平成27年5月の商業販売額は36兆3990億円で昨対▲2.0%、卸売業衰亡

経済産業省から、平成27年5月度の商業動態統計速報が発表された。すでにそれぞれの協会からの業態別の販売結果を報告したが、商業全体ではどうだったのか。客観的な立場から総括的に集計された結果を見てみよう。

商業販売額は36兆3990億円(前年同月比マイナス2.0%)。季節調整済前年比もマイナス2.0%だった。
商業とは大きく、卸売業と小売業で構成される。
販売額をそれぞれ見ると、卸売業は24兆6300億円(マイナス4.2%)、小売業が11兆7690億円(プラス3.0%)。つまり小売業は好調だったが、卸売業が全体の足を引っ張ったことになる。

1.卸売業

販売額は、24兆6300億円(マイナス2.0%)、季節調整済みではマイナス3.1%であった。

業種別で前年同月比でプラスとなったのは、以下の三業種。
医薬品・化粧品 7.6% 、食料・飲料 3.7%、農畜産物・水産物 2.5%
 
一方減少したのは、
鉱物・金属材料▲12.5%、建築材料▲9.6%  
化学製品▲9.3%、各種商品▲5.8%、機械器具▲5.6%
その他▲5.5%、 衣服・身の回り品▲5.0%、
家具・建具・じゅう器▲2.5%、繊維品▲0.8%

5月はマイナスが圧倒的に多い。逆に言えば、良かったのは日常の必需品の卸売業ばかり。

とくに大規模卸売店販売額は7兆9740億円と7.6%のマイナスとなった。
これを商品別にみると、鉱物▲36.9%、 その他輸送用機械器具▲26.8%、石油・石炭▲24.5% 鉄鋼▲21.1% 一般機械器具▲7.9%。増加したのは、医薬品・化粧品 14.8%、非鉄金属7.8%、家庭用電気機械器具2.2%。
医薬品・化粧品が二ケタの増加となった一方、資源産業などの減少率が高い結果となった。

卸売業産業は業種別に淘汰が進み、アベノミクス効果などでは浮上ができない構造となっている。つまり卸売業統計は業種別に調査しても実態をつかめないところに来ている。

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 (表はすべて経済産業省の「商業販売額の動向」より)

2.小売業

販売額は、11兆7690億円(プラス3.0%)。季節調整済みではプラス1.7%であった。

業種別で前年同月比で増加となったのは以下のとおり。
各種商品5.0%、織物・衣服・身の回り品4.6%、飲食料品4.9%、自動車4.1%、機械器具9.1%、医薬品・化粧品4.2%、その他3.2%。
   
一方減少したのは燃料で、12.6%のマイナスとなった。

これは既に発表された業界別の営業成績と同期している。

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3.大型小売店の販売額は、1兆6922億円(前年同月比プラス6.2%)。季節調整済みでも2.6%の上昇となり、好調。

大型小売店は大きく2つの業態で報告されている。

ひとつは、百貨店。

販売額は5418億円(プラス5.8%)。季節調整済み2.4%。
既存店では6.3%のプラス。

主力商品である衣料品は前年同月比プラス4.5%。
とくに、その他の衣料品がプラス9.3%、身の回り品 9.3%が貢献した。
紳士服・洋品4.1%、婦人・子供服・洋品1.7%。
飲食料品は0.0%と横ばいであった。
  
また、衣料品・飲食料品を除く、その他の商品全体では前年同月比プラス14.4%。
詳細は、その他の商品18.8%、家庭用電気機械器具10.3%、家具7.3%、家庭用品5.6%、食堂・喫茶 2.6%。

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日本百貨店協会から発表された5月の全国百貨店売上高は、4886億5486万円。
昨年同月比6.3%増と2カ月連続でプラスだった。売上高の差は、先月も説明したとおり、協会の数値は加盟企業の総計、経産省の数値は地方の自称「百貨店」を含むため。
先月はどちらも13%台のプラスを計上していたが、今月は同じくどちらも一ケタ台のプラスにとどまった。

もうひとつは「スーパー」。

その販売額は、1兆1504億円、プラス 6.4%であった。季節調整済みは1.8%。既存店は4.8%プラスという結果。

衣料品の全体では前年同月比プラス3.7%と、まあまあの成績。
詳細は、その他の衣料品 6.4%、紳士服・洋品4.0%、婦人・子供服・洋品 3.4%、身の回り品3.0%。

スーパーの主力商品である飲食料品は6.6%プラスと引き続き好調。

また、その他は全体では前年同月比プラス7.0%。
家庭用電気機械器具が26.7%と好調だったほか、家具11.5%、家庭用品6.1%、その他商品が6.0%とプラスだった。
食堂・喫茶はマイナス16.3%と大きく減少した。

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日本チェーンストア協会の5月の販売統計によると、スーパーの総販売額は1兆1246億3090万円。
既存店ベースでは前年比5.7%と近い数字となっている。

4.コンビニエンスストア

商品販売額及びサービス売上高は9344億円(前年同月比 プラス6.4%)。内訳は商品販売額が8839億円(プラス5.7%)、サービス売上高は505億円(プラス21.3%)。

商品別にみると、
ファストフード及び日配食品は3434億円(プラス6.8%)
加工食品は2554億円(プラス6.3%)
非食品は2851億円(プラス3.8%)
といずれも好調。

6月23日のDairy商人舎でも掲載したが、日本フランチャイズチェーン協会の「コンビニエンスストア統計調査月報」においても サービスはプラス19.4%を計上し好調を示している。今、顧客は手軽で便利なコンビニのサービスをより頻繁に利用していることが、数字となってはっきりと表れている。

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5月は小売業全体ではプラス3.0%だったが、大型小売業全体で6.2%の増加、百貨店はプラス5.8%、スーパーはプラス6.4%となった。そしてコンビニもプラス6.4%。いずれもチェーン小売業が好成績を収めた。

それにしてもこれだけ小売業が好調なのに、5月の卸売業が全体でマイナス3.1%。卸売業は事業所サービス業へと転換しなければ、産業レベルで衰亡していく。

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