ユニクロ・ファーストリテイリング増収減益決算と情報製造小売業ビジョン
ファーストリテイリングが13日に発表した2016年8月期決算は、売上高1兆7864億7300万円(前年同期比6.2%増)、営業利益1272億9200万円(▲22.6%)、税引前利益902億3700万円(▲50.1%)、当期利益480億5200万円(▲56.3%)となった。
国内ユニクロ事業の売上高は7998億円(2.5%増)、営業利益は1024億円(▲12.6%)と増収減益となった。
最高益を更新した前期からは一転し、国内ユニクロ事業は2年ぶりの減益。主な要因は、14~15年にかけて2度実施した実質5~10%の値上げ。さらに上半期(15年9月~16年2月)に暖冬の影響で売上げが振るわなかったことや、円高で為替差損が膨らんだことなども響いた。結果、国内のユニクロは客数が4.6%減少した。ただ、価格改定により値引率が縮小したことや、比較的単価の高いボトムスの販売が堅調だったため、客単価は5.8%上昇した。
下期はジョガーパンツ、スカンツ、ウィメンズのブラウスといったトレンドの新商品や、エアリズム素材やドライ素材を使ったスポーツキャンペーン商品が好調だった。
「毎日お買い求めやすい価格」戦略の定着により、下期の売上総利益率は改善。経費削減の効果により、売上販管費比率も改善した。
Eコマース事業は0.1%増と好調だったが、通期の売上総利益率は1.4ポイント低下、売上販管費比率は0.5ポイント増加したことから営業利益は減益となった。ただ、下期6カ月間では、営業利益は同38.0%増と大幅な増益に転じている。
海外ユニクロ事業の売上高は6554億円(8.6%増)、営業利益は374億円(▲13.7%)と増収減益となった。ただしこれも下期6カ月間では、営業利益は15倍と大幅な増益に転じた。
下期の増益幅が大きかったエリアは、グレーターチャイナ(中国大陸・香港・台湾)、東南アジア・オセアニア、欧州。
グレーターチャイナの通期業績は、売上高3328億円(9.3%増)、営業利益が365億円(▲5.5%)と増収減益だったが、下期は計画を上回る大幅な増益を達成した。
とくに中国大陸では、第2四半期から既存店売上高が増収に転じたことや、経費削減などの効果により、下期は大幅な増益となった。
東南アジア・オセアニア地区と欧州は、通期で増収増益を達成。アメリカは、下期においてビジネスの改善が見られたが、不採算店舗の減損損失、除却損・閉店損など一時的な損失を合計で74億円計上した結果、通期の営業損失は拡大した。
2016年8月期末の海外ユニクロ事業全体の店舗数は958店に達し、160店の純増となった。
来期は、売上高1兆8500万円、営業利益1750億円、税引前利益1750億円、当期利益1000億円を見込む。
また、同日の13日には中期目標も発表された。
2020年度に売上高3兆円、営業利益率15%、Eコマース事業の大幅拡大を目指す。
そのために、商品の「素材調達・企画・デザイン・生産・販売までの一貫したサプライチェーン」すべてを変革し、「情報製造小売業」になることを標ぼうする。
「情報製造小売業」とは、1つは情報を商品化すること。
「人はなぜ服を着るのか?」という本質を追求し、人々の生活を豊かにするために、人々の生活の変化やファッショントレンドの変化、高機能素材と着心地の両立、時代性に合った着こなしの提案など、さまざまな情報を服づくりに活かし、同時に、お客へ情報をダイレクトに発信する小売業を指す。
2つ目は、顧客中心主義(カスタマーセントリック)。
お客の声は、ビッグデータとして分析し、すぐに商品化できるサプライチェーンへの改革を進める。お客の購買動向などを分析し、いつでも精緻な需要予測ができ、瞬時に販売計画の作成と修正が、社員全員のチームワークでできる体制を目指す。
そのために2つの改革を挙げる。
1つは、お客の要望に応えるサプライチェーン改革。
お客の要望に応えるサプライチェーンにするため、工場・生産のやりかたも改革する。工場・生産地に物流プラットフォームをつくり、生産リードタイムと、配送リードタイムを大幅に削減し、お客の要望に即応する体制をつくる。有明と同様の次世代物流センターを国内10カ所(札幌・仙台・名古屋・大阪・神戸など)で稼働する。中国・欧州・北米の海外市場でも同様に稼働を計画。
もう1つは仕事のやり方改革。インターネットの普及によって、お客、取引先、会社の各機能がつながることで、仕事のすべてのプロセスが、グローバルかつコンカレント(同期・同時進行)に進む現状を把握し、仕事のやり方をすべて変える。
仕事のやり方をすべて変えるため、2017年春、有明の最上階のオフィスに主要な商品・商売機能を移転し、ワンフロア約1万6500㎡のオフィスで、チームワークを中心にした社員の新しい働き方を目指す。
これらによって、お客に「新しい買い物体験」を提供する。リアル(店舗)とバーチャル(Eコマース)が融合させ、新しいさまざまなサービスを 「デジタルフラッグシップストア」で提供していく。
その上で、中期の成長戦略の柱は、3つ。
1つはグレーターチャイナと東南アジア・オセアニアの成長がけん引する海外ユニクロ。
2つ目はEコマース。Eコマースは中期的には、売上構成比30%を目指す。
3つ目はジーユービジネス。グループの第二の柱として明確に位置づけ、ジーユーで売上高1兆円を目指す。ジーユーの売上高は1878億円(前年同期比32.7%増)、営業利益222億円(34.8%増)と大幅な増収増益決算。店舗数は海外10店を含めて350店に達している。今後年間40~50店舗の出店を計画する。
ファーストリテイリングは、長期的には
売上高5兆円、世界No.1のアパレル情報製造小売業を目指す。
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