イオンnews|営業収益10兆1349億円6.1%増/全セグメントで増収

イオン(株)(千葉市美浜区、吉田昭夫社長)の2025年2月期連結業績は、営業収益が10兆1348億7700万円(対前期比6.1%増)、営業利益2377億4700万円(5.2%減)、経常利益2242億2300万円(5.6%減)、当期純利益287億8300万円(35.6%減)。
営業利益率2.3%(2.6%)、経常利益率2.2%(2.5%)。( )は前年数値。

 

イオンは、グループ共通戦略として、イオングループ中期経営計画(2021~2025年度)で掲げた5つの変革「デジタルシフトの加速と進化」「サプライチェーン発想での独自価値の創造」「新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化」「イオン生活圏の創造」「アジアシフトの更なる加速」を着実に推進し、「環境・グリーン」の取り組みを進めている。2月28日にはイオンモール(株)とイオンディライト(株)の完全子会社化した。

「デジタルシフトの加速と進化」ではGMS事業のイオンリテール(株)では、食品売場へのセルフレジの導入がほぼ全店で完了した。「レジゴー」導入店舗は期末で337店舗。9月には、イオンのトータルアプリ「iAEON」に「レジゴー」を組み込み、各種クーポンに加えて、利便性を高めた。サービス開始から3年強でダウンロード数が1400万を超えた。

今後、各社の顧客IDの共通化を進め、イオンカードや「iAEON」「WAON POINT」「AEON Pay」などを通じて蓄積された販売データや購買履歴情報を活用し、顧客体験価値を最大化させる1to1マーケティングへの転換を進めた。

また、“その日その時”の最適な値引き率を提示して食品ロスを削減する「AIカカク」や、需要予測に基づき商品発注を最適化する「AIオーダー」等を導入している。AIの活用で創出された人時を、顧客満足に直結する業務に充てる態勢となっている。

オンラインチャネルでは、顧客フルフィルメントセンター(CFC)から商品を出荷するネット専用スーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)」は店舗数が限られる首都圏エリアでの事業基盤強化が順調に進んでいる。

2月末時点の会員数は約50万人まで増加し、ハブとなるCFC以外に配置した6カ所のスポーク(中継地点)で、東京23区全域を含むサービスエリアにおいて、730万世帯以上への配送が可能となった。さらに、建設中の第2号八王子CFC(東京都八王子市)と第3号久喜宮代CFC(埼玉県南埼玉郡宮代町)の稼働により、2027年度以降には1都3県の主要エリアで最大約1500万世帯をカバーする体制が整う。

「サプライチェーン発想での独自価値の創造」ではプライベートブランドであるトップバリュでは、グループの規模を最大限に活かし、戦略・計画から店舗オペレーションまでのサプライチェーンを構築して、荒利益率の改善も目指している。トップバリュは「コツコツコスパ」をテーマに、「トップバリュベストプライス」(価格訴求型)の厳選品目の値下げや増量で顧客ニーズに応えている。

トップバリュ3ブランドのグループ内展開と売上構成比の拡大に注力している。2025年度までにPB全体で売上高2兆円の達成を目指す。ナショナルブランド商品では、イオン商品調達(株)にグループ内の需要を集約し、コスト削減分を商品価格への反映を進めている。

食品分野では、次世代型惣菜プロセスセンター「Craft Delica Funabashi」(千葉県船橋市)が6月に稼働した。さらに、7月に本格稼働した物流センター「イオン福岡XD」(福岡市東区)では、構内作業の改善や物流作業の自動化を推進して、作業負荷の軽減や生産性の向上を目指している。

「新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化」では2024年2月に資本業務提携契約を締結した(株)ツルハホールディングス、ウエルシアホールディングス(株)の3社は、強いパートナーシップのもと、ドラッグストアを基盤に、ツルハ・ウエルシアのヘルスケア領域での強みとイオンのウエルネス分野の取り組みを融合し、ツルハ・ウエルシアのアセアン地域での経験と、今までの事業基盤を活かし、アジアナンバーワンのグローバル企業を目指している。

セグメント別では、GMS事業は、営業収益3兆5594億8100万円(2.6%増)、営業利益163億60百万円(前期より115億6500万円の減益)。中核事業会社であるイオンリテールでは、「荒利益額の最大化」「ショッピングセンター収益改善」「デジタル売上拡大」を実行しながら、耐性のある経営基盤を構築すべく「収益構造改革」を加速した結果、増収となった。

また、インフレによるコスト上昇により、営業利益は昨年より減益になったものの、既存店の活性化をはじめとした店舗価値向上に取り組んだ。粗利益額の最大化では、食品PBを中心にシェア拡大と客数増加を意識し、購入頻度に基づく厳選品目の値下げを定期的に実施した結果、顧客の支持を拡大している。

SPA(製造小売業)企業の粗利益率を目標とした改革を進める衣料では、デイリーカジュアル、ネクストエイジ(若年層)、スポーツライフ、セカンドライフ(シニア層)、オケージョン、雑貨・トラベルの6つの領域にて、売場環境、品揃え、接客を含めた働き方を改革する「専門店モデル」の導入を進め、対象店舗数が累計14店舗にまで拡大した。

住居余暇では、「楽しさ」「エキサイティング」を重視した「余暇強化型モデル」の有効性の実証を受けて、来期に向けて同モデルの展開を進めている。ショッピングセンター収益改善では、来館客数を最重要KPIとして、店舗の魅力を全館で最大化する活性化・環境投資を進めている。新たな都市型ショッピングセンター「そよら」の展開も加速させている。

特に外部テナント比率を高めた店舗で、収益が大きく改善している。デジタル売上拡大に向けては、ネットスーパーで品揃えや予約企画を強化するほか、店舗におけるピックアップ比率の向上や競争環境に応じた拠点の整備・拡大により、顧客の利便性向上と物流費低減につなげている。収益構造改革では、デジタルを活用した生産性改善と、店舗・本社の経費削減の両輪で推進していて、バックオフィスのコスト削減や人件費の適正化を進め、人時生産性が大きく改善した。

SM・DS事業は、営業収益3兆600億6500万円(10.0%増)、営業利益329億5900万円(前期より89億5200万円の減益)。中核企業のユナイテッド・スーパーマーケットホールディングス(U.S.M.H)は11月末のいなげやとの経営統合を契機に事業会社間との関係を抜本的に見直し、首都圏最大規模のスーパーマーケットとして強固な経営基盤を構築する体制への移行を進めている。

具体的には「加工食品、日配食品を始めとした一括仕入調達体制の構築」「人事・総務・IT等のバックオフィス部門を集約」「IT・ロジスティクス・店舗開発等の業務統合による情報共有の迅速化とマーケティング機能の充実」を主要な目標として取り組んでいる。

「マルエツ草加デリカセンター」(埼玉県草加市)を本格稼働させ、伸長する調理食品の品揃えの充実を図るとともに、店舗作業の軽減化を目指し、同社グループ内660店舗のうち約500店舗への商品供給を開始した。

DS事業は、営業収益4114億4700万円(2.8%増)、営業利益79億9100万円(前年同期より4億9700万円の減益)。生鮮食品を中心とした価格競争力の強化による節約ニーズへの対応に注力し、単位当たりの安さを追求したケース販売や、大容量商品を訴求しながら、iAEONやAEON Payの活用で、顧客の利便性も向上させている。

ヘルス&ウエルネス事業は、営業収益1兆3228億7600万円(7.1%増)、営業利益360億0700万円(前期より65億9200万円の減益)。ウエルシアホールディングス(株)および同社連結子会社では、2030年のビジョンとして「地域No.1の健康ステーション」の実現を目指している。

商品ではオリジナルPB「からだWelcia」「くらしWelcia」の開発および拡販を進め、WAON POINTサービスとの連動により、同社のポイント会員であるウエルシアメンバーが1380万人まで増加した。調剤部門では調剤併設店舗数の増加(期末2282店舗)により処方箋受付枚数が増加した結果、物販および調剤合計の既存店売上高対前期比は堅調に推移した。同社グループの店舗数は3013店舗。

総合金融事業は、営業収益5304億5200万円(9.7%増)、営業利益611億6500万円(前期より99億3400万円の増益)。預金残高は5兆2016億3300万円(期首差6622億6000万円増)。

ディベロッパー事業は、営業収益4961億7000万円(5.9%増)、営業利益530億3500万円(前期より56億8600万円の増益)。イオンモールは営業収益、営業利益、経常利益が増収増益となった。人口動態の変化等により、国・地域ごとに、一律ではなく、地域の生活圏に着目し徹底したマーケット分析・調査を行うことで、各地域が抱える課題やニーズを汲んだ事業展開を進めている。

国内では、既存モールの競争力強化を目的としたリニューアルを推進し、イオンレイクタウンの「Lake TownOUTLET」(埼玉県越谷市)およびイオンモール太田(群馬県太田市)の増床リニューアルを実施した。

集客施策では、ゴールデンウィーク期間中に全国のモールで1,500件を超えるイベントを開催したほか、夏季には猛暑対策として館内での夏祭りなどの企画を通じ、地域におけるクールシェアスポットを提案した。下期は節約志向に対応し、「イオン ブラックフライデー」や「イオン 超!初売り」を展開した。これらの施策により、既存モールの来店客数は前年を上回った(対象92モール)。

インバウンド消費については、観光地や空港周辺のモールを中心に需要の取り込みを進めた結果、免税売上高は前年の約2倍に伸長した。

海外では、中国において既存モールの歩合賃料収入の増加や新規モール展開により増収となった一方で、前期に閉店したモールの利益減少や新規モールの開業費用により営業利益は減益となった。ベトナムでは、地域行政や団体と連携したイベント実施や専門店で利用可能なクーポン発行等の取り組みに加えて、記念日や季節行事に合わせたセールス企画や集客イベントを計画的に実施した結果、増収増益となった。

カンボジアでは、イオンモール ミエンチェイ(プノンペン都)における周辺道路工事の進展や館内リノベーション、SNS活用の集客策や、イオンモール プノンペン(プノンペン都)の増床リニューアル効果から増収となったが、販促活動強化に伴う費用増加により、減益となった。

インドネシアでは独立記念日に合わせたプロモーションや既存モールの空床改善により来店客数が増加し、黒字に転換した。

サービス・専門店事業は、営業収益7291億5200万円(1.6%増)、営業利益231億0400万円(前期より53億9600万円の増益)。イオンディライトではイオングループ内外における顧客内シェア拡大や新規受託物件の増加に加え、人件費や外注費、原材料費等の原価上昇に伴う単価見直しの推進により増収増益、営業利益、経常利益は過去最高となった。

人件費や外注費の上昇が課題となる設備管理警備・清掃の各事業では、継続契約の新規受託をはじめとした売上高の拡大により、増収増益となった。

国際事業(連結対象期間は主として1月から12月)は、営業収益5488億7500万円(7.9%増)、営業利益94億9300万円(前期より8億7800万円の減益)。

マレーシアでは、PB拡販や必需品への販促活動を強化し、モール来店客数の増加に伴うテナント入居率の改善もあり、営業収益は前年同期比104%。オンライン事業では、ネットスーパーの品揃えの見直しや時間指定配送の精度向上に取り組み、売上高は前年同期比111%と伸びた。2024年5月には全国配送サービスを開始し、顧客基盤の拡大に努めた。

ベトナムでは、経済成長の加速を背景に、売上高は第4四半期連結会計期間に前年同期間比130.1%、年度累計では前期比120.1%。新規出店店舗の好調に加え、既存店も前期比112.9%と堅調に推移した、衣料が前期比126.9%となった。

オンライン販売は、第4四半期連結会計期間に前年同期間比192%と伸長し、売上構成比は5.1%へと拡大した。11月からは全国配送サービス「Nationwide Delivery」を開始し、グループ未出店のエリアも含め、全国63省中58省からの注文獲得など、新たな顧客層を開拓している。

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