9月の総合スーパー・スーパーマーケット、グロサリー不振で既存店マイナス
昨日、百貨店とコンビニエンスストアの9月実績をお伝えした。
今日は日本チェーンストア協会とスーパーマーケット3協会の発表をレポートする。
日本チェーンストア協会から21日に発表された「チェーンストア販売概況」は、総合スーパー業態の動向を示しているといってよい。
大手総合スーパーのほとんどが加盟し、その売上高が5割を超えるのがチェーンストア協会。スーパーマーケットも多数、加盟しているので、食料品が売上構成比の65.6%を占める。
9月の総販売額は1兆0155億1450万円で既存店前年同月比はマイナス1.0%。食料品部門は6657億1141万円でマイナス0.8%、衣料品が850億4381万円でマイナス2.6%、そして住関品が2009億6606万円でマイナス1.0%だった。全部門マイナス。
衣料品のマイナス幅が大きく、全体の足を引っ張っているように見えるが、この部門の売上構成比は今や8.4%に過ぎない。
むしろ、構成比34.7%の「その他食品」がマイナス3.3%とあって、こちらが足かせとなった。相場高で好調の農産品プラス1.3%、畜産品プラス4.3%、水産品プラス0.1%、さらに惣菜のプラス3.0%でも、グロサリーのマイナスをカバーできなかった。
9月は例年に比べ気温が低かった。平年との気温差はほぼ全国的にマイナス。特に大阪では平年より1℃も低く、東京では低温基調だった8月の平均気温と比較しても4.5℃も低かった。
衣料品、住関品の売上げ不振は、その気温の影響によるところが大きい。これで6カ月連続で既存店昨対がマイナスとなってしまった。
一方、スーパーマーケットは22日に発表された「スーパーマーケット販売統計調査」の速報版を見る。日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、新日本スーパーマーケット協会の合同発表。
今月の発表はオール日本スーパーマーケット協会が担当。専務理事の松本光雄さんが発表。
総売上高は8005億8002万円で既存店前年同月比がマイナス0.1%。
細かく見ていくと、食品合計が7051億3975万円でプラス0.1%わずかに前年クリア。
生鮮3部門の合計が2695億4706万円のプラス3.3%。うち、青果が1124億3030万円のプラス2.5%、水産が706億9186万円でプラス1.9%、そして畜産が864億2491万円でなんとプラス5.6%。総合スーパー同様、生鮮3品は今月も好調で、特に畜産が絶好調。
惣菜も758億3560万円でプラス2.0%。
しかし日配が1515億5755万円でマイナス1.0%、一般食品は2081億9954万円のマイナス3.6%。さらに非食品が652億2582万円でマイナス1.6%。その他は302億1466万円でマイナス3.4%。
日配、一般食品、非食品、その他がマイナスで、総売上げに影響を与えたが、好調の生鮮3品のおかげでなんとかマイナス0.1の微減に留まった。
企業規模別では珍しく保有店舗数1~3店、4~10店の中小企業が健闘している。逆に50店以上保有の企業がマイナスだったため、総売上高がマイナスになった。
協会の9月の総括は6点。
①天候要因・曜日まわり
日曜日が1日少なかった。前年と比べ、気温の低下が顕著だったことから、飲料・日配に大きく影響し、残暑で売れるはずの食品が苦戦した。
②競合店
都市部はコンビニと競合し、地方はドラッグストアと競合している。加えてスーパーマーケットの新規出店があり、同業との競合も激しくなっている。
③相場高の影響
生鮮の相場高が全体の売上げに好影響を及ぼしている。以前は、相場高でも価格を上げられない状況があったが、最近では相場に従って売価を上げることができており、粗利益を落とさずにすんでいる。
④一般加工食品の不振
一部商品は増税後の回復がみられるが、総じて不振である。原価がアップしているため、ディスカウントしづらく、価格訴求する商材としての魅力が減っている。また、原因は不明だが、米部門の売上げ減が目立つ。さらに、気温の影響で飲料の前年比売上げは80%台だった。
しかしディスカウントストアの一般食品の売上げは好調だ。協会では「競争構造的な問題かもしれない」と分析している。
⑤消費増税の影響
総額表示をしている一部の企業が前年比で苦戦している。消費者利便性からすると総額表示の方がいいかもしれないが、本体価格を強調した方が割安感を受けるのではないか。今後検証していく必要がある。
⑥来店客数回復せず
増税以降、客数が回復しない。しかし、年末商戦に向かう厳しい商況の中でも前年クリアした企業も多かった。生鮮の強化、売場の刷新、関連販売などの店舗力のアップを重要視し、さらに基本を徹底している企業が好調に推移している。
日本チェーンストア協会加盟企業もスーパーマーケット3協会加盟企業も、天候や曜日回り、さらに消費増税という外的与件によって不振に陥っているように見える。しかし生鮮食品の相場高騰で、売上げが上がることにうつつを抜かしているうちに、「高い店」という印象を顧客に与え、グロサリーをディスカウンターや食品強化型ドラッグストア、さらにコンビニに奪われ、既存店売上高マイナスという状況に陥っている。もちろんコンビニも既存店マイナス。コモディティが高い店は、顧客から敬遠されつつある。
アメリカでいうコンベンショナル型スーパーマーケットが、そこから抜け出す王道はクローガー、HEB、ウェグマンズの方法しかない。すなわちコモディティ型グロサリーはエブリデーロープライスでディスカウント勢力に対抗し、ノンコモディティ型生鮮食品・デリ・日配商品で顧客を喜ばせつつ、利益を確保する方法だ。
検索ワード: 日本チェーンストア協会 スーパーマーケット協会 クローガー HEB ウェグマンズ