バロー農業法人買収 広がる小売りの農業参入
スーパーマーケット業界No.3のバローが農業法人を買収する。
15日に日本経済新聞電子版が伝えたところによると、今年10~11月にブナシメジを生産する第三セクター「飛騨小坂ぶなしめじ」が実施する5000万円の第三者割当増資を引き受ける。
出資比率を現在3割から7割に上げ、経営権を取得する。
もともと飛騨小坂ぶなしめじにとって、バロー向けが出荷量の約9割を占めていた。
バローは2年後をめどに工場を新設し、店頭販売量の5~6割を確保する。市場ルートより約1割コストを抑える。
バローはローコスト・オペレーションを特徴とするディスカウント型のスーパーマーケット企業。
2013年3月期は営業収益4312億1800万円(前年同期比5.0%増)、営業利益158億5200万円(同4.0%増)、経常利益168億4400万円(同5.1%増)、当期純利益81億8400万円(同14.5%増)だった。
本部の強力なマーチャンダイジングで価格志向型のプライベートブランドを展開するバロー。今回の農業法人買収は、その意味で理にかなった戦略だ。
シメジやマイタケなどは工場栽培されるので、計画的な生産が可能。
つまりコモディティ化しやすい。
今や、どのスーパーマーケットでもモヤシ1袋19円。これもコモディティ化現象。
バローはそのコモディティを主力にする企業。
だから、リスクの少ない形態での農業参入と言ってよい。
バローは今後さらに3~4件の農業法人買収を進めるという。
イオンやセブン&アイ・ホールディングスだけではなく、スーパーマーケット企業にも農業参入が広がってきた。
原材料まで遡って調達するバーティカル・マーチャンダイジングは、これまで外食産業で進んできた。
それは、外食産業が完成された食事を提供する業態であり、原材料の調達が商品の品質を左右する要素が大きいからだ。さらに外食産業は、小売業に比べれば、単品型のビジネスモデルと言ってよい。スーパーマーケットや総合スーパーなどの小売業は品揃え型。 だから外食企業のバーティカル・マーチャンダイジングは進んだ。
しかし素材を品揃え型で提供する小売業にとって、その意味は異なる。
調達の「分散」「多様化」といった観点からは、製造分野を所有することがリスクを抱えることになるからだ。だからチェーンストアは「工場を持たないメーカー」を志向してきた。
ここへきての小売業の農業参入は、外食と内食、中食の境界がなくなってきたことの表れと考えることもできる。コモディティ化現象の深耕と農業の大規模化とのマッチングと見ることもできる。
「食」のサプライチェーンという大きな視点で考えれば、今後もこうした動きはさらに活発になるはずだ。
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