・ローバックとJCペニーの2社になった。
オフィスサプライ業界も第3位オフィスマックスが第2位のオフィスデポの傘下に入って、トップのステープルズとの複占状態。
そしてGMSやオフィスサプライストアと比べると好調だったダラーストアまで複占となる。
その一方で、99セントオンリーストアは年商14億8600万ドルで343店舗の生鮮食品強化型。
さらに日本のDAISOもこの業態のなかでは、新しいフォーマットで登場している。
マーケットリーダーのダラーゼネラル、マーケットチェレンジャーのダラーツリー。
そしてマーケットフォロワーのファミリーダラーにニッチャーの99セントオンリーストア。
見事なまでの四者四様。
そしてマーケットフォロワーが脱落した。
ダラーストア業界も「業態」の枠組みの中で、それが分化したフォーマットごとの戦略が吟味されねばならない。つまり業態とフォーマットとの二階層分析で判断しなければならない。
実際に同じダラーストア業態の合併2社でも、ダラーツリーとファミリーダラーは異なるフォーマットを展開している。
ダラーツリーの1店舗当たりの平均売上高は約155万ドルで、完全なる1ドルストアを志向する。
ファミリーダラーは平均売上高が127万ドルで、こちらは10ドル以下のいわばディスカウントストア。
業績は明暗くっきりだった。
既存店ベースではダラーツリーは20四半期以上も連続増加を示し、ファミリーダラーは3四半期連続減少。
従って合算するとダラーゼネラルに並ぶと言っても、マイナスのファミリーダラーを抱え込んだダラーツリーに負担が来ないわけはない。リストラ効果とシナジー効果で、3年間に3億ドルの経費削減効果が出ると予測されているが、それは予断を許さない。
ただし、ダラーツリーとファミリーダラーの店舗バナーは、それぞれがそのまま続行する。
これはシアーズとKマートの統合と同じだ。
トップマネジメントの人事もそのままで、ダラーツリーCEOボブ・サッサーがCEO、ファミリーダラーCEOのハワード・レビンがその下位に位置づけられるようだ。
米国スーパーマーケット業界も第1位のクローガーは安泰だが、第2位のセーフウェイがサーベラスに買収され、アルバートソンと統合される。
いずれの業態もレース型競争組は寡占から三占、そして複占へと状況が収斂している。
これがアメリカの競争そのものである。
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