三菱商事・ローソン子会社化の報道と両社の対応、その意味

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日経新聞が一面トップですっぱ抜いて、NHKまで追随報道した「三菱商事、ローソンを子会社化」騒動。

両社は昨日揃って、報道内容はまだ検討事項で決定事項ではないと、以下の文面で公式見解を述べた。
つまり誰かが日経の記者にリークしたニュースだ。

ローソンのニュースリリース。
「本日の日本経済新聞朝刊において、三菱商事株式会社が当社を公開買付けにより出資比率を33%から51%に高め、子会社化を行う旨の報道がありましたが、当社が発表したものではございません。

三菱商事株式会社から、当社を公開買付けにより上場維持を前提とした子会社化の提案があり、当社は現在検討中ですが、決定された事実はございません。決定され次第速やかに公表いたします。」

これを見るとわかるように、公式発表したものではないが、提案があり、検討中であると内容は認めている。しかも「決定され次第速やかに公表する」としているから、ほぼ決定事項に近い。

 

ローソンは店舗数でコンビニチェーン第3位、8月末現在、国内店舗1万2606店、海外店舗926店を展開する。国内ではローソン1万1146店、ナチュラルローソン138店、ローソンストア100が799店と3つのフォーマットをもつ。

国内店舗数だけ見ると、8月末段階で第1位のセブンイレブンが1万9044店、ファミリーマート・サークルKサンクス連合が1万7365店(ファミリマート1万1070店・サークルKサンクス6295店)、ローソンが1万2606店と、大きく水をあけられている。

 

ローソンは1974年12月にダイエーが、米国コンソリデーテッドフーズ社とコンサルティング契約を締結し、翌75年4月に㈱ダイエーローソンを設立して誕生。6月14日に、豊中市に直営の第1号店をオープンさせ、同年9月からフランチャイズチェーンを展開。79年には㈱ローソンジャパンに社名変更。東日本をドミナントにするサンチェーンと関西を地盤とするローソンジャパンが合併し、(株)ダイエーコンビニエンスシステムズが誕生したのが89年3月。96年にはローソンに社名を再び変更。
98年には売上高1兆円を記録するも、親会社ダイエーの凋落により、2000年1月、ダイエーはローソンの発行済み株式の20%を三菱商事に売却すると発表、2月には三菱商事と業務提携する。ここから三菱商事の影響力が強まる。そして同年7月に東証1部上場。

2001年には三菱商事が30.68%の議決権を有する筆頭株主となる。2016年2月末段階で、大株主とその出資比率は、三菱商事㈱33.4%、日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口)4.1%、日本マスタートラスト信託銀行(信託口)3.4%。

しかし33.4%の3分の1の株式を所有するからといっても、完全子会社にする理由は希薄だ。フランチャイズチェーンには加盟店がある。もちろん取引先も、従業員も、顧客も多数、存在する。

さらに小売業を専門とする本誌の立場から言わせてもらえば、商社に小売業経営は向かない。商社から小売業に出向したり、転籍したりした経営者は、必死の思いで小売業に馴染む努力を重ねた。そんな商社出身の経営者が小売業をマネジメントすることと、小売業が商社の完全子会社となることとは、まったく意味が異なる。

大手チェーンストアと商社の結びつきは以前とは比べようもないほど強い。今回のローソン子会社化は、三菱商事のグローバルな食品調達ネットワークを生かしたローソン支援と言われる。

成熟業態のコンビニは、ナショナルチェーン3社による寡占化が進んでいる。これを「三占」と名づけよう。しかしアメリカの業態の盛衰をみればわかるが、ナショナルチェーンは数社が市場の大半のシェアを占める寡占状態から、三占を経て、2社が市場を独占する「複占」に至る。

国内のコンビニ市場をセブン⁻イレブンとどこが分け合うのか。ファミマとローソンの生き方がどちらに向かうのか。2016年はその岐路の年と位置づけられるかもしれない。

ただしもし今回の案件が実行されたとしたら、複占に残るのはファミリーマートに違いない。商社出身の優秀な経営者が小売業を経営することは、商社マンの小売業化であるが、小売業が商社の子会社になるのは小売業の商社化である。それはうまくはいかない。そのことはここではっきりと指摘しておこう。

 

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