【5月百貨店】爆買い効果薄れ▲5.1%、全18地区・3カ月連続で前年比ダウン
5月の百貨店売上高概況が、6月20日の今日、日本百貨店協会から発表された。前月と変わらず調査対象百貨店は81社236店。
売上高は4629億2215万円、前年同月比▲5.1%となり、3カ月連続でマイナスとなった。
マイナスの大きな傾向を、協会では下記のとおり、4つあげている。
①10都市及び10都市以外の地区全18地区で前年同月比マイナスとなったこと。
②これまで売上げを牽引してきた大規模店も含め、店舗規模別でも全体的に低迷。
③訪日外国人の購買客数はプラスだったものの、購買単価が下落し、売上高が2カ月連続で前年同月比マイナスとなったこと。
④国内購買客の動きをみると、株価低迷などの消費マインド低下のため、中間層から富裕層の取り込みに苦しんだ。
都市別の詳細からみてみよう。
主要10都市は、すべてで対前年同月比マイナスとなった。
福岡▲2.6%、横浜▲3.1%、広島▲3.4%、札幌▲3.6%、神戸▲3.8%、東京▲4.5%、
大阪▲4.7%、名古屋▲5.7%、京都▲6.0%、仙台▲6.1%となり、全体でも▲4.4%だった。
また10都市以外もすべてマイナスとなった。
東北▲0.8%、近畿▲3.1%、中国▲3.2%、中部▲5.2%、北海道▲6.5%、四国▲6.5%、
関東▲8.0%、九州▲8.7%。全体では▲6.5%と落ち込んだ。
主要5品目の5月の動向をはどうだったのか。
主力の衣料品は、1555億5455万円、▲7.8%(7カ月連続マイナス)。
細分類をみると、子供服▲5.6%、紳士服▲6.9%、婦人服▲8.7%、その他衣料▲5.5%となり、すべてマイナスとなった。
身のまわり品は、629億8860万円、▲7.6%となり3カ月連続でマイナス。
雑貨は、796億9134万円 、プラス0.2%(14カ月連続)。細分類をみると、美術・宝飾・貴金属▲7.9%、その他雑貨が▲3.5%だったものの、化粧品が9.3%増と14カ月連続でプラスとなり、全体でもなんとかプラスを計上。化粧品に関しては、18地区すべてで前年を上回り、好調を維持している。
家庭用品は、212億2778万円、▲9.2%(5カ月連続)。
家電▲8.8%、家具▲16.6%、その他家庭用品▲6.8%とマイナスが並ぶ。
食料品は、1143億5086万円、▲2.5%(3カ月連続)。
惣菜▲0.8%、菓子▲2.7%、生鮮食品▲4.8%、その他食料品▲1.9%と、こちらも細分類すべての項目でマイナスとなった。
他の品目は、食堂喫茶▲8.3%、サービス▲10.3%、商品券▲8.7%。その他はプラス3.1%という結果だった。
大手百貨店グループの5月の業績も見てみよう(%はすべて対前年同月比)。
㈱三越伊勢丹ホールディングス
国内百貨店事業(三越伊勢丹計+国内グループ百貨店計)▲6.8%
三越伊勢丹計は▲8.7%。
三越伊勢丹の項目別では、主力の衣料品は▲8.7%。昨年よりも気温が上がらず夏物商戦が伸び悩みマイナスとなった。その中でも紳士のカジュアルパンツ、帽子には動きがみられた。また、インバウンド消費は前月に引き続き苦戦。化粧品、子供服は好調だったが、宝飾時計などの高額品が売上げを伸ばせず。他のカテゴリーは、家庭用品▲18.7%、食料品▲0.8%、食堂・喫茶▲7.5%、サービス▲45.8%とマイナスがならんだ。
J.フロント リテイリング㈱ ▲7.1%。
松坂屋名古屋店のメンズ売場改装効果で紳士服飾雑貨が堅調に推移し、化粧品もプラス。ゴールデンウイーク商戦も好調に推移。しかし、大丸心斎橋店本館建替えによる面積減の影響及び、昨年訪日外国人売上高が大きく伸びたことの反動、また土曜日が昨年より1日少なかったことが影響し、全体でマイナスとなった。
㈱髙島屋(単体13店舗) ▲1.7%
雑貨はプラス9.3%。とくに化粧品はプラス18.7%と好調に推移。家庭用品の中では家電がなんと83.0%のプラス。しかし家具は▲11.1%となり、全体では▲7.4%だった。衣料品は▲3.8%、身のまわり品は▲4.6%、食料品▲0.1%、食堂・喫茶▲2.6%となった。土曜日が1日少なかったこともマイナス要因のひとつ。免税販売額に関しては、消耗品がプラス5.2%と好調だった。
エイチ・ツー・オー リテイリング㈱ 百貨店は▲1.8%。
部門別詳細データは、全店(阪急阪神百貨店・阪食のスーパーマーケット事業・イズミヤ事業)の数字だが、プラスだったのは雑貨3.6%、その他0.5%。一方マイナスだったのは、衣料品▲4.3%、身の回り品▲2.2%、家庭用品▲4.9%、食料品▲0.3%、食堂・喫茶▲4.3%、サービス▲15.8%という結果だった。
ここにあげた大手百貨店グループもすべて売上げはマイナスとなり、苦しい月となった。
訪日外国人の購買客数は前年同月比プラス12.7%の約23万人で40カ月連続のプラス。しかし、売上高は▲16.6%で約134億円となり、2カ月連続でマイナスとなった。
前月4月には中国政府が「爆買い」に歯止めをかけるために関税引き上げ政策を行った。それにより、インバウンド需要に異変が起き、4月の訪日外国人売上げは39カ月ぶりにマイナスを計上。購買客数はプラスだが、売上高はマイナスというその傾向は5月の数字にも表れている。これが続きそうだし、当たり前となるだろう。
日本政府観光局(JNTO)によると、5月の訪日外客数は、前年同月比15.3%のプラスで189万4000人。5月としては過去最高の記録となった。中国、東南アジアや欧米豪からは好調な訪日だったが、韓国市場は、4月に発生した熊本地震の影響が強く、マイナスとなったと発表された。
6月は、熊本地震の影響や夏休み前ということで、伸び悩みも懸念されるが、「第99回ライオンズクラブ国際大会」の開催という国際イベントも予定されている。昨年はホノルルで開催されたが、今年は福岡。6月24日~28日の5日間で約1万人の訪日外国人の参加が見込まれている。この人の流れが各市場に影響を及ぼすことが予想される。
検索キーワード : 百貨店 5月 売上高 インバウンド 福岡