【4月百貨店】熊本地震と訪日外国人売上げ減でマイナス3.8%

4月の百貨店売上高概況が、5月20日に日本百貨店協会から発表された。調査対象百貨店は81社236店となり、1社1店舗の減。

売上高は4536億4417万円、前年同月比▲3.8%となり2カ月連続でマイナスとなった。その要因として、気温は高めだったが降水量が多かったこと、また円高や株価低迷などの消費マインドが冷え込んでいること、そして中旬に発生した熊本地震の心理的影響の3つを挙げている。

主要10都市は、すべてで対前年同月比マイナスとなった。
東京▲1.5%、仙台▲1.6%、神戸▲2.3%、大阪▲2.6%、横浜▲2.8%、広島▲2.8%、名古屋▲3.7%、札幌▲4.2%、京都▲5.2%、福岡▲5.2%となり、全体でも▲2.6%だった。

また10都市以外もすべてマイナスとなった。結果は以下のとおり。
中国▲1.1%、東北▲2.6%、中部▲3.1%、近畿▲3.9%、北海道▲6.1%、関東▲6.4%、四国▲6.6%、九州▲12.9%。全体では▲6.2%と大きく落ち込んだ。

福岡▲5.2%、九州地区▲12.9%の結果をみると、熊本地震がいかに大きな影響を及ぼしたかがわかる。

主要5品目の4月の動向を見てみよう。

主力の衣料品は、1544億4335万円、▲6.3%(6カ月連続マイナス)。
細分類をみると、紳士服▲4.4%、婦人服▲8.2%、子供服プラス0.1%、その他衣料▲2.0%となり、新入学シーズンの4月だけに子供服が6カ月ぶりにプラスとなった。

身のまわり品は、610億5279万円、▲6.0%となり2カ月連続でマイナス。

雑貨は、783億9741万円 、プラス0.7%(13カ月連続)と、好調を維持している。細分類をみると、化粧品が11.8%増と13カ月連続でプラス。美術・宝飾・貴金属の▲7.1%、その他雑貨の▲5.8%をかろうじてカバーした。

家庭用品は、216億8080万円、▲6.8%(4カ月連続)。
家具▲12.5%、家電▲20.2%、その他家庭用品▲3.7%とマイナスが並ぶ。

食料品は、1102億0276万円、▲1.1%(2カ月連続)。
生鮮食品▲2.4%、菓子▲1.0%、惣菜▲1.0%、その他食料品▲0.2%と、細分類すべての項目でマイナスとなった。

他の品目は、食堂喫茶▲6.0%、サービス▲11.3%、商品券▲10.3%。その他はプラス3.0%という結果。

訪日外国人の購買客数は前年同月比プラス7.8%の約26万人。39カ月連続のプラスだが、売上高は▲9.3%、約179億円。2013年1月以来39カ月ぶりのマイナスとなった。これは、中国の輸入関税引き上げなどが要因となっている。

大手百貨店グループの4月の業績もみてみよう(%はすべて対前年同月比)。

㈱三越伊勢丹ホールディングス
国内百貨店事業(三越伊勢丹計+国内グループ百貨店計)▲4.4%
三越伊勢丹計は▲4.5%。
三越伊勢丹の項目別では、主力の衣料品は▲4.9%。婦人服では、ブラウスやパンツ、紳士服ではビジネスアイテムに動きがみられたが、全体の売上げは伸び悩んだ。家庭用品は全体で▲15.6%。食料品は▲1.5%。また、好調だったインバウンド売上げが2014年10月以来、はじめて前年を下回った。インバウンド消費の中では、化粧品は好調だったが、宝飾・時計が苦戦した。

J.フロント リテイリング㈱  ▲6.4%。
名古屋店が4月21日にメンズ売場の改装によってグランドオープン。その効果で、紳士服飾雑貨が堅調に推移した。化粧品も好調。しかし、昨年、訪日外国人売上高が大きく伸びたことの反動で、今年は苦戦。それがマイナスに影響した。また大丸心斎橋店本館建替え工事による食料品売場の面積減と、名古屋店改装によって、紳士服飾雑貨は伸びたものの、家庭用品売場の面積が減少したこともあり、トータルでは大きくマイナスとなった。

㈱髙島屋(単体13店舗) ▲0.6%
雑貨はプラス12.9%。とくに化粧品はプラス21.7%と好調に推移。また家庭用品も5.1%のプラス。一方、衣料品は▲3.4%、身のまわり品は▲5.3%、食料品▲0.3%、食堂・喫茶▲0.7%となり、全体ではマイナスとなった。
他の百貨店がインバウンド需要の前年比減を報告しているのに対し、高島屋は前年比10.0%増と好調を示した。

エイチ・ツー・オー リテイリング㈱  百貨店はプラス0.6%
全店(百貨店・スーパーマーケット事業・イズミヤ事業)の数字ではあるが、プラスだったのは、雑貨15.9%、食料品1.4%、家庭用品0.7%、その他6.5%。
一方マイナスだったのは、衣料品▲2.1%、食堂・喫茶▲2.7%、身のまわり品▲5.8%、サービス▲6.6%。

4月の百貨店の特徴は、ずっと好調を維持していたインバウンド需要の変化。訪日外国人の購買客数はプラスだったものの、売上高が39カ月ぶりにマイナスとなっている。中国政府は4月8日に、海外で購入した商品に課す関税を引き上げた。たとえば、高級腕時計は30%から60%に、酒や化粧品などは50%から60%に税率が上がった。これは、中国人観光客の日本などでの「爆買い」に歯止めをかけるためであり、低迷する国内消費を促す狙いである。この中国の政策はすぐさま日本の百貨店の大きな痛手となり、4月の売上げのマイナス要因となった。

また中旬に発生した熊本地震が、顧客の購買心理に影響を及ぼし、九州地方の百貨店だけでなく、全国の百貨店に大きな打撃を与えた。そうした状況下で、地元の生活者にとってうれしいニュースもあった。熊本地震で被災し、4月15日から臨時休業していた熊本市の鶴屋百貨店が、23日、一部店舗で営業を再開。その日は朝から多くの家族連れなどが来店し、活況を呈した。

検索キーワード : 百貨店  4月  売上高  熊本地震  インバウンド  中国   

関連カテゴリー

統計 最新記事

一覧

最新ニュース

一覧