メトロnews|日本市場から2021年10月末に撤退

メトロ(ドイツデュッセルドルフ)は8月5日(木)、日本法人のメトロキャッシュアンドキャリージャパン(株)(東京都品川区、大矢妙子社長)の事業撤退を決定したと発表した。10月31日までに全事業を終了する。またメトロアプリの各種サービスも順次終了する。

メトロ店舗は東京近郊に10店舗を展開して、飲食店やホテルなどの飲食業に携わる事業者を対象に、卸売りしている。同社では事業の拡大および改善のために都心型小型店舗やデリバリー事業の加速化、プライベート・ブランドや直輸入食品の差別化商品の拡充、さらには買収の可能性を探るなどさまざまな試みを行ってきた。しかし日本の卸売り市場が細分化されていること、競争が激しいこと、さらには新型コロナウイルス感染症拡大によって飲食業が大ダメージを受けたことで、撤退を余儀なくされた。

2021年3月時点で約1200名の従業員がいるが、従業員には特別退職金を支給し、希望者には再就職支援サービスを提供していく。

【結城義晴の述懐】

フランス第一のカルフールが早々と退散し、イギリス首位のテスコが撤退し、アメリカ第一で世界第一のウォルマートが結局、15%の株式を所有するもののフェードアウトしていきそうだ。そしてドイツでトップだったメトロも、コロナ禍のあおりを受けて、撤退を決定した。感慨深い。

イギリスの経済学者ジョンH・ダニング (John H. Dunning) は海外直接投資に関する理論的フレームワーク「OLIパラダイム」を提唱した。このOLIパラダイムは3つの条件によって決定される。
第1が所有特殊的優位 (Ownership-specific advantages:O優位)。
第2が内部化インセンティブ優位 (Internalization-incentive advantages:I優位)。
そして第3が立地特殊的優位 (Location-specific advantages:L優位)。

O優位とは企業が何を独自の競争優位性と認識するか、I優位とはその優位性をどのような方法で活用するか、そしてL優位とはどこで営業活動を行うか。

この3つの条件の上に、総合的なフレームワークが必要となる。

カルフールもテスコ、メトロも、O優位は果たしたが、I優位の問題を抱えた。そしてL優位は日本を選んだことそのものが、撤退の原因となった。つまりL優位の選択ミスによって、O優位が成り立たなくなり、それにI優位の欠落が重なった。

残る欧米の総合小売業はコストコだけになった。
そのコストコは圧倒的なO優位を誇る。つまり本国と全く変わらないフォーマットでの参入で、米国でも日本でも強力な差異性と優位性をもつ。決定的なポジショニングを有する。
そのうえで1号店からジム・シネガル共同創業者の長男マイク・シネガル氏を日本支社長にして、骨をうずめる覚悟で日本市場に参入した。つまりI優位である。

このO優位とI優位によって、L優位が確立された。

ウォルマートは首の皮一枚で残っているが、今後はネットスーパーとの相乗効果と、大久保恒夫新CEOの力量にかかっている。

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