5月SC統計|既存SC売上高前年比70.1%増、19年比では33.2%減
一般社団法人日本ショッピングセンター協会(東京都文京区、清野智会長)が5月のショッピングセンター(SC)販売統計を発表した。
5月の既存SC売上高は、前年が緊急事態宣言下で全国的に自主休業を行った商業施設が多かったことの反動もあり、総合で前年同月比70.1%増と大幅なプラスとなった。しかし、コロナ禍前の2019年比較では33.2%減と前月(24.8%減)から10ポイント近く悪化した。
4月25日の緊急事態宣言発出以降、大きな「人流」を止めるという政府方針に従って、多くのSCは休業要請対象外にまで休業範囲を広げ、食品・医薬品などの一部テナントの営業に限定していた。当初4都府県(東京都、大阪府、京都府、兵庫県)が対象とされた緊急事態宣言は、5月12日以降、6道県が追加され、計10都道府県に拡大された。
立地別では、中心地域・総合が前年同月比119.9%(前々年比45.2%減)、周辺地域・総合が同57.5%(同 27.8%減)となった。中心地域では3桁の伸びだが、前々年比では45.2%減(総合)と半減に近い落ち込みで、広域移動を伴う利用者が主な来館者である中心地域の厳しい状況が継続した。
構成別の売上高では、テナントが前年比で100.5%増となったが、前々年比では36.8%減と苦戦した。これは、テナントの中に、緊急事態宣言下で「生活必需対象外」とされ、休業を余儀なくされたサービス業種(シネマやエステサロンなど)が含まれていることが要因と見られる。
立地別・地域別の売上高では、北海道が前年5月に90%減前後まで落ち込んだ反動で、5月は総合が253.4%増、中心地域が589.9%増と大幅に前年を上回った。しかし、北海道は16日の緊急事態宣言発出に伴う土日祝日の休業要請を受けた臨時休業が響き、前々年比では総合で50.2%減と近畿に次ぐ落ち込みとなった。近畿は、総合で前年同月比10.6%減で、大幅なマイナスとなった2020年5月をも下回る厳しい結果となった。この要因は、大阪府や兵庫県、京都府において、緊急事態宣言の期間が前年より長かったことや、休業要請対象から外れる生活必需品の対象が食料品・医薬品などと他自治体よりも厳しく限定されたことが要因と考えられる。
都市規模別・地域別の売上高では、総合で大都市が前年同月比80.2%増(前々年比42.5%減)、その他の地域が64.7%増(前前年比26.3%減)となった。前々年比では大都市で40%超え、その他の地域で20%超えの落ち込みと全国的に厳しい状況だった。特に、休業要請の内容が厳しかった大阪市は総合で前々年比83.0%減、神戸市も57.2%減と前月よりも大幅に悪化した。一方、前々年比では千葉市が総合で21.6%減、横浜市が15.0%減、川崎市が15.4%減と他の都市よりも下げ幅は小さかった。これは、東京区部のSCが休業となったため、都内からの来館者が増加したからだと考えられる。
業種別では、飲食店舗は時短営業に加えて酒類の提供が禁止された影響が非常に大きく、苦戦が続いている。一方、同じ飲食店舗でもテイクアウト需要の高まりでファストフードは好調だった。また、「母の日」関連で洋菓子などの食物販やギフトも堅調に推移した。これは外出自粛に伴って家族で過ごす時間が増えたことも一因である。