米国百貨店メイシーズのオムニ・チャネル戦略、世界を先導しつつ新段階に進む

2011年、メイシーズCEOのテリー・ラングレンが「オムニ・チャンネル宣言」を発した。
それが世界の小売業のオムニ・チャネル戦略の発端となった。
そのメイシーズがオムニ・チャネル新戦略を発表。

新戦略といってもオムニ・チャネルの新しいアイデアと工夫の数々が提示された形だ。

そのメイシーズの今年1月末の決算。
売上高は279億3100万ドル、1ドル100円換算で2兆7931億円。
伸び率は0.8%で、オムニ・チャネル戦略を華々しく打ち出しても、それ相応の売上げ増加が見られたわけではない。

純利益は14億8600万ドル、1486億円で、こちらは11.3%の伸び率。
オムニで店舗以外の売上げが上がって、利益向上に貢献したのかもしれない。

決算時点の総店舗数は840。メイシーズは二つのバナーをもっている。
800店のメイシーズ百貨店は全米45州およびコロンビア特別地区、グアム、プエルトリコの地区で展開。
ブルーミングデール百貨店は
12州で40店舗を展開。

新戦略でまず目を引くのが、オンライン注文商品製品の「即日配達」サービスだ。
メイシーズでは、シカゴ、ヒューストン、ロサンゼルス、ニュージャージー、サンフラ ンシスコ、サンノゼ、シアトル、ワシントンDC地区の8大都市で実施。
ブルミンデールはシカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、サンホゼの 4都市。

その配達はクラウドソーシング業者「デリブ(Delib)」が協力する。オムニチャネルの課題は、最後の1マイルと言われる配送体制にある。そのマイルをデリブが担う。その意味でオムニ・チャネルは協力企業との連携によって成り立つ。

もう一つはメイシーズとブルーミングデール全店でのモバイル決済サービス「アップル・ペイ」展開と、独自のデジタルウォレット「マイウォレット(My Wallet)」の導入。普及率の高いiPhoneやアップル・ウォッチによる支払いは、お客の利便性を高める。同様のサービスではドコモの「おサイフケータイ」があるが、3300万台を超えたといわれる。代金を支払う手間が省けるとして好評で、小売業の決済にも活用できるとなれば便利に違いない。

昨2013年から実験されてきたオンライン購入の店鋪ピックアップ「バイ・オンライン・ピックアップ・イン・ストア(Buy Online Pickup in Store=BOPS)」を、メイシーとブルミンデールの全店舗に導入。

さらにショップキックの「ショップビーコン(Shopbeacon)」を全米の店舗に拡大する。
ショップキックとは、ショップキック(Shopkick)社が提供するサービスで、小売店やレストランの来店客のスマートフォンに、割引クーポンなどを届けるという販促サービスの一種。
買物客は無料のアプリをダウンロードし、そのアプリを起動したまま店舗に入ると、利用者の入店を自動で察知した店側は、その利用者に特典をキックバックする。

メイシーズの「ショップビーコン」はニュー ヨークやサンフランシスコの旗艦店で2013年末からテスト導入されてきた。ショップキックのアプリと違い、アプリ起動や商品バーコードのスキャニングをすることなしに、ポイントやディスカウント等の特典サービスを得ることができる点が特徴で、今秋から順次導入され、来年春までには全店での展開が計画されている。

今回のメイシーズの新戦略ではファッションの取り組みも進む。
ひとつは「メイシーズ・イメージサーチ(Macy’s Image Search)」。サンフランシスコにあるメイシーズのアイデア・ラブで開発された技術を活用したサービス。お客がアプリで撮影した写真、あるいはネット上のファッション写真をアップロードすると、メイシーズ・コムの在庫から同じような商品を探してくれる。お客は気に入れば、その商品をネットで購入し、店頭で受け取ることができる。もちろん配送もしてもらえる。機会ロスを減らすとともに、リアルとネットを結びつけるサービスの一つと言える。

 

またブルミングデールでは、一部の店舗で「スマート試着室 (Smart Fitting Rooms)」実験もなされている。試着室の壁に設置されたタブレットを使って、商品をスキャニングすると、商品レビューや、他のお客のコーディネート事例などのアドバイス情報をみることができる。タブレットにはスタッフを呼ぶ機能があり、色違いやサイズ違いの商品を持ってきてもらうことができる。センチュリーシティやサンフランシスコ、パロアルト、ニュージャージー州ショートヒルズやガーデンシティの店舗で実験中だが、いずれ水平展開される。ほかにも今秋からはファッションカタログがオンライン提供されるなど、ネットとリアルの連動が進められている。

ネットだけではなく、店頭における販売改善もジョージア州及びニュージャージー州の店鋪で実験されている。ハンドタイプのPOS機器とタブレットを使った買物サービスで、お客は商品情報を取得したり、チェックアウトができる。これはテスコをはじめとするイギリスの小売業でも実験しているサービスで、お客にとっては、チェックアウトの時間短縮につながる。
また、「コネクト@メイ シーズ・センター」をいくつかの店鋪に導入実験している。これはオンライン商品のピックアップ窓口であると同時に、スタイル提案や商品アドバイスを提供するお客との接点窓口ともなる。店内でオンライン購入をする人のために双方型大判ディスプレイ「ルックブック」のキオスクも設けられるなど、リアル店舗でのオムニチャネル実験も強化されている。

メイシーズでは2011年からRFIDを活用した在庫管理を行っているが、さらに拡張すると宣言している。
お客向けのさまざまなオムニ・チャネル・サービスはこれらのバックアップ・システムによって対応できているからにほかならない。

 

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