1970年代の王者A&Pが二度目の倒産、しかし300店7000億円でライフより規模は大きい
アメリカのスーパーマーケットA&Pが連邦倒産法第11章をニューヨーク南部連邦地方裁判所に適用申請した。
ザ・グレイト・アトランティック&パシフィック・ティ・カンパニー。
アトランティックのAとパシフィックのPをとって、A&P。
アメリカ人なら知らない人がいないというくらいの老舗。
1859年の創業時は「ザ・グレイト・アメリカン・ティ・カンパニー」と称した。「偉大なるアメリカのお茶の会社」。この会社は小売業だった。それが10年後の69年にA&Pに社名変更。
何しろ当時のアメリカは西部開拓史の真っ最中。アメリカの偉大なお茶の小売業は、顧客からコーヒーも売ってくれ、缶詰も、加工食品もと求められて大繁盛。グロサリーストアへと転換していった。さらに店舗を西に向かって開発し、チェーンストア展開を始めた。そこで大西洋(アトランティック)から太平洋(パシフィック)へのお茶の小売業という社名に変更した。
その後、1916年に、A&Pエコノミーストアというローコスト店舗フォーマットを開発して、あっという間にナンバー1チェーンとなった。1930年、世界恐慌の翌年には、A&Pは1万5737店という巨大なチェーンストアへと成長を遂げていた。
そのA&Pがグロサリーストアとしてピークにあった1930年、マイケル・カレンによってスーパーマーケットが発明される。A&Pも当然ながら、このインパクトのある新しい業態に店舗を転換して、全米ナンバー1のスーパーマーケット・チェーンの地位を堅持する。それは1970年代までつづく。
1970年段階の全米小売業ランキングは、
第1位シアーズ、年商331億5100万ドル、
第2位A&P、202億2700万ドル
第3位セーフウェイ 173億9900万ドル
第4位JCペニー 148億5700万ドル
第5位クローガー 132億8200万ドル
ちなみにこの時代の為替レートは1ドル358円だったから、A&Pの年商は7兆2416億円。
その10年後の1980年には、スーパーマーケットではセーフウェイ、クローガーに抜かれて第3位、小売業では第7位に落ち、1990年には第9位、2000年に非上場のパブリックスやウィンデキシーにも追い越されて、小売業20位圏内から去っていく。2014年度の全米チェーンストアランキングでは、第74位で、スーパーマーケット16位、年商58億3100万ドル。1ドル120円換算で6976億円。店舗数は301店。コネティカット、ニューヨーク、ニュージャージー、ペンシルベニア、デラウェア、メリーランドの東海岸の6つの州で店舗展開している。店舗バナーはまずA&P、それからウォルードバムス、スパーフレッシュ、パスマーク、フード・ベーシックス、ザ・フード・エンポリアム、ベスト・セラーズ。
かつての栄光のA&Pは2010年12月に一度破産申請をしている。それでも2012年10月に手続き終了で、いったんは復活したものの、これで二度目のチェプター11の適用申請。今回の負債総額は23億ドル、資産総額は16億ドル。
すでに米国第4位のスーパーマーケットでオランダ資本のアホールドUSA傘下のストップ&ショップをはじめ、アルバートソン傘下のアクメ、キー・フードストアのスーパーマーケット3社によって、120店舗は6億ドルで売却されることが合意されている。その際、この120店の1万2500人の従業員も解雇されることなく引き受けられるのが唯一の救いだ。ただしこの3社も、A&Pの年金負債の引き受けは拒否しているから、今後の買収も難航しそうだ。
120店の条件のいい店舗は売却され、復活不能の25店舗は閉鎖が決まり、残りの156店は清算コンサルティング企業のヒルコが担当して処理することになっている。
もうA&Pの復活があり得ないことは、この店舗の処理の仕方で明白だ。300店で約7000億円。日本のスーパーマーケット業界ならばトップ企業だが、アメリカでは完全なる負け組。1930年の1万5000店を思うと、平家物語ではないが、「栄枯盛衰」という言葉が浮かんでくる。
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